恋の神様は襟足が長い

サカミキ

第十二話 思い出は消えない(脚本)

恋の神様は襟足が長い

サカミキ

今すぐ読む

恋の神様は襟足が長い
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇整頓された部屋(ハット、靴無し)
奏羽「空君、コーヒーだけ? 何か食べないと」
空「今日、大学いくから、途中で食べるよ」
奏羽「そっか。心配しないで、学校について行ったりはしないから」
空「よかった 君と話してると変な人だと思われちゃうから」
奏羽「空君、コーヒー好きなんだ?」
空「うーん、前は飲まなかったんだけど 凪に付き合って飲んでたら好きになったかな 奏羽君は?」
奏羽「普通かな」
奏羽「フフッ・・・」
空「どうしたの?」
奏羽「思い出し笑い 夕凪、中学の頃からカッコつけて飲んでたけど、ミルクと砂糖たっぷりで激甘なの」
夕凪「そーちゃん、余計なこと言わないで!」
空「アハッ そーゆーとこ、かわいい」
奏羽(ゆー君の話をすると、笑ってくれるんだな)
空「今はブラックだよ」
奏羽「俺は今の夕凪のこと全然知らないな」
空「でも 僕の知らない昔の凪をいっぱい知ってる」
奏羽「ねぇ、ここには夕凪との思い出がいっぱいでしょ? つらくない?」
空「うーん、つらいとはちょっと違うかな いい思い出ばかりだから・・・ ずっとここにいたいよ」
「・・・・・・」

〇玄関内
空「じゃ、行ってくる」
奏羽「病院に戻ってるよ」
空「そうだね お母さんの為にも、体に戻れるといいね」
  少し寂しそうな顔をする空。
奏羽「戻り方、わかんないんだけどね」
奏羽「学校が終わったら病室来てくれると嬉しいな」
空「うん、夕方になると思う」
奏羽「ありがと 行ってらっしゃい」
空「あっ! カギどうしよ!」
奏羽「大丈夫だよ、壁抜けできるし」
  壁に手を通してみせる奏羽。
空「ああ、そうだった 行ってきます」
  アパートを出て行く空を
  奏羽と夕凪が見送る。
奏羽「病院に戻る前にデートしよ、ゆー君 俺の未練も消さなきゃな」
夕凪「昔、お祭りで一緒に行った神社に行きたい」
奏羽「いいけど、なんで神社?」
夕凪「楽しかったし── 約束──したじゃん」
奏羽「えっ? 何?」
夕凪「神社なら成仏する手掛かりがあるかも」
奏羽「霊が神社なんて行って大丈夫か?」
夕凪「成仏するか、試してみてもいいんじゃない?」
奏羽「そだな」

〇神社の石段
夕凪「あー、懐かしい」
奏羽「だな、高一の夏にゆー君と来たぶりだ」
夕凪「うん、俺も」
奏羽「『また、一緒に来よう』って言ってたのにな」
夕凪「来てるじゃん」
奏羽「だな」
夕凪「前は、この階段キツかったけど 今は楽々だね」
奏羽「ハハハ・・・ それな」
奏羽「ゆー君、何か変とか、苦しいとかない?」
夕凪「今のところ大丈夫かな? てか、消えかけてるとかある?」
  腕を広げた夕凪を
  奏羽が舐めるように見る。
奏羽「無いな ハッキリ、クッキリ見える」

〇神社の本殿
  石段を登り切る奏羽と夕凪。
  
  境内にある桜の木から花びらが舞っている。
神主「あらあら、珍しいお客さんですね」
「見えるんですか!?」
神主「見えますよ ハッキリ、クッキリ、お二人とも」
「二人とも?」
神主「はい、幽霊さん でもそちらの方はちょっと様子が違いますね」
  神主さんが奏羽をみる。
奏羽「生霊なんです。面目ない」
神主「ハハッ、そうでしたか 仲良しですね」
  神主さんが、繋がれた奏羽と夕凪の手をみる。
奏羽「これには訳がありまして」
  神主さんは何かを察したように頷く。
夕凪「あの、突然こんな事を聞くのもなんですが 成仏するにはどうしたら良いのでしょうか?」
神主「うーん それは私の範疇ではないのですが・・・」
  神主さんはまじまじと二人の顔を見る。
神主「あなたがたは善良なようですね きっと願いが叶いますよ 神様へのお願いはまだですよね」
夕凪「まだです」
奏羽「あのー、お賽銭がないんですが・・・」
神主「ハハハ・・・大丈夫ですよ 願いが叶ったらお礼に来て下さい」
「ありがとうございます」
  深々と頭を下げる奏羽と夕凪。
神主「願いを叶える為には、いるべき所にいないといけませんね」
神主「では、お二人の願いが叶うことをお祈りしております」
  神主さんは軽くお辞儀をして歩き出す。
  少し歩いてから、振り返る。
神主「お互いを信じて、強く願うことが大事ですよ」
  笑顔を見せると、また振り向いて歩き始める。
  奏羽と夕凪は社殿の前に歩いて行く。
  二人はあいている方の手を合わせ、目を閉じる。
奏羽(ゆー君が成仏できますように 天国に行けますように)
夕凪「いるべきところって病院だよね」
奏羽「だろうね。戻ろうか?」
  夕凪は頷く。

〇海辺の街
  石段の上からの景色を眺める奏羽と夕凪。
夕凪「綺麗だね」
奏羽「うん、綺麗だ」
  広げた夕凪の手の平を桜の花びらが通り抜けていく。

次のエピソード:第十三話(最終話) 君を忘れない

コメント

  • 神主さんの残した意味深な言葉がキーなのでしょうか。
    もうすぐ夕凪は成仏しちゃうのかな。
    それはそれで寂しい気もしちゃいますが……それぞれがあるべき場所に帰れますように(;_;)
    (前回リアクションする前に誤って画面をとじてしまいました。すみません💦)

成分キーワード

ページTOPへ