黒いキューピット

平家星

#18 ハッピー・ナビ(後編)(脚本)

黒いキューピット

平家星

今すぐ読む

黒いキューピット
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇車内
三杉正道(このカーナビを手に入れてから2年)
三杉正道(実家の八百屋を成長させ、今はベンチャー企業の社長として、農家と食品工場を繋ぐ事業をしている)
三杉正道「おいカーナビ、もっと業績を伸ばすには、どの農家を切るべきなんだ?」
ナビ音声「案内を開始します」

〇昔ながらの一軒家
老人「とっ・・・とてもじゃないけど、これ以上、白菜の値段は下げられねぇよぉ・・・」
三杉正道「そうですか。では、契約は打ち切りということで」
老人「そ、そんな! 切られたらうちは、立ち行かなくなってしまうよ・・・」
三杉正道「悪いけど、うちも商売なんでね」
三杉正道(金を増やすためには、ドライになる必要がある)

〇港の倉庫
黒服の男「三杉さん、お待ちしておりました」
三杉正道「確認してくれ」
黒服の男「・・・確かに、確認しました。いつも上質なブツ、ありがとうございます」
  正道はスマホを取り出し口座を確認する。
三杉正道「入金ありがとう。またよろしく」
三杉正道(・・・ヤバいことだとは分かってる。 でも、彼女に相応しい男でいるためには、もっと金がいるんだ)

〇見晴らしのいい公園
三杉正道「2年前、ここへ来たの覚えてる?」
神谷真帆「もちろん。ここは、今も綺麗だね」
三杉正道「・・・なぁ、真帆。 この2年で、俺は変わった」
三杉正道「今は自信を持って、君に相応しい男になれたと思ってるんだ」
三杉正道「俺と、結婚して欲しい」
神谷真帆「・・・・・・」
三杉正道「真帆?」
神谷真帆「・・・ごめんなさい。結婚はできない」
三杉正道「えっ!? ど、どうして・・・」
神谷真帆「私は、昔の正道さんが好きだった」
三杉正道「・・・昔の俺? 何も持たず、情けないだけの男だったろ?」
神谷真帆「確かに、不器用でカッコ悪かった。 でも、人の気持ちを考える人だった」
三杉正道「・・・・・・」
神谷真帆「最近の正道さんは、なんだかあの頃と違う」
神谷真帆「・・・ねぇ、私に隠してることがあるんじゃない?」
三杉正道「隠してること・・・?」
神谷真帆「すごい勢いでお金持ちになって、いろんな人と付き合うようになって・・・」
神谷真帆「私、正道さんのことが心配だよ。 何かあるなら、話してほしいの!」
三杉正道「は・・・話すことなんて、別にない!」

〇車内
三杉正道「まさか、真帆にプロポーズを断られるなんて・・・」
三杉正道「おいカーナビ。真帆がもう一度俺を見直してくれるように、案内してくれ。頼むよ!」
ナビ音声「案内を開始します」
  そこに真帆が乗ってくる。
神谷真帆「・・・・・・」
三杉正道「・・・・・・」
  正道は車を発進させた。

〇車内
三杉正道(さぁカーナビ、俺をどこに導いてくれる? 真帆の気持ちを取り戻す、一発逆転を頼むぞ・・・)
ナビ音声「目的地周辺です」

〇街中の交番
三杉正道「ここは・・・交番?」
神谷真帆「・・・? どうしてこんなところに来たの?」
三杉正道(カーナビ、なぜ・・・? こんなところに来たって、真帆は喜ばないじゃないか)
三杉正道「・・・おいカーナビ、別の場所を探してくれ!」
ナビ音声「案内を開始します」
三杉正道「真帆、ごめん。ナビの案内がおかしくなっていたみたいだ」
神谷真帆「・・・?」

〇警察署の入口
三杉正道(警察署!? ・・・まさか、このカーナビ・・・俺に自首を促してるのか?)
神谷真帆「なんだか顔色が悪いみたいだけど、大丈夫?」
三杉正道「・・・おいカーナビ、他の場所を探してくれ。交番やら、警察署やら以外の・・・」
ナビ音声「他に道はありません」
三杉正道「何言ってやがる! この道だけはあり得ない!」
神谷真帆「正道さん!? 何を話してるの?」
三杉正道「うるさい! 元はと言えば、お前のことで悩んでるんだよッ!」

このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です!
会員登録する(無料)

すでに登録済みの方はログイン

次のエピソード:#19 つながる糸(前編)

ページTOPへ