罪  恋―TSUMIKOI―

望月麻衣

エピソード10 渇望(脚本)

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〇学生の一人部屋
涼太「これから彼女が学校帰りに言ってた参考書を届けてくれんだ。だから、そのまま貸すよ」
「おー、マジで?」
  涼太の部屋で数人の友人とたむろしている時。
  友達の一人にそんな話をする涼太をなんとなく見ていた。
  『へー、涼太の彼女が来るんだ』
  
  
  その時、思ったのはそれだけ。
「おー、梓ちゃん、来るんだ!」
「梓ちゃん、ふわっとした感じで 可愛い雰囲気だよな」
  友人たちはそんな声を上げていたものの、俺としては、涼太の彼女がどんな女であろうと、微塵も興味がなかった。

〇学生の一人部屋
涼太「可愛い雰囲気ってなんだよ。 しっかり可愛いんだよ」
  そんな会話をしていると、
  
  
  しばらくして、涼太の彼女が姿を現した。
  梓ちゃん、梓ちゃん、
  盛り上がる涼太と友人たちの中、
  なんとなく彼女を見て、
  
  
  バクンと鼓動が跳ねた。
  『先生?』
  
  
  思わずそんな言葉が
  洩れそうになるほどに、
  彼女は初恋の先生に似ていた。

〇学生の一人部屋
  もちろん、よく見たら違う。
  なんとなくの雰囲気、
  表情の作り方が似ていた。
  セミロングの髪に、乳白色の肌
  ああ、目がよく似ているんだ。
  輪郭がハッキリしつつも、
  
  
  人の良さそうな少し垂れ気味の目。
  バクバクと打ち鳴らす鼓動の中、言葉もなく彼女に見入っていた。

〇学生の一人部屋
「瀬尾、なに涼太の彼女を凝視してるんだよ?」
「梓ちゃん、カワイイもんな」
  皆の笑う声に我に返った。
  彼女も戸惑いの表情を浮かべ、
  涼太が不安そうな目を見せていた。
久弥「別に、ただ見てただけ。 キョーミないから心配すんなよ」
  咄嗟にそんなことをいう。

〇学生の一人部屋
  こんなに見ながら興味ないなんて、見え透いた嘘すぎて、自分に失笑だ。
  今も目を離せず、高鳴る鼓動。
  初めて感じた渇望。
  触れたい。
  ただ、彼女に触れたい。
  胸の内が熱くなるほどに、そう思った。

〇学生の一人部屋
  茶菓子を用意したという母親の声に、
  
  
  皆がガキのようにバタバタと部屋を出ていく中、
  彼女は意識しているかのようにこちらを見ようとはせず、帰り支度をしていた。
  それは、まさに衝動だった。
  思わず、
  
  
  カバンを手にし部屋を出て行こうとする彼女の細い手首をつかんだ。
  驚いたようにこちらを見る
  大きく見開かれた瞳。
  その目に、射抜かれる。
  強く抱き締めて、抱きたい。
  
  
  理屈じゃなく、そう感じた。

〇赤いバラ
  彼女をつかんだ掌が、発火するかのように熱く感じられた。
  彼女が何か口にする間もなく、唇を合わせる。
  腕の中で華奢な身体がビクついた。
  かたくなっている身体が続けるキスに、力が抜けるように柔らかくなっていく。
  腕の中で溶けるような、彼女の感触。
  息が荒くなって、頭が真っ白になっていた。

〇学生の一人部屋
  そっと唇を離すと、
梓「な、何するの?瀬尾くん」
  彼女は目を潤ませ、
  声を震わせながらそう言った。
  ショックなんだろう。
  そりゃそうだ。

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