第6章 アポロオーラ(脚本)
〇寂れた村
ムーヴ村のおばさん「ヴィオラちゃん 行っちまうのかい」
ヴィオラ・コーディエ「うん」
ムーヴ村のおばさん「お母さんのこと・・・残念だったわね」
ヴィオラ・コーディエ「・・・うん」
ヴィオラ・コーディエ「<虹>を見つければ、あたしと同じ思いをする人がいなくなるかもしれない」
ヴィオラ・コーディエ「父さんにも・・・ いつか会えるかもしれない」
ヴィオラ・コーディエ「だから、あたし行くよ」
ヴィオラ・コーディエ「一人前の魔道士になったら帰ってくるよ 父さんと一緒に!」
〇城の客室
ヴィオラ・コーディエ「・・・!」
ヴィオラ・コーディエ「昔の夢・・・」
ヴィオラ・コーディエ「みんな・・・ もう、いないんだよな・・・」
ヴィオラ・コーディエ「・・・・・・」
ヴィオラ・コーディエ「落ち込んでなんかいられない」
ヴィオラ・コーディエ「あたしは、あたしにやれることをしなくちゃ!」
〇城の回廊
シグバート・フォン・ブラッドショット「燃えろ!」
ノエル・エンジェライト「・・・・・・」
シグバート・フォン・ブラッドショット「・・・火精よ! 灼熱の業火を以て焼き尽くせ!」
ノエル・エンジェライト「・・・凍てつけ」
ミモザ・クラリティ「すごい・・・」
ヴィオラ・コーディエ「やっぱノエルの魔法って規格外だよな」
シグバート・フォン・ブラッドショット「おいヴィオラ なんのためにこんなことをさせたんだ」
ヴィオラ・コーディエ「ノエルの魔法で火山を凍らせられないかなって思ってさ」
シグバート・フォン・ブラッドショット「火山を・・・だと?」
ヴィオラ・コーディエ「入学してすぐやった試験のこと、覚えてる?」
シグバート・フォン・ブラッドショット「ああ ノエルが火精術を試験官ごと凍らせた話か?」
〇ファンタジーの学園
ヴィオラ・コーディエ「そうそう 魔法障壁が間に合わなくて、学園全体がしばらく真冬みたいになってたよな」
〇城の回廊
ノエル・エンジェライト「・・・・・・」
ヴィオラ・コーディエ「今のを見て思ったよ やっぱノエルならできるって!」
ノエル・エンジェライト「・・・短時間であれば可能だと思います」
ノエル・エンジェライト「ただ・・・ 氷精術を火口まで運ぶのはぼくの魔法だけでは不可能です」
シグバート・フォン・ブラッドショット「なるほど 風精術の使い手が必要か」
ミモザ・クラリティ「わたしたち、誰も風精術を使えませんよね」
ヴィオラ・コーディエ「・・・そうだ!」
ヴィオラ・コーディエ「心当たりがあるんだ ちょっと待ってて!」
シグバート・フォン・ブラッドショット「待て、ヴィオラ!」
〇城壁
ミスルト・ブレイジャー「・・・・・・」
ヴィオラ・コーディエ「・・・いた! ミスルトさん!」
ミスルト・ブレイジャー「ヴィオラくん?」
ヴィオラ・コーディエ「頼みがあるんです!」
シグバート・フォン・ブラッドショット「ヴィオラ、単独行動は慎めと・・・」
シグバート・フォン・ブラッドショット「・・・そうか 彼は風精術の使い手か」
ミスルト・ブレイジャー「ああ、そうだが・・・?」
ヴィオラ・コーディエ「実は・・・」
〇豪華な部屋
キープレート学園長「・・・そうですか テレーゼ隊が・・・」
バーバラ先生「はい・・・ 遺体はすべて回収済みです」
キープレート学園長「・・・ご苦労でした 下がりなさい」
キープレート学園長「奴を止める手立てを考えねば・・・」
〇城壁
