終活魔王のエンディングノート

大河内 りさ

P14・来訪者(脚本)

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〇西洋風の受付
ルカード「冒険者ミア、キオル、ルカード」
ルカード「召致に応じまかりこしました」
冒険者ギルド職員「ルカード様!」
ルカード「様はいらないっていつも言ってるのに」
ルカード「はいこれ、ギルドカード」
冒険者ギルド職員「ありがとうございます」
ルカード「今回の召集は、魔王の件?」
冒険者ギルド職員「ええ、そうです」
冒険者ギルド職員「ルカード様よりいただいた情報は」
冒険者ギルド職員「ギルド長を通じて、 領主様に上申させていただきました」
ルカード「あとは領主様が宰相閣下に 建言してくれるかどうか・・・か」
冒険者ギルド職員「それなのですが・・・」
冒険者ギルド職員「少し、難しいかもしれません」
ルカード「えっ、どうして──」
  ギルド職員が、ちら──と広間へ視線を動かした。
ルカード「ラフェル王子!?」
ミア「あら〜、イケメン」
キオル「第三王子が何でギルドに──」
冒険者ギルド職員「それが・・・」
ラフェル「勇者ルカード!」
ラフェル「こんな所で会えるなんて!」
ルカード「ご尊顔を拝し──」
ラフェル「そんな挨拶いらないよ」
ラフェル「ここでは、きみが一番偉いんだろ?」
ルカード「偉いとか偉くないとか、 そんな地位も身分もありませんよ」
ラフェル「勇者が何を言ってるんだ」
ラフェル「おや、そちらは──」
キオル「お会いできて光栄です、王子」
ラフェル「ああ。ルズベリーの養嗣子か」
ラフェル「彼とパーティを?」
ルカード「ええ。優秀な魔術士です」
ラフェル「ふぅん」
ルカード「ところで、王子はここで何を・・・?」
ラフェル「もちろん、冒険者になりにきたのさ」
ルカード「えっ・・・」
ラフェル「これからギルドより正式に公表されるが」
ラフェル「父上が、魔王の討伐命令を下した」
ルカード「・・・・・・」
ラフェル「しかしだ」
ラフェル「噂によるとその魔王、 なかなかの美少女らしいじゃないか」
ルカード「え・・・?」
ラフェル「僕は魔王を打ち倒し、 隷属させようと考えている」
ルカード「なっ・・・」
ルカード「そんなこと──」
ラフェル「心配はいらないよ」
ラフェル「神官に特別な首枷を創らせた」
ラフェル「それがあれば、いくらでも 言うことを聞かせられる」
ラフェル「心も、身体も・・・思うままだ」
ルカード「王子、それはギルドの規約に抵触します。 国の法令にも──」
ラフェル「そんなことは分かっている」
ルカード「ならば──」
ラフェル「・・・僕は何としても、兄上たちを 王位から退かせなければならないんだ」
従者「殿下、そろそろ・・・」
ラフェル「分かった」
ラフェル「勇者であるきみとパーティを 組みたかったのだが、難しそうだ」
ラフェル「こちらはこちらで好きにやるから」
ラフェル「──邪魔はするな」
ラフェル「・・・では、失礼」
ルカード「・・・ッ」
キオル「おい、大丈夫か!?」
キオル「顔面偏差値が違いすぎて ダメージ受けてないか!?」
ルカード「うるさいな」
キオル「・・・ったく」
キオル「王子だろうが何だろうが、 いけすかない野郎だぜ」
ルカード「魔王を隷属させるなんて、 そんなこと・・・」
キオル「そんなん、簡単にできるわけねーだろ」
冒険者ギルド職員「僕もそう思います」
冒険者ギルド職員「ただ、ラフェル様は ご自身でお連れになった護衛の他」
冒険者ギルド職員「仕事にあぶれた冒険者を 大量に雇い入れているようで・・・」
冒険者ギルド職員「中には賊のような者までいて、 まるで統制が取れていないんです」
冒険者ギルド職員「当然ギルドの規律など知らぬ存ぜぬを 決め込むので、困っていて・・・」
ルカード「このままだと多方面に影響があるね」
冒険者ギルド職員「ええ。 いずれ大きな問題を生むのでは、と──」
冒険者ギルド職員「ただ、王子は領主様のお屋敷に 逗留されているので・・・」
キオル「誰も注意できねーわけだ」
ルカード「領主様も宰相閣下に 謁見どころではないね・・・」
冒険者ギルド職員「そういうことです」
ミア「それなら、さっさとヴィエリゼちゃんに 会いに行っちゃいましょうよ」
「え!?」
ミア「それで、話し合いなり殴り合いなりして、 早いとこ解決しちゃいましょ!」
キオル「そんな簡単な話じゃねーだろ・・・」
キオル「あいつら、あの子が魔王だってこと 隠してたんだぞ」
ミア「私は知ってたけど?」
「ええっ!?」
ミア「ヴィエリゼちゃんがこれまで魔王として表に出てこなかったのは、人間界との均衡を保つためだったと思うの」
ミア「魔王として名乗りをあげれば、 両者間の力関係と思惑によって、 秩序が乱れると分かっていたから」
ミア「でも、オークションを目の当たりにして、冷静でいられなくなってしまった・・・」
ミア「私たちを騙すつもりはなかったのなんて、一目瞭然じゃない」
ルカード「ミア・・・」
ミア「ルカードは和平交渉がしたいんじゃないの?」
ルカード「でも・・・」
ミア「話をしなければ何も解決しないでしょ?」
ミア「偉い人はあとで適当に丸め込めばいいんだし」
キオル「ぶっは!」
キオル「・・・ったく、お前もたいがい脳筋だよな」
ミア「あら、誰と比べたのかしら?」
キオル「うるせえ!」
ルカード「ははっ」
ルカード「そうだね、ミアの言う通りだ」
ルカード「──決めた」
ルカード「ヴィエリゼに会いに行く」

