謀反人オルジェイ

澤村製作所

4話 選択(脚本)

謀反人オルジェイ

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〇屋敷の牢屋
ウェンサ「・・・・・・・・・」
  ウェンサは床にマントを広げると、
  横になる
オルジェイ「待て! お前は寝台を使え。 私が・・・」
ウェンサ「いい。こういったことには慣れている」
ウェンサ「高山にも荒野にも」
ウェンサ「人質として捕らわれ、 足蹴りにされることにもな」
オルジェイ「皇子なのにか?」
ウェンサ「バルハサは、リリとは違う」
ウェンサ「だが・・・」
ウェンサ「お前を助けるのは、 お前に恩義があるからだ」
ウェンサ「お前は、俺よりも、高山にも荒野にも、 床にも慣れていない」
ウェンサ「体を休めておけ」
オルジェイ「・・・ありがとう」
  私は、寝台に身を横たえる。
ウェンサ「オルジェイ。 俺は、お前の行動に救われた」
ウェンサ「お前は間違っていない」
ウェンサ「バルハサの民は、お前を歓迎するだろう」
  そう言うと、ウェンサはもう
  言葉を発することはなかった。
オルジェイ(私は、間違っていない・・・ 私は、正しい・・・)
  ウェンサの言葉が身に染みる。

〇黒
  だが、イナルナは違った
  私を謀反人にした
  私を裏切った
  私は、イナルナを
  良き夫だと思っていたのに・・・

〇宮殿の部屋
  私は、イナルナの憎しみに、
  少しも気が付かなかった。
  気づかぬまま、肌を合わせ、
  子を望んでいた。

〇屋敷の牢屋
  イナルナも憎いが、
  何より、自分の愚かさが憎い
  皆を救う導者であるのに、
  私は、己を救えなかったのだから・・・

〇岩山
  翌朝。
  私たちは村で、下山の準備を整える。

〇岩山
村の女「お願い、助けて!」
村人1「どけ!  金も麦もないなら、出て行くのが掟だ」
村の女「家なしで、 生きていけるわけないでしょう!」
村人1「家があっても無理だろうよ。 そのガキは長くは生きられねえ」
村人1「お前も汚い女だからなあ、 春もひさげねえだろ」
村の女「・・・!」
村人1「おら、出て行け!」

〇岩山
  母親が蹴られた瞬間、
  我慢できずに駆けだす。
ウェンサ「オルジェイ!」
  ウェンサが私の腕を、強くつかむ。
ウェンサ「己の立場を忘れたか!」
オルジェイ「しかし!」
ウェンサ「ほうっておけ。 この地は弱者には厳しい」
ウェンサ「弱いものは死ぬ。それが掟だ」
オルジェイ「掟からこぼれた者を救うのが、導者だ」
ウェンサ「今のお前は、謀反人だ。 そうなったのはなぜだ?」
ウェンサ「山を降りれば、バルハサの国境だ」
ウェンサ「導者の行動にこだわるな。 今は己の身を守れ。騒ぎを起こすな」
オルジェイ「そのために、 掟からこぼれた者を見捨てろと?」
ウェンサ「そうだ」
オルジェイ「嫌だ」
ウェンサ「お前・・・死ぬぞ!」
オルジェイ「構わない。私は導者だ」
ウェンサ「・・・!」

〇岩山
村人1「ん・・・? なんだ、あんた」
オルジェイ「話を聞いていた」
オルジェイ「その家だが、これで足りるか?」
  私は首から下げた導者の指輪を
  男に渡す。
村人1「これは・・・導者の指輪!?」
ウェンサ「この者は、導者だ。 指輪も本物だ」
ウェンサ「それがあれば、その家を買い取った上で 一生食うに困らない生活ができるだろう」
村人1「確かに、これが本物なら、まあ・・・」
  家主が、導者の指輪をしげしげと見る。

