#16 夢の履歴書(後編)(脚本)
〇明るいリビング
神保真司「どう?」
神保希美「・・・今までで一番好き!」
神保真司「良かった。辛口だけど、これなら希美でも飲みやすい種類だと思ったんだ」
神保真司「酸味を殺さないように、温度管理も徹底したよ」
神保希美「さすが、ソムリエの資格を持ってるだけあるね」
神保希美(ま、私が履歴書に書きこんだんだけど)
神保希美「ねぇ真司。そろそろうちも、マンションの購入、考えてみない?」
神保真司「えっ? いいけど、ローンとか大丈夫かな・・・?」
神保希美「大丈夫だよ。真司の仕事、順調だし」
神保希美(・・・その気になれば、資格や経歴を私が書き足してあげるしね)
〇明るいリビング
神保希美「そうねぇ。次はこんなのどうかしら?」
希美は、真司の名前が書かれた履歴書の特技欄に『ピアノ』と書き込む。
〇ジャズバー
舞台上で真司が軽快にピアノを弾いている。
真司は演奏を終えると、拍手する客たちに頭を下げ、希美のいるテーブルに戻ってくる。
神保希美「すごかった! みんなうっとり聞いてたよ!」
神保真司「へへへ。ありがとう」
女性「・・・真司先輩?」
神保真司「?」
女性「私ですよ! 高校の後輩の、金田あかりです!」
神保真司「あかりちゃん!? ずいぶん大人っぽくなったから、気がつかなかった!」
金田あかり(かねだあかり)は真司に笑いかけた。
神保希美(後輩? なんか、なれなれしい・・・)
金田あかり「先輩があんなにピアノ弾けるなんて知りませんでしたよ!」
神保真司「いやぁ。まさか、あかりちゃんがいるなんて。恥ずかしいとこ見られちゃったな」
金田あかり「めっちゃカッコよかったです!」
金田あかり「・・・あ、すみません。奥さまですか?」
神保希美「・・・ははは。どうも~」
金田あかり「申し遅れました! 私、真司さんの高校の後輩で・・・」
〇開けた交差点
神保希美「楽しそうだったね」
神保真司「・・・え? 何が?」
神保希美「あの子と話してるとき、目がキラキラ輝いてたよ」
神保真司「なんだよ希美。機嫌悪いの・・・?」
神保希美「・・・別に」
〇明るいリビング
ピロン
希美が1人で部屋にいると、真司のスマホにメッセージが届く。
希美は画面に映ったメッセージを見てしまう。
神保希美「えっ・・・?」
あかり『真司先輩、友達承認ありがとうございます。会えてうれしかったです!』
神保希美(この女・・・)
神保真司「あ~、いい湯だった」
〇明るいリビング
神保真司「なぁ希美。 週末さ、高校の奴らと飲み会があるんだ。 だから悪いけど、夕飯は別々でいいかな?」
神保希美「・・・あかりちゃんだっけ? あの子と出かけるんでしょ?」
神保真司「え? 確かにあかりちゃんもいるけど、高校のみんなで集まるんだよ」
神保希美「ふ~ん。どうだかね? あの子から連絡来たんでしょ?」
神保真司「そうだけど・・・久々に会ったから、懐かしかったんだろ? それだけだよ。 ・・・なぁ、何疑ってるんだよ?」
神保希美「・・・疑われるようなことをするのが悪いんじゃん」
神保真司「・・・・・・」
神保希美「なんで黙るの?」
神保真司「・・・最近、息がつまるよ」
神保希美「え?」
神保真司「家事も料理も何もかも、俺の方が得意だからって理由で、丸投げだろう? さすがに、疲れちゃうっていうか・・・」
神保希美「・・・・・・」
神保真司「その上、こんなに小さいことにまで口を出すなんて」
神保真司「希美は思い通り俺が動かないと、気に食わないんだろ?」
神保希美「・・・・・・」
神保真司「俺に何もかも、押し付けないでくれよ」
神保希美「・・・は? ふざけないでよ」
神保真司「・・・希美?」
神保希美「仕事もしない、家事もしない・・・自分自分自身は何もしてないくせに、文句なんか言わないでよ!」
神保希美「私が履歴書に書いて完璧にしてあげたんじゃん!」
神保真司「な、なに言ってんだよ・・・? 履歴書?」
神保希美「私を怒らせないでって言ってんの!」
神保真司「俺たち、夫婦なんだぞ? 対等なはずだろ?」
神保希美「・・・もういいよッ!」
〇ファンシーな部屋
神保希美「なによ! 私がこれを書かなきゃ、腐ってただけのくせに!」
備考欄に書かれた注意書きが目に入る。『※思わぬ事態の元になります。人間性に関しては、記載しないようお願いします』
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表面上は自分にとって完璧だとしても、水面下では何が起こっているか見えない点が、完全犯罪の様で面白かったです。
個人的には、一生気付くことがなければ、されてないのと同じ様な気もしますが、普通はそうではありませんものね…。
次回も楽しみにしております!