謀反人オルジェイ

澤村製作所

2話 裏切り(脚本)

謀反人オルジェイ

澤村製作所

今すぐ読む

謀反人オルジェイ
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇空
  牽制が効いたのか、その後、
  ウェンサをめぐる騒ぎは起きず、
  穏やかな日々が続いた。
  ――ある日のこと。

〇森の中
クトゥ「はっ・・・!」
ウェンサ「・・・!」
  クトゥとウェンサが、剣の稽古をしていた

〇森の中
オルジェイ(強い・・・! 勇猛で知られるバルハサの皇子だけある)
オルジェイ(クトゥよりも上かもしれないな)
  その時。

〇森の中
クトゥ「・・・オルジェイ!」
ウェンサ「・・・!」
  私に気づいた二人が動きを止める。
オルジェイ「すごいな、見事な剣筋だ」
クトゥ「足枷つきで、これだぜ? さすがバルハサ人だ」
  ウェンサの足には、足環と、
  鎖につながれた重りがあった。
オルジェイ「・・・すまない。夫には話したのだが」
ウェンサ「いい。 宰相の立場では、俺を自由にできない」
クトゥ「ま、そんなわけで体もなまるだろうからな。 稽古に誘ったのさ」
クトゥ「オレはしばらく稽古できねえし」
オルジェイ「なぜだ?」
クトゥ「リリを出るからだ。 隊商の護衛だとさ」
オルジェイ「いつ? 聞いてないぞ」
クトゥ「これからだよ。 宰相様のご命令だ」
クトゥ「護衛が足りないからといって・・・ ったく、急な話だよな」
ウェンサ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
クトゥ「てなわけで、あまり時間がねえ。 久しぶりにやろうぜ」
オルジェイ「いいのか?」
クトゥ「やりたいんだろ?」
クトゥ「ウェンサ、オルジェイは強いぜ? 力だけが大事じゃないんだと勉強になる」
ウェンサ「ほう、楽しみだ」

〇城壁
イナルナ「・・・・・・・・・・・・・・・」
イナルナ「皆、見たね?」
兵士2「は・・・」
イナルナ「報告があったとおりだ」
イナルナ「我が妻は、バルハサの皇子と 不貞を働いている」
イナルナ「我が妻は導者であり、リリの王女でもある」
イナルナ「これは、リリへの謀反だ」
兵士1「謀反・・・」
イナルナ「知ってのとおり、私は妻を敬い、 妻に尽くしてきた」
イナルナ「妻は王女であり、導者でもあるからね」
イナルナ「それをこの仕打ち・・・」
イナルナ「もはやオルジェイは導者ではない! 不貞の罪を犯した謀反人だ!」
イナルナ「――殺せ」
兵士2「し、しかし、オルジェイ様は導者の指輪をお持ちで・・・」
兵士1「宰相様の奥方様でもあり・・・」
兵士2「まずは、捕らえるだけで 十分なのでは・・・」
イナルナ「二度、言わせるな。 殺せ!」
イナルナ「あの女を、この世から消し去れ!」

〇雲の上
  その日の夜・・・

〇宮殿の部屋
オルジェイ(・・・遅いな)
  イナルナが帰ってこない。
オルジェイ(初めてだな。 戻ると、いつもイナルナがいたから・・・)
オルジェイ(何かあったのだろうか?)
  不安になるが、すぐに思い直す。
  イナルナは宰相だ。
  たまには仕事で遅くなることもあるだろう
オルジェイ(よし、報告書を済ませてしまおう)
  机に向かった時だった
オルジェイ「・・・!」
  人の気配がして、思わず机の上の剣を
  ひったくる。
ウェンサ「俺だ」
オルジェイ「お前、何を・・・! どうやって足枷を外して、ここにきた?!」
ウェンサ「あんなものどうにでもなる」
ウェンサ「お前の夫は、今夜は戻らない」
オルジェイ「は・・・?」
ウェンサ「お前は夫に殺される。 だから助けに来た」
オルジェイ「な・・・」
ウェンサ「言ったはずだ。 恩義は必ず返すと」
ウェンサ「来い」
  あまりのことに、返す言葉が出てこない。
ウェンサ「外に出ればわかる。 何事もなければ戻ればいい」
オルジェイ「イナルナを疑えと?」
ウェンサ「言ったはずだ。 お前の夫は、お前を殺そうとしている」
ウェンサ「お前は、夫に裏切られた」
ウェンサ「外に出れば真偽はわかる。 俺は、受けた恩義を返したい」
ウェンサ「だが、お前は導者だ。 お前が進む道は、お前が決めろ」
オルジェイ(イナルナが・・・私を、殺す?)
オルジェイ(信じられない。 なぜ?)
  確かに帰りが遅いのは初めてだ。
  でも・・・