〇岩山
兵士2「そりゃあ・・・導者の指輪! なぜ村にある?」
ウェンサ「導者がいるからだ」
ウェンサ「導者は、そこの親子のために、 この指輪で家を贖うことを望んでいる」
老婆「おお・・・なんと・・・ 同じじゃ・・・昔と・・・」
老婆「昔昔、見たことがある。 先代の導者の指輪を・・・」
老婆「掟からこぼれた者を救おうとすることもな」
村人1「しかし・・・」
村長「その方は導者だ。 婆様が言うんだ、間違いない」
村長「この家に祭壇を作り、指輪を祀ろう」
ウェンサ「巡礼地にするのか」
村長「そうだ。 その女に、巡礼者の世話を任せる」
村の女「村長、ありがとう!」
村の女「導者様、ありがとうございます!!」
オルジェイ「この先、指輪は邪魔になる。 ここに置かれるのが一番いい」
ウェンサ「リリの状況について、何か知っているか?」
村長「ええ。ちょうど隊商が来ましたよ。 王が変わったそうです」
オルジェイ「な・・・」
村長「前の王が急死して、宰相が 後を継いだそうです」
村長「娘の導者が、バルハサの皇子と不貞を働き、謀反した」
村長「それで憤死したとか」
オルジェイ「イナルナが・・・父上を・・・」
村長「まあ、あくまで噂です」
村長「この村に導者が現れ、導者の指輪をお授けになった」
村長「導者はすぐに姿を消した」
村長「それで、わが村では指輪を お預かりすることになった」
村長「・・・これも、あくまで噂です」
ウェンサ「村長よ、俺は、導者に助けられた。 バルハサは導者に恩義がある」
村長「我が村もです、皇子」
村長「導者よ、どうぞ心のままに、 お進みください」

〇屋敷の牢屋
ウェンサ「軽率だ。オルジェイ」
オルジェイ「すまない・・・」
ウェンサ「運が悪ければ、騒ぎになっていた」
ウェンサ「罪もない村人を、何人も斬ることに なっていたかもしれない」
オルジェイ「そうだな・・・」
ウェンサ「明日、出よう」
ウェンサ「最低限の準備はできた。 あとは、バルハサに降りてなんとかする」
オルジェイ「・・・わかった」
ウェンサ「俺なら、あの母子を助けない。 己の身だけを守る」
オルジェイ「そうだな。 イナルナも同じことを言うだろう」
オルジェイ「・・・よく言われてた」
オルジェイ「一人、弱いものを助けたところで、 何も変わらないと」
ウェンサ「それでも、お前は、弱い者を 見捨てなかった」
ウェンサ「導者だからな」
オルジェイ「そうだな。 導者だから、そうせねばと信じてきた」
オルジェイ「今思えば、私の、こういうところを イナルナは疎んでいたのだろう」
ウェンサ「オルジェイ、お前は確かに傲慢だ」
ウェンサ「だが、立派でもある」
ウェンサ「お前の夫は、お前の美点に 気づかなかったのだろう」
ウェンサ「・・・クトゥと一緒になれば よかったものを」
オルジェイ「えっ・・・?」
ウェンサ「気づいてなかったのか? お前を好いていた」
オルジェイ「クトゥが・・・?」
オルジェイ「はは、まさか」
ウェンサ「・・・あれも、気の毒に」
ウェンサ「リリは王が倒れた。混乱のさなかだろう。 無事だといいが」
オルジェイ「クトゥなら大丈夫だ。きっと」
オルジェイ「・・・ウェンサ。 なぜ、ここまでして私を助ける?」
オルジェイ「恩義だとしても、過分ではないか?」
ウェンサ「いや、まだ足りていない。 お前の行動は、それほどの価値がある」
ウェンサ「我が国に行けばわかるだろう」
ウェンサ「バルハサでも、リリほどではないが 導者は尊敬されている」
ウェンサ「お前の夫は、王位について 目的は果たした」
ウェンサ「バルハサに入りさえすれば、 追及はされないだろう」
ウェンサ「・・・寝ろ」
  ウェンサが床に身を横たえる。
  私も寝台に身を預ける。

〇黒
  イナルナは、父上を殺して
  王になった・・・
  本当に、最初から・・・
  私を娶った時から、
  そのつもりだったのだろうな

〇宮殿の部屋
  私は、何も知らず、イナルナを
  疑うことなく、子を望んで・・・
  なんと愚かだったのだろう

〇屋敷の牢屋
  この村は高山にあり、冷える。
  リリでは、いつもイナルナの肌が
  そばにあった。
  けど、今の私は、一人。
  夫に裏切られた
  謀反者オルジェイなのだ・・・

次のエピソード:5話 別れ

コメント

  • オルジェイの凛々しさと気高さが際立つ第4話ですね。それにしても、人質であるウェンサが共に逃亡して、2国間の関係に影響が無いのだろうかと考えてしまいました。

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