黒いキューピット

平家星

#14 リハ・ドール(後編)(脚本)

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〇女の子の一人部屋
元木静佳「どういうこと・・・? あなたは、修吾くんの秘密を教えてくれるの?」
人形「お前が知りたいならな」
元木静佳「・・・教えて。修吾くんが、どうしてあんなに暗くなっちゃったのか・・・」
人形「あいつが、うちに帰って来たんだよ」
元木静佳「あいつ?」
人形「あのクソ親父さ。逃げ切ったと思ったのに、見つかっちまった」
元木静佳「修吾くんのお父さん・・・」
人形「あいつは、毎日のように俺と母さんを殴る」
人形「母さんは謝ってばかりで、反抗する気力もない・・・」
元木静佳「そんな・・・。だ、誰かに話したの? 警察とか、学校とか・・・」
人形「誰にも言えない。誰かに相談したことが知れたら、親父は母さんを許さないから」
元木静佳「・・・・・・」
人形「あんな親父、死ねばいいんだ。あいつが死ねば、全部解決する・・・」
元木静佳「修吾くん、そんなこと言わないで・・・」

〇教室
元木静佳(修吾くんに、あんな悩みがあったなんて・・・)
  静佳は修吾の手首に、手で強く絞められたようなアザがあることに気がつく。
元木静佳(・・・あの痕・・・お父さんにやられたのかな)
  修吾は静佳の視線に気づき手首を隠す。
元木静佳(・・・何とかしなきゃ)

〇市街地の交差点
元木静佳「しゅ、修吾くん! 待って!」
安藤修吾「・・・元木。なんか用?」
元木静佳「だ、誰かに相談した方がいいよ」
安藤修吾「は? なにを?」
元木静佳「お、お父さんのこと・・・」
安藤修吾「・・・なんでお前が知ってんだよ」
元木静佳「やっぱり、人形が言ってたことは本当なんだ・・・」
安藤修吾「人形? お前、何言ってんだ?」
元木静佳「と、とにかく、私は修吾くんのことが心配なの・・・。 毎日、暴力を振るわれてるんでしょ?」
安藤修吾「・・・うるさい」
元木静佳「え?」
安藤修吾「・・・このこと、誰かに言うなよ」
元木静佳「そんな・・・私はあなたを思って・・・」

〇女の子の一人部屋
元木静佳「・・・・・・」
母の声「静佳、本当にご飯いらないの?」
元木静佳「・・・うん、今日は食欲ないからいいの」
人形「あの親父・・・今日は母さんに熱湯をかけやがった。許せない」
人形「今に見てろ、殺してやる・・・」
元木静佳「・・・そんなこと、言わないで・・・」
人形「いつか、絶対に殺す」
人形「殺す・・・殺す・・・殺す・・・」
元木静佳「・・・修吾くん、こんなにも追い詰められてるなんて・・・どうにかしてあげたいのに・・・」

〇教室
元木静佳(修吾くんが学校に来なくなって2週間。私は、毎晩あの人形に、父親への恨みを聞かされている・・・)
元木静佳(おかげで眠ることもできない。・・・それでも修吾くんを思うと、人形は捨てられない・・・)
担任教師「元木、顔色悪いけど、大丈夫か?」
元木静佳「・・・・・・」
担任教師「ちゃんと眠れてるのか? 何かあるなら相談に・・・」
元木静佳「・・・何にも知らないくせに」
担任教師「なっ・・・なんだ?」
元木静佳「・・・私たちに構わないで」

〇女の子の一人部屋
  帰宅した静香は、部屋の隅でずっと体育座りをしていた。
  人形は、一方的に静佳に話しかけている。
人形「殺す・・・。絶対に殺す・・・」
元木静佳「・・・・・・」
人形「もう耐えらない。今日だ。あいつが散々酔っぱらったら、近所の雑木林に連れてって、殺る。今日こそ、絶対に・・・」
元木静佳「・・・修吾くん、本気なの?」
人形「ああ。もう、迷わない・・・。今夜、殺ってやる・・・」
元木静佳(・・・助けなくちゃ・・・修吾くんを知ってるのは、私だけなんだから・・・)

〇森の中
元木静佳「どこかに・・・修吾くんが?」
男の声「なんだおめぇ、こんなところに何があるって言うんだ?」
  声のする方に静佳が歩いていくと、修吾と父親の姿を見つける。
元木静佳(いた・・・)
安藤修吾「お前を・・・殺すために連れてきた」
修吾の父「なんだ? そいつで俺を殴る気か?」
安藤修吾「や、やってやる! ・・・今夜こそ・・・」
修吾の父「やってみろよ」
安藤修吾「嘘じゃないぞ・・・!」
修吾の父「やってみろ。ほら、殴れよ」
安藤修吾「・・・・・・」
修吾の父「ははは! 無理することはねえよ」
安藤修吾「・・・畜生・・・」
  修吾は金づちを足元に落とす。
修吾の父「俺を殺すだって? ふざけやがって」
  バキッ
  父親は修吾を殴りつける。
修吾の父「お前は結局、何もできないだろうが! 生意気言いやがって。教育し直してやる!」
  バキッバキッ
安藤修吾「やめてッ! やめてッ!」

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コメント

  • 今回も怖かったです!
    ちょっとした恋心、欲求が大きな不幸を呼んでしまいましたね😭
    最後まで人形相手に話しているみたいで面白怖かったです!

  • いんや………良かった………。
    全てのお話の顛末がキレイで見事で良かったです……が、これは更に良い……なんてこったぃ……👍👍👍👍好き。

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