傍若武人ガドウオー

四二一

傍若武人ガドウオー現る!(脚本)

傍若武人ガドウオー

四二一

今すぐ読む

傍若武人ガドウオー
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇雑踏
  傍若無人──
  他人を無視し、自分勝手に振る舞うこと。
  また、そのさま。
  私があの日出会ったのは、
  まさにそんな人でした。
  迷惑で、
  面倒くさくて、
  絶対関わりたくないけど──
  どこか憧れちゃう、そんな人。
  ──人、ってか・・・
  "怪人"、だけど・・・。

〇シックな玄関
岡崎五郎「おいやよい! 今日は風景画の練習だぞ! 道具持ってさっさとどっか行って来い!」
岡崎やよい「はいはーい・・・」
岡崎五郎「お前はまだまだパースもめちゃくちゃだし 色彩感覚もおかしいし、他の勉強なんか してる場合じゃないんだぞ!」
岡崎やよい「わかってるって・・・」
岡崎やよい「いってきまーす・・・」

〇噴水広場
岡崎やよい「あのクソ親父好き勝手 言いやがって・・・」
岡崎やよい「さてと、テキトーにその辺描いて テキトーに怒られてやりすごすか」
岡崎やよい「ん・・・?」
  ざわざわ・・・・・・
先輩警察「コラー! 噴水に入るな!」
ガドウオー「うひょーきもっちいい!!」
先輩警察「シャンプーするな!!」
ガドウオー「うるせええ! ここは今俺のシャワールームだ!」
ガドウオー「使いたきゃ自分ちのシャワー使え!」
先輩警察「そうじゃない!」
岡崎やよい(なんかやばい怪人いる・・・)
後輩警察「先輩、こいつよくみたらガドウオーですよ」
先輩警察「ガドウオー?」
後輩警察「傍若武人ガドウオー・・・」
後輩警察「それはそれは傍若無人な怪人で、 常に自己中心的で身勝手な迷惑怪人ですよ」
先輩警察「有名なのか?」
後輩警察「いや、僕が怪人マニアなだけっす」
後輩警察「どんな重厚なフィルターも切り裂き、 あらゆる金品を奪い去る義賊怪人──」
後輩警察「快刀乱魔アサギリとか」
後輩警察「月のように美しくも氷のように儚い、 惚れない男はいないという妖艶怪人──」
後輩警察「月下氷神ロッカグヤとか・・・!」
後輩警察「調べると面白いんですよこれが」
後輩警察「どこからやってくるのか、 一体何者なのか・・・」
後輩警察「人類の敵か味方か・・・!? 一切詳細不明の超常知的生命体──」
後輩警察「奇怪亜人類──通称、怪人!」
先輩警察「わかったわかった」
先輩警察「で、こいつはなんなんだ?」
後輩警察「自分の生きたいようにしか生きない、 とにかく迷惑なやつだってだけっすね」
後輩警察「とにかくこいつはこうなったらもう テコでもタコでも動かんですよ」
ガドウオー「あー、タコ。タコね・・・」
ガドウオー「たこ焼き買ってきてくれたら どいてやろうかな~」
「・・・」
岡崎やよい「関わらないようにしよ・・・」

〇噴水広場
岡崎やよい「ふー・・・ まあこんなもんでいいでしょ」
ガドウオー「完成したのか」
岡崎やよい「ぎゃああああ!!!?」
ガドウオー「うるっせ!!」
岡崎やよい「びっっくりしたぁ・・・何、 何の用!?」
ガドウオー「描けたんだろ! 見せてくれ!」
岡崎やよい「え、ええぇ・・・ 私の絵みたいの・・・?」
ガドウオー「見せろっつってんだよ!」
岡崎やよい「ひぃ! わかったわかったから! ほら!」
ガドウオー「おお~~~~~!!!」
ガドウオー「・・・おお?」
岡崎やよい「?」
ガドウオー「俺様のこと描いてたんじゃないの?」
岡崎やよい「え? いや風景・・・」
ガドウオー「なんでェ~~~~~!!!」
ガドウオー「こんなカッコイイモデルがいて 普通描かないかね!?」
岡崎やよい「しらんし!」
ガドウオー「じゃあいまから描け」
岡崎やよい「今から!? ふつうに嫌なんだけど・・・」
ガドウオー「描けぃ!」
岡崎やよい「ひいいいいい!! 描きます描きます!!」
ガドウオー「あ、ほんと?」
ガドウオー「でもそんなあっさり人の言う事 聞かねーほうがいいぜ・・・?」
ガドウオー「絵って人に言われて描くものじゃなくて 自分が描きたいものを描くもんだろ?」
  ブチッ
岡崎やよい「うおおおおおおおおおおおおお」
ガドウオー「あああああああああああ!?!?!?」
岡崎やよい「はいできた! リテイク不可! もうしらんし!」
ガドウオー「お、おま・・・これ・・・」
岡崎やよい「じゃあね!」
ガドウオー「あっ、ちょっと待てコラ!」