ミスルト・ブレイジャー「・・・なるほど それでわたしの力を借りたい、と」
ミスルト・ブレイジャー「火山を凍らせるなど 無茶なことを考えるな、きみは」
ヴィオラ・コーディエ「ミスルトさんの風精術とノエルの氷精術があればなんとかなると思うんだ」
ヴィオラ・コーディエ「言ってましたよね いつか世界が滅びるとしてもそれは今ではない、って」
ヴィオラ・コーディエ「でも・・・ 今日は滅びなくても、明日には滅びるかもしれない」
ミスルト・ブレイジャー「・・・・・・」
ヴィオラ・コーディエ「世界を救えるかもしれない力があるのになにもしなかったら、そのとききっと後悔する」
ヴィオラ・コーディエ「・・・ずっと変わらないものなんて、この世界にはないんだ」
シグバート・フォン・ブラッドショット「わたしからもお願いします」
ミスルト・ブレイジャー「・・・いいだろう きみたちに力を貸そう」
ヴィオラ・コーディエ「ほんとですか!?」
ミスルト・ブレイジャー「ただし、クレーブス島への海路はかなり過酷だ 覚悟はできているか?」
ヴィオラ・コーディエ「もちろん!」
〇海
ヴィオラ・コーディエ「うぐぐ・・・!」
シグバート・フォン・ブラッドショット「ちゃんと力を込めて漕げ! まっすぐ進まないだろう!」
ミスルト・ブレイジャー「きみたちは幸運だな 途中まで船に乗って来られたのだから」
ミスルト・ブレイジャー「わたしたちは交代でずっとイカダを漕いでいたんだぞ それも往復」
ミモザ・クラリティ「では、帰りはアルマディンまでイカダを漕ぐのですか?」
ノエル・エンジェライト「いえ 万が一噴火しても被害が及ばない場所に停泊しているそうです」
〇島
ミスルト・ブレイジャー「見えてきたぞ クレーブス島だ」
〇火山の噴火
ヴィオラ・コーディエ「うわっ、暑い!」
〇島
ミスルト・ブレイジャー「ノエルくん、きみのタイミングで始めたまえ こちらが合わせ・・・」
ノエル・エンジェライト「氷精よ、青き息吹をわが手に宿せ」
ミスルト・ブレイジャー「・・・・・・」
ミスルト・ブレイジャー「風精よ、緑風の調べを奏でたまえ」
〇火山の噴火
〇島
ヴィオラ・コーディエ「すげー! 凍った!」
ミモザ・クラリティ「あれほどの炎が・・・」
シグバート・フォン・ブラッドショット「まさか本当に・・・」
ノエル・エンジェライト「ぼくたちはここに残ります アポロオーラの捜索は頼みます」
シグバート・フォン・ブラッドショット「ああ、まかせろ」
ミスルト・ブレイジャー「長くは持たないだろう なるべく早く戻りたまえ」
ミモザ・クラリティ「はい おふたりも、お気をつけて」
ヴィオラ・コーディエ「よし、上陸だ!」
〇源泉
ヴィオラ・コーディエ「あっついなー・・・」
ミモザ・クラリティ「ここから内部に入れるみたいですよ」
ヴィオラ・コーディエ「よし、行ってみよっか」
シグバート・フォン・ブラッドショット「足元に気をつけろ、ミモザ」
ミモザ・クラリティ「ありがとう・・・ございます ・・・シグバート様」
〇岩の洞窟
ヴィオラ・コーディエ「さすがに中の溶岩は凍ってないね」
シグバート・フォン・ブラッドショット「魔物はいないようだな」
ヴィオラ・コーディエ「・・・あ、あれ!」
ミモザ・クラリティ「アポロオーラでしょうか・・・?」
シグバート・フォン・ブラッドショット「凄まじい炎の力を感じる・・・ 間違いないな」
ヴィオラ・コーディエ「じゃ、あれを持ってさっさと戻っ・・・」
ヴィオラ・コーディエ「うわっ、なんだ!?」
