#17 ハッピー・ナビ(前編)(脚本)
〇おしゃれなレストラン
営業前のイタリアンレストランに三杉正道(みすぎまさみち)が入ってくる。
三杉正道「三杉青果です。 野菜の配達にまいりました。 す、すみません遅くなりまして・・・」
店長「お前! 今何時だと思ってる!?」
店長「連絡もなく、1時間も遅れてんだよ! 仕込み、間に合わなくなったらどうする!」
三杉正道「・・・すみません。道が混んでて・・・」
店長「こんなことが続いたら、もうアンタのところとは契約しないからな!」
〇山中のレストラン
女の声「正道さん!」
店を出た正道は声をかけられ振り返ると、神谷真帆(かみやまほ)が立っている。
神谷真帆「店長、あんな風に言ってたけど、この前は野菜の質が良いって褒めてましたよ」
三杉正道「えっ・・・?」
神谷真帆「次は、遅れずに来てくださいね! ほら、これ飲んで元気出して!」
三杉正道(真帆さんは、いつも優しいな・・・。そして今日も美しい・・・)
三杉正道(ま、彼氏いるらしいし・・・俺にはどこまでも高嶺の花。住む世界が違うよ・・・)
〇トラックのシート
正道が運転していると、突然カーナビの画面が乱れた。
三杉正道「ん? どうした?」
そのまま、画面が暗くなってしまう。
三杉正道「おいおいおい! 壊れたのか!?」
スマホを開こうとするが、電池が切れている。
三杉正道「あ~あ。・・・ったく、ついてないわ」
車を路肩に止め、ふと横を見ると、リサイクルショップがある。
三杉正道「道、聞いてみるか・・・」
〇リサイクルショップの中
三杉正道「へぇ~。いろんなものがあるんだな」
三杉正道「おっ! カーナビあるじゃん!」
天海愛「その商品、きっとあなたのお役に立つと思いますよ」
三杉正道「道聞こうと思って入ったんだけど・・・。これ、いただきます!」
〇リサイクルショップの中
ピーチ「あいつ、道に迷ってたのか」
天海愛「そうね。あのナビで、正しい道を見つけられるといいけど・・・」
〇トラックのシート
三杉正道「頼むぞ~。これから仕事がうまく行くように、案内ヨロシクな~」
正道は自宅の住所を入力した。
ナビ音声「案内を開始します」
〇田園風景
正道の乗った軽トラが田舎道に止まっている。
三杉正道「おいおい! なんだよここ! 全く知らないところに連れてきやがって!」
三杉正道「お前、壊れてんのか!?」
コンコン
その時、老人が車の窓をノックした。
三杉正道「ん? なに?」
老人「あんた、もしかして八百屋さんかい?」
〇昔ながらの一軒家
三杉正道「えっ! 白菜をそんなに安く!?」
老人「ええ。実は先日、今まで卸していた八百屋さんに、契約を打ち切られてしまって・・・」
老人「安価でいいからうちの畑と契約してくれる八百屋さんを探しておったんです」
三杉正道「白菜が高騰して悩んでいたところです! ぜひぜひ、うちと契約を!」
〇トラックのシート
三杉正道「先週はついてたなぁ~。親父に褒められたのなんて、いつぶりだろう?」
三杉正道「いい契約が取れたのは、お前の案内のおかげだな」
ふと、カーナビの横に置かれた、珈琲の空き缶が目に入る。
三杉正道「そういえば、今週は店で真帆さんに会えなかったな。あぁ・・・。会いたいなぁ」
ナビ音声「案内を開始します」
三杉正道「なんだ? どっかに案内してる・・・?」
〇高級住宅街
三杉正道「また、よくわからない所に連れてこられた・・・」
三杉正道「あれ?」
三杉正道「真帆さん!?」
正道は徐行で真帆に近づくと、窓を開け、声をかけた。
三杉正道「真帆さん! 風邪ひいちゃうよ!」
神谷真帆「正道さん? どうしてここに・・・」
三杉正道「いいから! 乗ってください!」
〇トラックのシート
神谷真帆「すみません! 送ってもらっちゃって」
三杉正道「偶然通りがかって、良かったです」
神谷真帆「ほんと、グッドタイミング! 助かっちゃいました!」
三杉正道「・・・大丈夫ですか?」
神谷真帆「え?」
三杉正道「なんだか、いつもと笑い方が違うから。 無理してないかなって・・・」
神谷真帆「・・・バレちゃいましたか」
神谷真帆「・・・実は、彼にフラれちゃったんです」
三杉正道「えっ・・・?」
神谷真帆「浮気くらい、許そうと思ったんですよ。 でも、勘違いだったみたい。 彼は浮気じゃなくて、本気だった・・・」
三杉正道「それは・・・なんて言ったらいいか・・・」
ナビ音声「目的地に到着しました」
三杉正道「・・・?」
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