〇シックな玄関
岡崎やよい「あー疲れた・・・ ただいま・・・」
岡崎五郎「おかえり」
岡崎五郎「絵は描いてきたか」
岡崎やよい「うん」
岡崎五郎「じゃあ今日はこれからデッサン練習だ」
岡崎やよい「今から~?」
岡崎やよい「ってあれ? 画材置いてきちゃった!?」
岡崎五郎「はあ!? 馬鹿野郎!! 画家の魂だぞ!!」
岡崎やよい「しらんし・・・」
岡崎五郎「いますぐとってこい!」
岡崎やよい「・・・はい」

〇一戸建ての庭先
岡崎やよい「はあ~だる・・・」
ガドウオー「ちわーっすこんばんみ~」
岡崎やよい「ぎゃあああああああ!!」
岡崎やよい「ってまたあんたか!」
ガドウオー「きちゃった♡」
岡崎やよい「来んなし! てか何、まだ何か用!?」
ガドウオー「これなーんだ」
岡崎やよい「私の画材!」
岡崎やよい「持ってきてくれたの!?」
ガドウオー「イエース」
岡崎やよい「あんた、意外といいやつじゃん! 私のために・・・」
ガドウオー「あ、全然ちゃいます俺様のためです」
岡崎やよい「はあ!?」
ガドウオー「いやもともとお前のこと追いかけようと 思っててさー」
ガドウオー「そんでちょうどよく画材を忘れてったからこれ人質にしてお願い聞いてもらおうかと」
岡崎やよい「ゴミクズだ・・・」
ガドウオー「さあ、画材を返してほしくば 俺様の全身像を描きたまへ」
岡崎やよい「はあ~?」
ガドウオー「いやーやよい先生がさっき描いてくれた この似顔絵! 素晴らしいと思いましてねん」
ガドウオー「同じテイストで全身も描いてほしいのよん」
岡崎やよい「そういや画材に名前書いてたっけ・・・ 家も名前もバレたとか最悪・・・」
岡崎やよい「てかその絵気に入ったのかよ」
ガドウオー「俺様のありのままの顔も美しいけど」
ガドウオー「感情の赴くまま描いた絵も アーティスティックでいいわ~」
岡崎やよい「そりゃよーござんした」
ガドウオー「全身バージョンも描いてくれなきゃ この筆とか全部ぶち壊しちゃうぞ♡」
岡崎やよい「残念だけどそれ脅しにならないから」
ガドウオー「え?」
岡崎やよい「私、別に絵とか好きじゃないし 画材とか、正直全部捨てたいくらいだし」
ガドウオー「え、じゃあなんで描いてたの?」
岡崎やよい「・・・」

〇ステンドグラス
岡崎やよい「お父さんああみえて昔は 天才的な画家でさ」
岡崎やよい「描けば描くだけ人が喜んで、 その分お金も入ってきた」
岡崎やよい「でも事故で利き手の左半身が 麻痺しちゃって・・・」
岡崎やよい「しばらくは右手で頑張って 描いてたんだけど・・・」
「こんなの岡崎五郎の絵じゃない!」
「岡崎めちゃくちゃ下手になっててウケる」
岡崎やよい「なんていろんな批判が来ちゃって、 それでも期待の声もたくさんあって──」

〇一戸建ての庭先
岡崎やよい「私が、お父さんの代わりに ならなきゃいけないの」
ガドウオー「・・・?」
岡崎やよい「?」
ガドウオー「いやだからなんでそれで 絵を描いてんだって」
岡崎やよい「いやだから──」
ガドウオー「お前は描きたくないんだろ?」
岡崎やよい「!」
ガドウオー「描かなきゃいいじゃん」
ガドウオー「他人のこと考えて行動するの マジだるくね!?」
岡崎やよい「本当は・・・私だって他のことがしたいよ」
岡崎やよい「美大じゃなくて医大に行きたいし」
ガドウオー「え、お前医者になりたいの・・・」
岡崎やよい「なに、悪い?」
ガドウオー「そういうの普通逆だろ」
ガドウオー「『お前は医者になって うちの病院を継ぐのだ!』」
ガドウオー「『イヤよお父さん! 私は画家になりたいの!』」
岡崎やよい「しらんし・・・」
岡崎やよい「ま、アタシの悩みは好き勝手生きていける あんたにはわかんないだろうね・・・」
ガドウオー「うんわかんねーや」
ガドウオー「オメーが気に入らねぇ顔してる理由は わかったけど」
岡崎やよい「はぁ?」
ガドウオー「とにかく俺様のことだけでも描けよ? 明日取りに来るから」
ガドウオー「描いてなかったらぶっとばす」
岡崎やよい「ちょっと!」
ガドウオー「そんじゃもうオネムだから帰るわ」
「ばいばー」
岡崎やよい「・・・」
岡崎やよい「怪人相手にも殺人罪って適用されるっけ」
  と言いつつも面倒事は避けたかったので、
  お望み通り、この感情の赴くまま
  全身ガドウオーを描いてあげた。