ミモザ・クラリティ「噴火でしょうか!?」
シグバート・フォン・ブラッドショット「・・・違う! あれは・・・」
ヴィオラ・コーディエ「天使・・・!?」
〇島
ミスルト・ブレイジャー「思ったより消耗が激しいな・・・ 魔力が枯渇しそうだ」
ノエル・エンジェライト「・・・どうぞ」
ミスルト・ブレイジャー「それはきみの分の魔力回復薬だろう?」
ノエル・エンジェライト「ぼくはまだ余裕がありますので」
ミスルト・ブレイジャー「・・・ではありがたくいただこう」
ミスルト・ブレイジャー「シグバートくんとミモザくんは 強い魔力を持っているようだ」
ミスルト・ブレイジャー「やはり王族は違うな」
ノエル・エンジェライト「ええ」
ミスルト・ブレイジャー「だが、きみの魔力は あのふたりを遥かに上回るようだ」
ノエル・エンジェライト「・・・ええ」
ミスルト・ブレイジャー「きみは・・・ いったい何者なのだ?」
ノエル・エンジェライト「・・・・・・ ぼくは・・・」
ミスルト・ブレイジャー「・・・待て そこの波間になにか見えなかったか?」
ノエル・エンジェライト「あれは・・・」
ミスルト・ブレイジャー「半魚の魔物セイレーン!」
ミスルト・ブレイジャー「耳を塞げ! 歌声を聴くと水中に引きずり込まれるぞ!」
〇岩の洞窟
???「・・・・・・」
ヴィオラ・コーディエ「な、なんで天使がいるんだ!?」
ミモザ・クラリティ「魔物・・・なのでしょうか?」
シグバート・フォン・ブラッドショット「・・・なんにせよ、倒さなければな」
ヴィオラ・コーディエ「・・・そうだな! 行くよ、ふたりとも!」
〇島
ミスルト・ブレイジャー(くっ、どうすれば・・・!)
ノエル・エンジェライト「・・・・・・」
ミスルト・ブレイジャー(ノエルくん・・・?)
ミスルト・ブレイジャー「なっ・・・! なぜ耳から手を離している!?」
ミスルト・ブレイジャー「ノエルくん!」
〇水中
ノエル・エンジェライト「・・・・・・」
セイレーン「・・・!?」
〇岩の洞窟
ヴィオラ・コーディエ「雷精よ、わが叫びを聞け!」
ミモザ・クラリティ「なんとか倒せましたね・・・」
ヴィオラ・コーディエ「魔力切れだー・・・」
シグバート・フォン・ブラッドショット「ノエルとミスルト先輩はどうしているだろうか」
ミモザ・クラリティ「ヴィオラさん、足にお怪我を・・・」
ヴィオラ・コーディエ「だいじょうぶ 歩けないほどじゃないから」
シグバート・フォン・ブラッドショット「・・・かなり暑くなってきた 早く脱出すべきだな」
ヴィオラ・コーディエ「じゃ、アポロオーラを・・・」
ヴィオラ・コーディエ「あっつ!」
シグバート・フォン・ブラッドショット「・・・オレが持とう」
ミモザ・クラリティ「・・・シグバート様! ヴィオラさん! 後ろを・・・!」
ヴィオラ・コーディエ「ま、まだ生きてるのかよ!?」
シグバート・フォン・ブラッドショット「走れ!」
〇島
ミスルト・ブレイジャー「・・・ノエルくん!」
ノエル・エンジェライト「喉を潰しました」
ミスルト・ブレイジャー「・・・歌を聴いても平気だったのか?」
ノエル・エンジェライト「聴いた者を魅了し、海へ沈める歌・・・」
ノエル・エンジェライト「その源が魔力であれば、自身の魔力を上回る者へは効かないはず」
ミスルト・ブレイジャー「それは・・・ そうなのだが・・・」
〇岩の洞窟
シグバート・フォン・ブラッドショット「このままでは追いつかれる!」
ミモザ・クラリティ「ですが、もう魔力が・・・!」