〇古い洋館
  ──数日後──

〇王妃謁見の間
ローレット「ホントに息子全員連れてきたの・・・?」
ローレット「婚活パーティーより人数多いんだけど!?」
ゲンティム「嬢ちゃんが嫌がると思って、 既婚者と彼女持ちは置いてきたぞ?」
ローレット「マジか・・・」
ダーリナ「・・・・・・・・・」
ゲンティム「ちなみにゲイダルは仕事で不参加だ」
ローレット「だってー。よかったね?」
ダーリナ「べっ、別に探してません!」
(探してたのか・・・)
ゲイダル「失礼いたします」
ゲンティム「おっ、噂をすれば」
ゲンティム「どうした、ゲイダル」
ゲンティム「もしかして、お見合い 参加したくなっちゃった?」
ゲイダル「違います」
ゲイダル「城門の外に人間が来ているのですが──」
ローレット「もしかしてモブ顔!?」
ゲイダル「いえ、やたらキラキラした冒険者です」
ローレット「やたらキラキラ・・・?」
ゲンティム「冒険者だと?」
ゲイダル「戦いに来たわけではない、 陛下にお会いしたい、と・・・」
ゲイダル「お目通りさせていいものか、 私では判断しかね──」
ヴィエリゼ「じゃ、とりあえず見に行ってみよっか?」
「ヴィエリゼ様!?   /   エリゼ!?」
ローレット「見に行くって・・・」
ヴィエリゼ「だって、何しに来たのか気になるし」
ダーリナ「危険です!」
ヴィエリゼ「ゲンティムと一緒なら大丈夫でしょ?」
ゲンティム「どうせダメだっつっても行くんだろ?」
ゲンティム「ったく、しょうがねえな」
ヴィエリゼ「さ、行こ行こっ」
ローレット「・・・エリゼってさぁ」
ローレット「ゲンティムにはけっこう甘えるよねぇ」
ダーリナ「お小さい頃からの側近ですもの。 とはいえ──」
「悔しい・・・!!」

〇巨大な城門
ダーリナ「門番の姿が見えませんね」
ゲンティム「あいつクビだな」
ゲンティム「お前か、やたらキラキラした冒険者ってのは」
ラフェル「ラフェル・クレイジス・フェリエル・レイ・ガーディン=ルミルソンだ」
ゲンティム「あ? 何だって?」
ヴィエリゼ「──ルミルソン公爵?」
ヴィエリゼ「帝国の第三王子が、何故ここへ・・・」
ラフェル「僕のことをご存知でしたか」
ラフェル「もしかしてあなたが──」
ヴィエリゼ「ヴィエリゼ・レイヤール・ヴァンダドラル」
ヴィエリゼ「魔界の統治者よ」
ラフェル「やはり!」
ラフェル「噂通り──いや、噂以上に 可憐で可愛らしい!!」
「はい!?」
ラフェル「お目にかかれて光栄です、魔女王陛下──」
ヴィエリゼ「ええええ!?」
ヴィエリゼ「あの、ラフェル殿下・・・?」
ラフェル「どうぞ、僕のことはラフェルと」
ヴィエリゼ「あ、はい」
ゲンティム「クソ、無駄にキラキラしやがって!」
ゲンティム「帝国の王子が何しに来た!?」
ラフェル「噂のレディにひとめ会いたかったのも 真実ですが・・・」
ラフェル「──和議を、結ぶつもりはありませんか?」
ヴィエリゼ「・・・・・・」
ヴィエリゼ「詳しい話は中で」
ダーリナ「よろしいのですか?」
ヴィエリゼ「話を聞くだけよ」
ヴィエリゼ「貴賓室へご案内して」
ダーリナ「かしこまりました」
ヴィエリゼ(使者も立てず王子自ら こちらの領内に入ってくるなんて・・・)
ヴィエリゼ(罠か、それとも────)

次のエピソード:P15・襲撃1

コメント

  • ラフェル…!顔はキラキラなのに中身はドス黒い…😨
    荒くれ者を大量に雇っておきながら和議を申し出る…油断ならない王子…!💦
    ルカードの到着が待ち遠しいです!😱

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