〇女の子の一人部屋
岡崎五郎「おいやよい起きろ! 今日は色彩学の勉強をするぞ」
岡崎やよい「は~~~い・・・」
岡崎やよい「私だって・・・ 私だって好き勝手に生きたいけど・・・」
岡崎やよい「人間だもん・・・」
  ピーンポーン
岡崎やよい「げっ! こんな朝にもう来たのかあいつ・・・」
岡崎五郎「やよい! はやくでろ!」
岡崎やよい「わかってるよー!」

〇シックな玄関
岡崎やよい「あーもうねえちょっと早すぎない?」

〇一戸建ての庭先
  ガチャ
カーキ中尉「・・・」
岡崎やよい「だれーーーーーーー!!!!?!?!?!」
カーキ中尉「どうもこんにちは 私、かの有名な放火怪人」
カーキ中尉「光焔万尉カーキ中尉と申します」
岡崎やよい「いやしらんし!!」
カーキ中尉「ししし、知らない!? 中尉であるこの私を!?」
岡崎やよい「しらんし・・・」
岡崎やよい「てか中尉ってそんな偉くなくね・・・?」
カーキ中尉「!!?!?!」
カーキ中尉「い、い、い、いまなんと・・・」
岡崎やよい「やばい! 地雷踏んだ!?」
カーキ中尉「ふ、ふふ、ふふふ・・・」
岡崎やよい「ふふふ・・・」
カーキ中尉「燃えい!!!!!」
岡崎やよい「家がああああああああ!!!!? お父さーーーーーーーん!!!!」

〇一戸建ての庭先
岡崎五郎「・・・」
岡崎五郎「なんで・・・?」
岡崎やよい「私もわけわかんない!」
カーキ中尉「私はご存知カーキ中尉・・・」
カーキ中尉「価値あるものを燃やし灰にするとき 生を実感するもの・・・」
カーキ中尉「ここに天才画家岡崎五郎氏が住まうと聞きまして、作品の2つや5つ燃やさせていただけないかと思いやってきました」
岡崎やよい「怪人って変人しかいないの!?」
カーキ中尉「私は野蛮な他の怪人と違って 必ず許可をとってから燃やすのです!」
カーキ中尉「それゆえ中尉という偉大な肩書を 持つことが許されているのです!!」
岡崎やよい「まじで意味わからんし・・・」
カーキ中尉「それをこの娘が!! 私をコケにして!!」
カーキ中尉「ムキーッ許さん!」
岡崎五郎「やよい・・・おまえのせいなのか!?」
岡崎やよい「えええええ・・・」
岡崎やよい「と、とにかく消防車! はやく通報しないと!」
カーキ中尉「無駄ですよ 私の炎は私の自由自在・・・」
カーキ中尉「私が消そうとしないかぎり消えません」
岡崎やよい「インチキすぎでしょ!」
カーキ中尉「さあ! 私の靴を舐め『中尉殿』とお呼びなさい!」
カーキ中尉「さすれば消してあげなくもなくもなくも?」
岡崎五郎「待て! やよい! 何もするな!」
岡崎やよい「お父さん・・・」
岡崎五郎「そんなことしても素直に消してくれるか 怪しい・・・」
岡崎五郎「それよりも今すぐ家に戻って 大事な作品たちを救出しろ!!」
岡崎やよい「あんたもう怪人だろ!!」
カーキ中尉「さあ舐めて敬いなさい!!」
岡崎五郎「急いで作品を!!」
「ギャーギャーギャー」
岡崎やよい「私・・・私は・・・」