〇宮殿の部屋
イナルナ「君は、少し働きすぎじゃないかい? 少し配分を考えたほうがいい」
イナルナ「そろそろ子も欲しいしね?」
  イナルナは子を望んでいた。
  肌だって、何度も合わせている。

〇宮殿の部屋
イナルナ「オルジェイ、休もう」
  いつだって、イナルナは私に優しかった

〇宮殿の部屋
オルジェイ(イナルナが私を殺す? なぜ? どうして? ありえない)
ウェンサ「クトゥはリリを出た。 今夜、お前を助けられるのは俺だけだ」
ウェンサ「来ないなら、俺は行く」
  ウェンサが踵を返す。
  私は導者だ。
  そしてイナルナはまだ戻ってこない。
  もし、ウェンサが
  嘘をついていないとしたら?
オルジェイ(間もなく、ここに、兵が来る)
オルジェイ(だとしたら、外に出れば、 真偽はわかるはずだ)
オルジェイ「わかった。外に出るだけだぞ」
ウェンサ「ああ、それですべてわかる」
ウェンサ「剣を持ち、装備を整えろ。 急げ」

〇雲の上
  私は、いつもの兵装に身を包むと、
  ウェンサと共に窓の外へ出、
  壁をつたって下へ降りる

〇城門沿い
兵士3「急げー!」
兵士2「見張りを固めろ!」
兵士1「謀反人は旗士だ! 気を抜くな!」

〇城門沿い
オルジェイ「・・・!」
ウェンサ「理解できたか?」
オルジェイ(そんな・・・まさか・・・)

〇城門沿い
  部屋のある塔へ、
  兵士たちが向かっている。
  私を、殺そうとしている。

〇城門沿い
ウェンサ「逃げるぞ。ついてこい」
オルジェイ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ウェンサ「来い!」
  ウェンサが私の腕をつかむ。

〇雲の上
  イナルナは、私を殺そうとしている
  イナルナは、私を憎んでいる
  なぜ?

〇王宮の入口
  現実を受け入れられないまま、
  私はウェンサに腕を引かれ、走り続ける。
兵士2「導者は、まだ見つからないのか?!」
兵士3「殺せなくてもいい! 捕らえて、宰相様の前に引きずり出せ!」
兵士2「導者様が敵国皇子と不貞して逃亡とは。 世も末だぜ」
兵士3「はは、あいつ、男前だったからな」
オルジェイ「不貞って・・・・そんな、私は・・・」
ウェンサ「お前の夫が、皆に吹き込んだのだろう」
ウェンサ「お前は、俺を助けるべきではなかったな。 宰相に口実を与えた」
ウェンサ「今のお前は、リリの謀反人だ。 行くぞ」

〇けもの道
  ウェンサに導かれるまま、
  兵の目を盗んで城壁を越え、
  草むらに身を隠し、山へ向かう
オルジェイ(イナルナは、ウェンサを助けたことを 不貞と誤解したのか?)
オルジェイ(・・・いや、違う)
オルジェイ(そうであるなら、多くの兵などいらない。 寝室で私を問い詰めればいい)
  理由はわからないが、
  イナルナは、とにかく私を殺したかった
  ウェンサとは何もないと知った上で、私に
  不貞の罪を着せ、謀反人だと嘘をついた
  私は、イナルナに・・・
  夫に、裏切られたのだ。
  右手の中指には、
  導者の指輪が光っている。
オルジェイ(イナルナ・・・どうして・・・!!)

〇雲の上
  こうして私は、敵国の皇子と通じた
  謀反人として、追われる身となった・・・

次のエピソード:3話 逃亡

コメント

  • 急展開に突入ですね。王道的な展開と人間味あふれるキャラクターに、どんどん引き込まれてしまいます。逃亡先は如何、続きが楽しみです。

ページTOPへ