ヴィオラ・コーディエ「・・・・・・」
ヴィオラ・コーディエ「ミモザ! シグバート! あたしはここでこいつを足止めする!」
ミモザ・クラリティ「えっ!?」
シグバート・フォン・ブラッドショット「・・・わかった アポロオーラはオレたちにまかせろ」
ミモザ・クラリティ「シグバート様!?」
ヴィオラ・コーディエ「だいじょうぶ! 絶対追いつくからさ」
ミモザ・クラリティ「・・・っ」
ミモザ・クラリティ「・・・ヴィオラさん、あなたを信じます」
ミモザ・クラリティ「どうかご無事で・・・!」
〇島
ミスルト・ブレイジャー「はあ・・・はあ・・・ 限界だ・・・」
ノエル・エンジェライト「・・・回復薬は使い切りました」
ミスルト・ブレイジャー「彼らは無事だろうか・・・」
ノエル・エンジェライト「様子を見てきます」
ミスルト・ブレイジャー「ノ、ノエルくん!?」
ミスルト・ブレイジャー「・・・なんて男だ・・・」
〇源泉
ミモザ・クラリティ「ヴィオラさん・・・」
シグバート・フォン・ブラッドショット「・・・信じるしかない」
シグバート・フォン・ブラッドショット「ノエル!」
ノエル・エンジェライト「ふたりとも無事でしたか ヴィオラさんは・・・」
ミモザ・クラリティ「まだ中に・・・!」
ノエル・エンジェライト「・・・わかりました ぼくが行きます」
〇岩の洞窟
ヴィオラ・コーディエ「なんとか倒したけど・・・ 足が動かない・・・」
ヴィオラ・コーディエ「死ぬのかな・・・ここで」
ヴィオラ・コーディエ「みんな、ごめん・・・」
ノエル・エンジェライト「ヴィオラさん」
ヴィオラ・コーディエ「ノエル!?」
ノエル・エンジェライト「話は後です 脱出しましょう」
ヴィオラ・コーディエ「けど、もう歩けな・・・」
ノエル・エンジェライト「応急処置ですが、傷口を塞ぎました」
ノエル・エンジェライト「行きましょう」
ヴィオラ・コーディエ「・・・うん!」
〇源泉
〇島
ヴィオラ・コーディエ「みんなー!」
シグバート・フォン・ブラッドショット「ヴィオラ! ノエル!」
ミモザ・クラリティ「ご無事で本当によかった・・・!」
ヴィオラ・コーディエ「ノエル、ありがとな! おかげで助かっ・・・」
ミモザ・クラリティ「ノエル様!?」
ミスルト・ブレイジャー「ノエルく・・・」
シグバート・フォン・ブラッドショット「・・・眠っているようだな」
ミスルト・ブレイジャー「魔力切れだろう 彼は相当無茶をしたからな」
ヴィオラ・コーディエ「ミモザ、膝貸してやれば?」
ミモザ・クラリティ「わっ・・・わたしがですか!?」
ヴィオラ・コーディエ「あたしらは交代で船まで漕ぐからさ」
ミスルト・ブレイジャー「ヴィオラくん・・・ さすがにそれは・・・どうかと思うが」
ヴィオラ・コーディエ「え?」
シグバート・フォン・ブラッドショット「・・・貸してやれ ミモザが嫌でなければ、だが」
ミモザ・クラリティ「は、はい・・・ では・・・失礼します」
ミスルト・ブレイジャー「・・・・・・」
ヴィオラ・コーディエ「ミスルトさん 協力してくれてありがとう!」
ミスルト・ブレイジャー「あ、ああ・・・ 礼には及ばん」
ミモザ・クラリティ(膝枕なんて・・・ シグバート様にもしたことがないのに・・・)
シグバート・フォン・ブラッドショット「では一旦学園へ戻るか 学園長へ報告しなければな」
ヴィオラ・コーディエ「おー!」
ミスルト・ブレイジャー(・・・わたしが気にしすぎなのだろうか・・・?)