〇一戸建ての庭先
ガドウオー「だるくね!?」

〇一戸建ての庭先
岡崎やよい「だるい!!!!!」
「!?」
岡崎やよい「靴も舐めないし、作品も救出しない!!!」
岡崎やよい「てかもう絵も描かないし!!!」
岡崎やよい「誰の言うことも聞かない!!!」
岡崎やよい「私は医大に行くんだ!」
岡崎やよい「もうこれからずっと!!」
岡崎やよい「私の好き勝手に生きていく!!!」
「・・・」
ガドウオー「困る!!!!」
岡崎やよい「うええええいつの間に!?」
ガドウオー「ふざけんな俺の絵が燃えちまうだろうが! さっさと靴なめろよ!!」
岡崎やよい「ほんとクソじゃんあんた・・・」
岡崎やよい「でももーあたしもテコでも動かんもんね」
ガドウオー「へっ、誰のマネしてやがる」
岡崎やよい「あんたのことはあんたが勝手にしな」
岡崎やよい「わがまま通すの得意でしょ?」
ガドウオー「ったくしゃーねーなー」
ガドウオー「おいそこの一人キャンプファイアー、 我慢比べの始まりだぜ」
ガドウオー「いまからテメーをぶん殴る、 炎を消すまでぶん殴り続ける」
ガドウオー「大事な先生の絵があるもんでな」
カーキ中尉「いきなり現れて、あなた誰なんですか!」
ガドウオー「おうおうおうよくぞ聞いてくれた!」
ガドウオー「我が道を往くは我一人!」
ガドウオー「その傍らには人も無き!」
ガドウオー「音にこそ聞けよ! 目にも見よ!」
ガドウオー「やあやあ我こそ傍若武人──」
ガドウオー「ガドウオォオオなりィ!!!」
ガドウオー「ドドン☆」
カーキ中尉「ふふふ・・・面白い!」
カーキ中尉「私も名乗らせていただこう!」
カーキ中尉「私は──」
ガドウオー「うるせぇ」
カーキ中尉「くぁwせdrtgyふじこlp;」

〇一戸建ての庭先
カーキ中尉「ず、ずみばぜんでした・・・」
ガドウオー「一件落着!!」
岡崎五郎「どこがだ・・・!」
ガドウオー「え・・・?」
岡崎やよい「結局手遅れだったみたい・・・」
岡崎やよい「家は無事だけど、作品たちは灰に・・・」
ガドウオー「そんなぁ~~~~!!!! 俺様の絵は~~~!!!?!?」
「うおーーーーーーん!!!!!!!!」
岡崎やよい「しょうがないなあ」
岡崎やよい「ほらこれ」
ガドウオー「俺様の絵!」
岡崎やよい「さっき渡すつもりで玄関行ったからさ、 本当はずっとここに持ってたの」
ガドウオー「やよい先生さすがっす!!」
カーキ中尉「私もしかして殴られ損・・・?」
岡崎やよい「それが私の最後の絵だから、 大事にしてよね」
岡崎五郎「やっぱり、もう絵は描かないのか・・・」
岡崎やよい「うん・・・私、医者になりたい」
岡崎やよい「お父さんみたいな、怪我でやりたいこと 諦めちゃう人を減らしたいんだ」
岡崎五郎「!」
岡崎やよい「お父さん本当は絵描きたかったんでしょ?」
岡崎やよい「もう周りの声なんて無視してさ、右手でも足でも使って、好き勝手絵描いちゃいなよ」
岡崎やよい「私も好き勝手勉強するから」
岡崎五郎「・・・」
岡崎五郎「そうだな・・・」
ガドウオー「お? なんだなんだ?」
ガドウオー「ふたりして俺様みたいに いい顔するようになったじゃねーか」
岡崎やよい「おかげさまで」
ガドウオー「お? まあ俺様にとっちゃ あんなカス怪人、朝飯前よ」
ガドウオー「って、そういやほんとに朝飯前 だったな・・・飯にしようぜ!」
ガドウオー「目玉焼き、半熟で頼むわ」
ガドウオー「少しでも固かったらやりなおしな! 味付けはマヨと醤油でよろしく」
岡崎やよい「はいはい・・・」
岡崎やよい「──って・・!」
岡崎やよい「勝手なこと言うな~~~~!!!」

〇雑踏
  傍若無人──
  他人を無視し、自分勝手に振る舞うこと。
  また、そのさま・・・。
  そんなやつ、もう二度と
  関わりたくないって思うけど、
  少しだけ、少しだけ
  そんな風に生きるのも、
  悪くはない、のかも・・・?
  そう思った、ある日の出来事なのでした。
  ──おしまい──

コメント

  • ガドウオーとやよいの掛け合いが漫才みたいで面白かったです。やよいの心境の変化を見ていると、ガドウオーは傍若無人に振る舞っているように見せかけて、本当は他人の顔色や言動をよく見て助け舟の出せる「できる子」なんじゃないかな、と思いました。

  • 好き勝手に生きる中にも芯がある、そんな怪人だなぁと感じました。
    ただわがまま、好き勝手に生きているわけではなく、貫くものがあるってかっこいいですよね!

  • 身勝手と傍若無人って少しい違うのかなあと読みながら思いました。自分の性格や経験と正反対の人って、とても興味を引くものですよね。彼女にとってガドウオは新しい風のようでした。

成分キーワード

ページTOPへ