第3話(脚本)
〇開けた交差点
愛城しずく「わ、私! 女の人が好きなんです!」
愛川菜々美「え?」
愛城しずく「だから! 愛川さんとは少し違いますけど、人と違うことが辛いって気持ちはわかります!」
愛城しずく「・・・」
愛城しずく(あっ!)
愛城しずく(あぁ、私また勢いで・・・!)
愛川菜々美「ありがとう・・・ございます」
愛城しずく「はい、すみません!」
愛城しずく「・・・え?」
愛川菜々美「その・・・人と違うことで世界に拒絶されてるってずっと感じていたんです」
愛川菜々美「でも・・・そんなこと恥ずかしくて誰にも話せなかったから」
愛城しずく「えっと・・・私、感謝されてるって認識で合ってます?」
愛川菜々美「え?」
愛城しずく「え?」
愛川菜々美「・・・・・・」
愛川菜々美「あははは! 面白い人ですね、愛城さんって」
愛城しずく(え、何か笑われた!?)
愛川菜々美「今凄い元気づけられたんですよ? 私」
愛城しずく「いや、あの、私凄い恥ずかしいこと言っちゃったんじゃないかなーって思ったり、気持ち悪いこと居ちゃったんじゃないかなー」
愛城しずく「って思っちゃったりしたものですから」
愛川菜々美「まさか、そんなわけありませんよ むしろ勇気を出して私のためにカミングアウトしてくれたって分かりましたから」
愛川菜々美「カッコよかったですよ、愛城さん」
愛城しずく(なっ・・・緊張してて意識してなかったけど愛川さんって結構・・・)
愛川菜々美「ん、どうかしましたか?」
愛城しずく「い、いえ! 愛川さんが元気になってくれたならよかったです!」
愛川菜々美「ふふっ、愛城さんに出会えてよかったです これからもう少し前向きになれそうです」
愛川菜々美「また一緒に帰っていただいてもよろしいでしょうか?」
愛城しずく「もちろんです! どうせしがない独り身なので、いつでも誘ってください!」
愛川菜々美「ありがとうございます」
愛川菜々美「勿体ないですね 愛城さんはこんなに素晴らしい方なのに、それに気づいてくれる人がいないだなんて」
愛城しずく「そ、そんな私なんて大したことない人間ですから 過大評価です」
愛川菜々美「そんな謙遜を・・・」
愛川菜々美「でも、少なくとも私の心を救ってくれた それは本当のことですからね」
愛城しずく「は、はい・・・」
愛川菜々美「それではまた おやすみなさい」
愛城しずく「はい、おやすみなさい」
愛城しずく(愛川さん・・・)
愛城しずく(あれ、もしかして私・・・?)
〇オフィスのフロア
愛川菜々美「ふぅ」
愛川菜々美「もうお昼か」
愛川菜々美「いただきま──」
愛川菜々美(またお母さん・・・最近連絡が多いな)
愛川菜々美(ずっと断らない私も悪いけど、愛城さんがいなかったらもう限界だったかも お母さんのことも愛城さんになら・・・)
愛城しずく「愛川さんっ!」
愛川菜々美「愛城さん?」
愛城しずく「お疲れ様です お弁当、ご自分で作られてるんですか?」
ピッ
愛川菜々美(あ、電話が)
愛川菜々美「ありがとうございました」
愛城しずく「え、何がですか? あ、もしかして昨日のことですか」
愛川菜々美「・・・あ、はい 愛城さんのおかげでだいぶ心がラクになったので」
愛城しずく「そんな、いいですよ何度も 気にしないでください」
愛川菜々美「感謝してもし足りないくらいですので」
愛川菜々美「そういえばお弁当のこと聞かれてましたよね」
愛城しずく「はい、とっても美味しそうだったので 愛川さんが?」
愛川菜々美「はい、自分で作ってます 料理は子供の頃からずっとやっているので」
愛城しずく「わぁ、結構家庭的なところがあるんですね 尊敬します」
愛川菜々美「そんな、大したことないですよこのくらい」
愛城しずく「いえいえ、私なんていつもこれですから」
愛川菜々美「コンビニ弁当・・・」
愛城しずく「はい、家事全般全然やらないダメな社会人なもので・・・」
愛川菜々美「朝お弁当を作るのは社会人だと大変ですからね 私以外に自分で作ってきている人はあまりいませんし」
愛城しずく「いやーお昼だけじゃなくて家でも作るのが面倒でキッチンはホコリ被ってるような状態でして・・・」
愛川菜々美「えっ!? いけませんよそんなの 栄養バランスが偏ってしまいます!」
愛城しずく「いや、そんな大げさな・・・」
愛川菜々美「大げさじゃありません! 折角愛城さんカワイイお顔をされてるのに肌荒れしてしまいますよ」
愛城しずく「そんな、カワイイだなんてっ」
愛川菜々美「カワイイですよ、愛城さんは本当に 私、お世辞とか言えるタイプじゃないんで」
