最終話:シュレーディンガーの方程式(脚本)
〇散らかった研究室
事件から一か月後 11月31日
「わかりました、ありがとうございます」
猫元才「何話してたの?」
葛城大河「ああ、まあな」
葛城大河「ちょっと、外で話さないか」
〇ビルの屋上
猫元才「屋上なんて初めて来た」
葛城大河「そうなのか?」
葛城大河「俺は、気分を変えたいときによく来るんだ」
猫元才「へー、私もそれ真似しようかな」
葛城大河「・・・なあ、才」
猫元才「ん?」
葛城大河「デルタの件、本当に良かったのか?」
猫元才「何が?」
葛城大河「お前が頑張って作ったものなんだろう?」
猫元才「ああ、壊したことを言ってるのか」
猫元才「いいの。行き過ぎた科学は、時に人を滅ぼす」
猫元才「科学の発展だけが、科学者の目指すべき道じゃないわ」
猫元才「デルタは、私たちの手に余るものだった」
猫元才「だから壊した。それだけ」
葛城大河「・・・そうか」
猫元才「・・・私は、量子コンピューターの開発を諦めたわけじゃない」
猫元才「次はもうあんな事件が起こらないよう、コンピューターを制御できる方法を探すつもり」
葛城大河「・・・!」
葛城大河「そうか、そうだよな」
葛城大河「それでこそ、天才科学者猫元才だ」
才は何も言わず、少し微笑んだ
葛城大河「なあ」
葛城大河「なんでお前は、量子力学を学んでいるんだ?」
猫元才「うーん」
猫元才「量子力学は、世界を構成する最小単位である”量子”を学ぶ学問なの」
猫元才「少し飛躍した話になるけど、」
猫元才「例え私たちが死んで灰になったとしても」
猫元才「私たちを構成する量子がなくなるわけじゃない」
猫元才「それは形を変えただけ」
猫元才「どんな姿になっても、」
猫元才「どれだけ時間が経っても」
猫元才「私たちは量子の世界で繋がっている」
猫元才「それって、とてもロマンチックだと思わない?」
葛城大河「・・・お前らしくないな。非科学的だ」
猫元才「そうかもね」
猫元才「それでも、私は信じてみたい」
猫元才「私が今ここにいるのは偶然なんかじゃなくて、」
猫元才「量子の世界で決められた必然なんだって」
葛城大河「今ここにいるのは、偶然じゃなくて必然、か」
葛城は、その言葉の意味をしっかりと嚙み締めた
猫元才「それで?」
猫元才「私にそれを聞きたくて屋上まで来たの?」
葛城大河「いや、そういうわけじゃない」
葛城大河「さっき、ノイマン教授と話して決めた」
葛城大河「・・・・・・」
葛城大河「俺も、量子力学の道に進むことにしたよ」
猫元才「本当!?」
葛城大河「なんだ、そんなに意外か?」
猫元才「ううん、そんなことない」
猫元才「すごく、すごく嬉しいの」
猫元才「でも、なんで?」
葛城大河「だって、お前も唯も量子力学専攻じゃないか」
葛城大河「俺も、お前たちの横に立ちたい」
葛城大河「同じ問題に向き合って、同じ喜びを分かち合いたいと思ったんだ」
葛城大河「・・・俺、なんか変なこと言ってないか?」
猫元才「ううん、そんなことない」
葛城大河「教授も、『一から量子力学を学ぶのは簡単なことじゃないけど、クズなら出来るだろう』と言ってくれた」
葛城大河「一日でも早く、お前たちに追いついてやる」
猫元才「うん。待ってるよ」
二人の間を風が通り過ぎた
葛城大河「才」
猫元才「なに?」
葛城大河「俺は、この研究室が好きだ」
猫元才「うん、私も」
葛城大河「これからも、よろしく」
葛城大河「科学者として」
葛城大河「それから良き仲間として」
葛城は右手を差し出した
猫元才「うん、よろしく」
才はその右手を、しっかりと握り返した
シュレーディンガーの方程式:完
面白かったですー!!(o^^o)
登場人物たちがみんな理系の冷静なタイプたちで、私はド文系なので、すごくスマートに危機に対応している姿になんだかキュンってしながら読んでました!!
ありがとうございました!!!!!
完結まで一気読みさせて頂きました!
量子力学をモチーフにした本格SF、ちりばめられた謎が面白く、最後までハラハラドキドキしながら楽しめました。
人の心がキーになるのも、熱く素敵な展開^^
SF好きなので、ライターの立場としても、こういうのが書きたい!と感じた作品でした。
面白かったです。科学って、なんだかロマンチックですね。