#19 つながる糸(前編)(脚本)
〇おしゃれなレストラン
彼氏「・・・ごめん。好きな人ができたんだ」
空野真理「そっか・・・」
彼氏「本当に、ごめんな・・・。でもきっと、真理にはもっといい人がいると思うし」
空野真理「そういうの・・・いいから」
彼氏「そうだよな・・・。ごめん。じゃあ、体に気をつけてな」
空野真理(彼の気持ちが離れているのは、わかってた)
〇リサイクルショップ
空野真理(私はいつも、間違える。毎回、勝手に運命を感じて、裏切られる)
空野真理(運命なんてないって、そのたびに思い知るのにさ・・・。バカだなぁ)
ふと気がつくと、目の前にリサイクルショップがある。
空野真理「あれ? こんなところに、リサイクルショップなんてあったっけ・・・?」
〇リサイクルショップの中
空野真理「この指輪、可愛いデザインだなぁ」
???「それ、あなたの役に立つと思いますよ」
真理が振り返ると、男性店員が立っている。
???「・・・お似合いだと思います」
空野真理「えっ? ど、どうも」
空野真理(ミステリアスで・・・なんだか素敵な雰囲気の店員さんだな)
〇駅前広場
空野真理(失恋したって、仕事には行かなくちゃいけない)
空野真理(・・・って、あれ?)
真理がふと左手の小指を見ると、シルバーの指輪から何かが伸びている。
空野真理(昨日買った指輪から・・・赤い糸?)
空野真理「あ、消えた。気のせいだったのかな?」
〇開けた交差点
仕事帰り、歩いている真理。
ふと気がつくと、朝と同じように、小指の指輪から赤い糸が伸びている。
空野真理(あっ! また、赤い糸!)
空野真理(これ、どこに続いてるんだろう・・・?)
真理は何気なく、糸の続く方に歩いていく。
〇見晴らしのいい公園
真理は指の糸を追って、丘の上にやってきた。
空野真理(公園? ・・・あっ、誰かいる・・・)
丘の上では、リサイクルショップの男性店員が天体望遠鏡を覗いている。
空野真理「あっ! あの時の店員さん!」
???「・・・・・・」
空野真理「やばっ・・・なに叫んでんだ、私・・・」
空野真理「あ、あの・・・この指輪から糸が伸びていて、それを追っかけてここに来たんです」
真理がふと指を見ると、糸は消えている。
空野真理「あれ? さっきまで確かにあったのに・・・」
???「・・・何かの間違いでしょう」
「・・・・・・」
空野真理「・・・その子って」
???「こいつ? フクロモモンガ」
ピーチ「キューッ!」
空野真理「へぇ~。珍しいですね」
???「・・・・・・」
空野真理「・・・星、好きなんですか?」
???「まぁ」
空野真理「私はあの星が好き。ベテルギウス」
???「えっ?」
空野真理「もしかして、あなたも?」
???「・・・ええ」
空野真理「良かったら、少しだけ覗かせてもらえません?」
???「・・・・・・」
空野真理「うわぁ、凄い・・・都会でも、こんなに星が見えるんだ!」
???「冬の空気は、澄んでますから」
仁は真理の横顔を見つめている。
〇女の子の一人部屋
空野真理(指輪から伸びる糸を追ったら、丘の上にあの人がいた)
空野真理(あんな形で再会できるなんて、なんだか嬉しかった)
空野真理(不愛想だけど、不思議な魅力のある人だったな)
空野真理「ねぇ、また会わせてくれる?」
空野真理「おっと、薬飲むの忘れてた」
〇物置のある屋上
数週間後
真理が指輪から伸びる糸を追って屋上にやってくると、そこには仁がいる。
空野真理「いたいた~。 今回で、記念すべき10回目の再会。 ねぇ、こんな所、勝手に入っていいの?」
???「・・・それは君だって同じだろう」
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