愛城しずく「そんなの・・・卑怯」
愛川菜々美「ん、何か言いました?」
愛城しずく「い、いえ! 何でも!」
愛川菜々美「せめて会社では手作りのものを食べてください 明日から私が愛城さんの分もお弁当作ってきますよ」
愛城しずく「いやいやそんなの愛川さんに迷惑をかけてしまいます!」
愛川菜々美「遠慮しないでください どうせ毎日作っているので一人分も二人分も変わりません」
愛城しずく「いえ、でも流石にそれは・・・ 私だけ作ってもらうのも何だか気が引けますし」
キーンコーンカーンコーン
愛川菜々美「あ、もうこんな時間に」
愛川菜々美「お弁当、どうしましょうか? 確かに愛城さんの言うことにも一理あると思いました」
愛川菜々美「私が押し付けてしまったばかりに困らせてしまいましたね」
愛城しずく「いえ、そんなことなかったですよ 素直に嬉しかったです」
愛城しずく「じゃあ、料理を教えていただくっていうのはいかがでしょう?」
愛城しずく「勿論、愛川さんがご迷惑じゃなければ、ですが」
〇綺麗なキッチン
そして数日後
しずくのマンション
愛川菜々美「キッチン、使ってないと言ってましたが・・・新品のように綺麗ですね」
愛城しずく「ええ、洗い物くらいでしか使ってなかったので あはは」
〇綺麗なキッチン
昨晩
愛城しずく「まずい、愛川さんを家に呼んだはいいものの、こんな状態見せられない・・・」
愛城しずく「明日までに見せられる状態にしなくてはっ・・・!」
〇綺麗なキッチン
愛城しずく(結局片付けに何時間もかかっちゃったけど誤魔化せたようでよかった)
愛城しずく(っていうか知り合いを家に入れたのなんて何年ぶりだ?)
愛城しずく(ペースに乗せられてたから気づかなかったけど、愛川さんって距離感の詰め方が早すぎるよね? 他の人でもこんな感じなのかな?)
愛川菜々美「愛城さん?」
愛城しずく「は、はひっ!?」
愛川菜々美「ボーッとして、大丈夫ですか?」
愛城しずく「は、はい 私服の愛川さんが新鮮で カッコいいなって」
愛川菜々美「そうですか? こんなのファストファッションの安物ですよ」
愛城しずく「それでもカッコよく見えるのは素材がいいからですよ もっといい服を着たらもっとカッコよくなっちゃいますね」
愛川菜々美「ははっ、ありがとうございます」
愛川菜々美「食材は買ってきてありますので、早速始めましょうか?」
愛城しずく「わざわざ食材まで! ありがとうございます」
愛城しずく(キッチンを綺麗にすることで頭いっぱいで食材のことすっかり忘れてた!)
愛川菜々美「なに、このくらい 殆ど料理の経験がないとのことでしたので作りやすいカレーの材料を用意してきました」
愛城しずく「カレー! 小中学校のとき家庭科で作った覚えがあります」
愛川菜々美「カレーはルーを使えば、味は分量を間違えない限り失敗することがありませんからね」
愛城しずく「作り過ぎちゃっても作り置きもしておけますし」
愛川菜々美「おっと カレーは寝かせて食べるイメージがありますが、鍋で常温保存は危ないです」
愛川菜々美「そのままだとすぐ菌が繁殖してしまうので保存は冷蔵で それでも3日程度しか持たないと思ってください」
愛城しずく「そうなんですね 私全然知りませんでした」
愛川菜々美「料理する方でも同じ勘違いをしている方は沢山いますから」
愛川菜々美「では始めましょうか 愛城さんはジャガイモの皮を剥いていただけますか?」
愛城しずく「了解です」
愛城しずく(うっ、ジャガイモの皮ってごつごつしてて結構剥きにくい・・・)
愛城しずく「あっ!」
愛城しずく「痛っ」
愛川菜々美「あっ、愛城さん 指を!?」
愛城しずく「使い慣れてないもので お恥ずかしい」
愛川菜々美「すぐ止血しないとっ」
パクっ
愛城しずく「へっ? 愛川さん!?」
愛川菜々美「・・・あっ」
愛川菜々美「す、すみません! 私、自分の指を切った時と同じことをしてしまいました」
愛城しずく「あ、いえ、ちょっとビックリしただけですから・・・」
愛城しずく「ば、絆創膏あるので持ってきますっ」
〇女性の部屋
バタンッ!
愛城しずく(愛川さんに咥えらちゃった、指・・・)
愛城しずく(この指を咥えたら愛川さんと・・・)
愛川菜々美「愛城さん! 大丈夫ですか?」
愛城しずく「は、はい! 大丈夫です!」
愛城しずく(わぁぁぁぁ何考えてるんだ、私の変態っ!)
いいですねー、2人の距離がどんどんと縮まっていく様子が!相手も傷つけないように、でも自分に正直に、という感情が溢れている様子にトキメキますね!