後は野となれ 花となれ

もと

会える内に会え(脚本)

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〇基地の広場(瓦礫あり)
リュート「やはりこの村もダメだったか」
ロゼ「・・・人を、何だと思ってるんでしょう?」
リュート「・・・うむ」
ロゼ「あ、でもそこにキュラスの芽があります! 入りましょう!」
リュート「なに?」
ロゼ「たき火や焼き畑の後に芽吹く花です! 時間もそんなに経ってなさそう、 生きてる人がいるかもです!」
ワイズ「・・・あぶ」
リュート「・・・そうだな 入るか、離れるなよ」
ロゼ「はい!」

〇荒廃した街
リュート「ここは黒龍を出すという術師では無いな」
リュート「いつも通り、というか 火の手及ばず形も残っている」
ロゼ「でも、誰もいないのでしょうか?」
リュート「・・・ロゼのいた町、ルーサだったか あそこは軍属だと宣言したのだろう」
リュート「それでもあのザマだが、 こういう小さな村が抵抗すれば・・・」
ロゼ「・・・」
リュート「・・・よし、本を探す」
ロゼ「はい? ・・・はい、何の本ですか?」
リュート「術や魔方陣の描いてある物なら何でも良い」
ロゼ「え?」
リュート「俺も習ったとはいえ、数十年も昔だ」
リュート「曖昧な事柄も多い 本当はルーサで寄るつもりだった」
リュート「まあ、そうだな・・・」
リュート「術師が術を忘れているとは 思いもしないだろう?」
リュート「それに町を出るあの状況で術の基礎やらの 書物が欲しい等と言えるか? もう自力で探すしか無いだろう?」
リュート「ここなら残っているかも知れない 少しでも思い出さなければ格好もつかない」
ロゼ「・・・うふふ」
ロゼ「はい! 探します!」
リュート「・・・」

〇荒廃した教会
ロゼ「・・・あ、本棚があったみたいですよ?」
リュート「熱心な神父でもいたのだろう 子供達に勉強を教えていたのではないか」
リュート「俺の時代より教科書が分厚くなっている」
ロゼ「うふふ」
リュート「・・・うむ、これだけあれば良い」
ロゼ「はい」
リュート「・・・」
ロゼ「・・・何をするんですか?」
リュート「ワイズ、貸せ」
ワイズ「ばっぶ」
ロゼ「・・・わあ」

〇教会の中
ロゼ「すごい! キレイですね!」
リュート「この瓦礫が自らの在りし日の姿を 思い出しているだけだ」
ロゼ「結婚式の日でしょうか? ステキだわ」
ロゼ「・・・! 人も! 沢山入って来ますよ?!」
リュート「思い出深い一日だったのだろう この教会にとって、住民にとって」
ロゼ「・・・」
リュート「・・・ワイズ、手を組むんだ」
ワイズ「だあ」
リュート「こう、開いて、こうする」
リュート「そうだな、合わせるだけでも良い これが『祈り』だ」
ワイズ「あっぶ」
リュート「・・・行くか」
ロゼ「はい!」

〇地下室
ロゼ「このお部屋は無事みたいですね お店の倉庫だったとか?」
リュート「そうみたいだな、略奪の後だろう 朝まで世話になるか」
リュート「・・・さて」
ロゼ「はい?」
リュート「あの布屋の布は便利だな、荷物を分けた この中にとりあえずの食料と 写した地図がある」
リュート「腕にでも巻いておいてくれ 万が一、別々になったとしても数日は持つ」
リュート「ワイズは首にでも巻いておくか 涎が増えたしな、ちょうど良い」
リュート「そして別れた時の集合場所はルーサだ 何が何でもロゼの町へ戻る だから・・・」
ロゼ「あの!」
リュート「なんだ?」
ロゼ「・・・あの、なんかそんな、遺言みたいな その・・・」
リュート「・・・」
リュート「逆だ、全くの逆だ 俺は死にたくないからこそ支度をする」
リュート「それこそ抜かり無く、完璧に準備をする 生きる為なのだから気にするな」
ロゼ「はい、ごめんなさい!」
リュート「はいはい、地図の見方は分かるな?」
ロゼ「はい! あ、じゃあ・・・」
ロゼ「夫を描いてくれた様に ワイズちゃんとリュートさんも こういう風に紙に焼き付けてください!」
リュート「・・・ふむ いや別に俺は要らなくないか?」
ロゼ「人を探すのにこんなに必要な物は ありませんよ? 作ってください!」
ロゼ「これがあれば『この人知りませんか?』 だけで通じるんですから!」
リュート「・・・はいはい ワイズ、貸してくれ」
ワイズ「んば!」
ロゼ「すごーい! 見て見てワイズちゃん、いい笑顔! リュートさんからはこう見えてるのよ!」
ワイズ「うばー」
リュート「はいはい」
リュート「・・・見回りでもして来るか 寝ておけよ」
ロゼ「照れ屋さんですね!」
ワイズ「ぶぶぶ」
リュート「はいはい」

