第十三話(最終話) 君を忘れない(脚本)
〇病室(椅子無し)
ベッドで眠る奏羽の体を眺める奏羽と夕凪。
奏羽「ねぇ、ゆー君」
夕凪「なぁに、そーちゃん」
奏羽「目が覚めたら、忘れちゃうのかな? 生霊の時のこと?」
夕凪「どうかなぁ」
奏羽「忘れたくないな ゆー君とのアレコレ」
夕凪「俺も、忘れないで欲しいなアレコレ」
空が病室に入って来る。
空「まだ、戻れてないんだ」
奏羽「空君に話さなきゃいけない事があるだ」
空「何?」
奏羽「夕凪の幽霊がココにいる」
空「ふざけないで!」
奏羽「ゴメン。本当なんだ」
空「何で!? 君にだけ見えてるの?」
奏羽「霊同士だから・・・」
空「信じられないよ」
奏羽「生霊の俺の存在は認めたのに?」
空「それは、見えてるから・・・」
奏羽「夕凪が空君に伝えたい事があるって・・・ 代わりにつたえるから、とりあえず聞いて」
「くぅちゃん」
空「それ、凪だけの呼び方・・・ 二人きりの時にしか呼んだことない」
「一緒に、くぅちゃんの地元に行く約束 守れなくてゴメン」
空「覚えててくれたんだ・・・ 凪、何処にいるの?」
夕凪を指差す奏羽。
空は誰もいない空間を見つめる。
「くぅちゃんといられて幸せだった ありがとう 幸せになってね」
夕凪「そーちゃん、後はよろしく」
奏羽「ここからは、俺からなんだけど・・・ 一緒に夕凪の願いを叶えてくれない?」
空「・・・」
奏羽「夕凪のこと忘れる必要ないし、好きなままでいい 俺もだから・・・」
奏羽「けど、幸せになることあきらめないで じゃないと、夕凪が成仏出来ないから」
空「それが、凪の願いなの?」
見えない夕凪を見ようとする空。
夕凪が頷く。
奏羽「こんな言い方は狡いけど 空君が前を向いてくれないと、夕凪は心配で成仏出来ないと思う」
奏羽「だと、俺もこのままで・・・ 夕凪を独占し続けるよ」
空「それは──嫌だな ほんと狡いよ」
空「『幸せになる』って言うしかないじゃない」
奏羽が頷く。
奏羽「あるべき場所・・・ 俺が体に戻らないと、ゆー君も成仏できないよね」
夕凪「どうやって」
奏羽「上手くいくかわかんないけど・・・ 俺の体に重なって」
夕凪「俺がそーちゃんの体乗っ取ったらどうするの?」
奏羽「そんな事、出来るの? お互いを信じて──だろ?」
夕凪「お互いを信じて、強く願う」
奏羽「そっ 手繋いでるから、引っ張って」
手を繋ぐ奏羽と夕凪。
夕凪が奏羽の体に重なように寝転がる
奏羽(夕凪が俺の体に入ってる 瞳が・・・)
奏羽(夕凪)「くぅちゃん・・・」
空「凪!? 目の色が・・・」
奏羽(夕凪)「うん──創間の体を借りて・・・ 空と出会えて良かった ──ありがとう」
空「凪──愛してる」
空が夕凪にキスをする。
奏羽(夕凪)「ごめんね──もういかないと・・・ 人の体だから──苦しいんだ」
奏羽(夕凪)「笑って」
空「うん」
涙で濡れた顔で精一杯の笑みを返す空。
奏羽(夕凪)「そーちゃん、ありがとう」
奏羽(夕凪)「さよなら」
奏羽の手がぐいっと引っ張られる。
奏羽「さよなら、ゆー君 忘れないよ」
奏羽の生霊が体に吸い込まれていく。
握られていた夕凪の手が消える。
奏羽のこめかみを一筋の涙が流れる。
ゆっくり目を開ける奏羽。
奏羽「空君・・・ 夕凪の話をいっぱいしよう」
なるほど、彼が生霊になったのはそういう理由だったのですね!
これから先、奏羽と空がともに過ごす場所は、きっと3人の居場所になるのでしょうね。
悲しいけれど、心が温かくなるお話でした。
私もなんだか優しくなれた気がします。
素敵な物語を最後まで紡いでくださり、届けてくださりありがとうございました!