#15 夢の履歴書(前編)(脚本)
〇異世界のオフィスフロア
会社のオフィス。
神保希美(じんぼのぞみ)と関優香(せきゆうか)が、隣合った席に座っている。
優香は希美のスマホで男性の写真を見ている。
関優香「うぁ~。やっぱカッコいい」
神保希美「そうかな?」
関優香「しかも、広告代理店のエリート社員とか。希美さんの旦那さん、どんだけハイスペックなんですか!」
神保希美「ふふ。ありがと」
関優香「いいなぁ。希美さん、旦那さんに同僚紹介してもらえません?」
神保希美「・・・う~ん。あの人、そういうの好きじゃないからなぁ」
関優香「残念。でも今度、希美さんの旦那さんに会わせてくださいね!」
神保希美「・・・うん、機会があったらね」
〇明るいリビング
神保希美「ただいま」
リビングでは神保真司(じんぼしんじ)がスウェット姿でTVゲームをしている。
神保真司「あ~、希美。おかえり」
神保希美「・・・また、一日中ゲームしてたの?」
神保真司「他にやることねぇからなぁ~」
神保希美「求人見るとか、家事をするとか、いくらでもあるでしょ」
神保希美「たまにはご飯くらい作ってくれたっていいじゃん」
神保真司「希美の作るごはんの方が美味いもん」
神保希美「・・・こんなことなら、前の会社、やめなきゃよかったね」
神保真司「またその話? あんなクソ上司の下では、働けねぇよ。俺は後悔してない」
神保希美「それはわかってるけど、せめて就活してよ。最近、履歴書すら書いてないでしょ」
神保真司「俺は自分に合う仕事を吟味してるの! その時が来たら、サッと就職するから」
神保真司「長い目で見てくれよ。な? 希美ぃ~!」
神保希美「・・・もう」
〇リサイクルショップ
希美は酒の入ったコンビニの袋をぶら下げて、通りを歩いていた。
神保希美(真司、いつもあんな調子ではぐらかす・・・)
神保希美(何社か落ちた後、もう1年も就活してないじゃん・・・)
神保希美「あれ・・・こんなところにお店なんてあったっけ?」
〇リサイクルショップの中
神保希美(こんな時間に、まだやってるんだ)
神保希美「これ・・・履歴書?」
天海愛「あなたが手に取ったその商品、きっと役に立つと思いますよ」
神保希美「えっ?」
神保希美「履歴書? ・・・なんで私に?」
天海愛「わかるはずですよね? 必要なものだと」
〇リサイクルショップの中
天海愛「履歴書かぁ。私、書いたことないな」
ピーチ「愛は店を継いだからな」
ピーチ「しかし、大丈夫かね? あんな見栄っ張りに、あれを売っちまって」
天海愛「彼女、心から彼氏に変わってほしいと願っているもの。きっと大丈夫よ」
〇明るいリビング
リビングで一人、希美はビールを飲んでいる。
神保希美「履歴書なんて買って来ちゃったけど、どうせ真司は就活しないだろうし・・・」
すっかり酔った様子で、希美はペンをとった。
神保希美「ふふ・・・。私が書いちゃお。名前、神保真司」
神保希美「現職・・・博電堂クリエティブリーダー・・・なんてね。はぁ・・・虚しい」
〇明るいリビング
朝。テーブルに突っ伏していた希美が、目を覚ます。
神保希美「うう・・・」
神保真司「飲んだまま寝ちゃったのか? 俺、今日は朝から会議だから、もう出るね」
神保希美「え? 何、そのカッコ。どこ行くの?」
神保真司「どこって・・・会社に決まってるだろ。 寝ぼけてんの? 行ってきます」
神保希美「な、なに? ふざけてるのかな・・・?」
〇テラス席
希美と優香がカフェで昼食をとっている。
神保希美(今朝のあれ、何だったんだろ。真司、わざわざスーツまで着て出かけてった)
関優香「希美さん! あれ!」
神保希美「え!」
少し離れた席で、洗練されたスーツ姿の男たちが昼食をとっている。
関優香「あれ、旦那さんですよね? すごい、できる人の集団って感じ。 あれが、博電堂の人たちですね!」
神保希美「そ、そうね・・・」
神保希美(どういうこと? 確かに、真司に間違いないけど・・・)
〇明るいリビング
神保真司「なんだ。希美もあのカフェにいたのか。声をかけてくれたらよかったのに」
神保希美「じゃなくてさ。一緒にいたのって・・・」
神保真司「え? 博電堂の同僚だけど?」
神保希美「博電堂の・・・同僚」
神保真司「なんだよ。変な顔して」
神保希美「だって、辞めたはずじゃん」
神保真司「なにふざけてるんだよ。今週クリエイティブリーダーに昇進したばっかりだろ」
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