〇荒れた小屋
リュート「・・・」
リュート「・・・酒は荒らされた後か 当然だろうな」
「よう、一本恵んでやろうか?」
リュート「・・・ローグか?! お前、毛はどうした?!」
ローグ「十年振りに感動の再会で第一声、ソレ? ヒドくないかあ?」
リュート「いや、ああ、久し振りだな、すまない」
ローグ「ま、お互い良い年だしなあ? 無くなるモンばっかだよなあ」
ローグ「お、イイ剣持ってんじゃん ガイストの仕事みてえでカッコいいよ」
リュート「いやいやいや、待て待てローグ、 お前、足を洗ったのでは無かったか? 賊に戻ったのか? 妻子は?」
ローグ「ああ、十年前はそうだったなあ 鍛冶屋は続けてるぜ、細々だけどな」
リュート「・・・うむ?」
ローグ「鉱石をさ、採りに山に入ってたんだよ 一週間ぐらいだったんだけどなあ」
ローグ「帰ったらよ、家が無えのよ 家どころか村ごと無くなっててよ ・・・教会の者以外は誰も居なくてなあ」
リュート「・・・そうだったか」
ローグ「テメエは上手くやってんのか? 連れてたアレは妻と子っちゅうより 娘と孫か?」
リュート「そ、な、気付いていたなら声をかけろ いや待て、何故見えている?」
ローグ「へへへ、忘れちまったかあ? カクレンボしてたじゃん?」
リュート「・・・この魔方陣は? カクレンボだと?」
ローグ「リュートが描いてくれたじゃん 見付かったら崖から川に飛び込むってのが 怖ええっつって二人でビビってた時にさあ」
リュート「・・・?! 何十年前の話だ?! 描いたのか、描いたような気がしてきた、 姿を隠せるヤツだと描いたな?!」
ローグ「持ってて良かったあ」
リュート「・・・ローグよ、お前は凄い奴だな」
ローグ「まあな」
リュート「その・・・村が無くなったのは五年前か?」
ローグ「そんぐらいだったかなあ? ま、あの王様モドキじゃあ未来は無えよ」
ローグ「盗れるモン盗ったら とっとと国を捨てた方が良いぜ?」
リュート「待て、王位継承など聞いてないぞ?」
ローグ「知らねえのか? 偉い人がバッタバッタと病に倒れてなあ、 まあ死んじゃいないんだがよ」
ローグ「今は王家の末っ子が王様やってんだよ 十四、五歳とか聞いたなあ」
リュート「・・・なるほど、なんという事だ・・・」
ローグ「泣き虫リュートよ、ずいぶん変わったなあ 家族ってやっぱ大事だよなあ」
リュート「・・・家族では無い 二人共にそれぞれ家族がいる」
ローグ「へえ、複雑だなあ アタマ悪りいから分かんねえや、ハハッ」
リュート「・・・フフッ、お前の頭は悪くない 世の中が悪いだけだ」
ローグ「そっかあ、ありがとさんよ 久し振りに会えた記念だ、これ一本やるよ そこで無傷のワイン見っけたんだ」
リュート「いいのか?」
ローグ「もう一本は飲んじまったよ、ハハハッ」
ローグ「さあ長居はいけねえ、また十年後だな こういう所でヒョッコリ会うんだろ 元気でやれよ?」
リュート「ああ・・・ローグも達者でな 次は良い酒場なんかでゆっくり飲もう」
ローグ「死にそうな顔して言ってんじゃねえよ 早く戻ってやんな、じゃあな」
リュート「ああ、またな」
リュート「・・・」
リュート「・・・そうか」

次のエピソード:笑える内に笑え

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