黒いキューピット

平家星

#13 リハ・ドール(前編)(脚本)

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〇教室
  騒がしい、ホームルーム中の教室。
  元木静佳(もときしずか)と、安藤修吾(あんどうしゅうご)の名前が黒板に書かれている。
元木静佳「・・・う、う、うそ。わ、私・・・」
安藤修吾「うわぁ~! 『卒業生を送る会』とか、めんどくさいっすよ~!」
教師「くじ引きで決まったんだ。 文句は言いっこなし!」
教師「クラスの出し物、二人で何やるか決めとけよ~!」

〇教室の外
元木静佳(まさか、大好きな修吾くんと、一緒の係になっちゃうなんて・・・)
  静佳は校庭の隅から、友人とともにバスケをする修吾を見つている。
元木静佳(話が面白くて、人気者の修吾くん・・・。クラスの中心人物なのに、私みたいな陰キャにも優しい・・・)
  ふと、修吾が静佳に駆け寄ってくる。
安藤修吾「なぁ元木! 今日の放課後、時間ある? 『卒業生を送る会』の出し物、決めちゃおうよ」
元木静佳「えっ・・・あ、あ・・・き、今日は、よ、用事が! ご、ごめんね!」
安藤修吾「・・・?」

〇リサイクルショップ
元木静佳(最悪・・・。思わず嘘ついて逃げちゃった。 どうして上手く話せないんだろう・・・)
  静佳がふと視線を上げると、目の前にリサイクルショップがある。
元木静佳(こんなお店あったっけ・・・?)

〇リサイクルショップの中
元木静佳(すごい、いろんなものがあるのね)
元木静佳(ん? 何かに見られているような・・・)
  静佳が振り返ると、棚の上に30センチほどの人形が置いてある。
元木静佳「この人形・・・なんだか修吾くんに似てる気がする・・・可愛い」
天海愛「その商品、きっと、あなたのお役に立つと思いますよ」
元木静佳「・・・えっ?」

〇リサイクルショップの中
ピーチ「あいつ、人形遊びって歳じゃねぇだろ」
天海愛「・・・確かにそうね」
ピーチ「ま、愛もよくぬいぐるみに話しかけてるけどな」
天海愛「げ・・・見てたんだ」

〇女の子の一人部屋
元木静佳「あ~あ。明日、どうしよう。ちゃんと修吾くんと話して、出し物、決めなきゃな」
謎の声「うちのクラス楽器できる人多いし、何か演奏するのはどう?」
元木静佳「!? 誰・・・?」
  静佳が声のした方を見ると、そこにはリサイクルショップで買った人形がある。
元木静佳「まさか、あなたが・・・?」
人形「明日は逃げんなよ。ちゃんと話そうぜ」
元木静佳「う、うわぁ! しゃ、喋ったぁ!?」

〇女の子の一人部屋
元木静佳「人形が話すなんて信じられない・・・。 それに、話し方が修吾くんそっくり・・・」
人形「何言ってんだよ元木。 さっさと出し物、決めないと」
元木静佳「・・・さっき言ってた、何かを演奏するっていうのは、いいアイデアだと思う」
人形「だろ? 楽器できない奴らには、歌わせればいいし」
元木静佳(この人形となら、緊張せずに話せる。 会話の練習になるかもしれない)
元木静佳「じ、じゃあ修吾くんは何を担当するの?」

〇教室
安藤修吾「演奏! 俺もそれが良いと思ってた!」
元木静佳(うそ・・・!? 昨日、人形が言ってた通り・・・)
安藤修吾「ん? どうかしたのか?」
元木静佳「な、何でもない。楽器ができない人には、歌ってもらおっか・・・。 しゅ、修吾くんは何を担当する・・・?」
安藤修吾「俺? 俺は、指揮者かな! 棒振ってるだけでいいし」
元木静佳「し、指揮者は棒振ってるだけじゃないよ。一番大事なパート・・・」
安藤修吾「ハハハ! そっか、ナイスツッコミ!」
元木静佳(すごい、この会話も同じ・・・。あの人形と話せば、あらかじめ修吾くんのことが分かるんだ!)

〇女の子の一人部屋
元木静佳「みんなで歌う歌なんだけど・・・。KASUMISOUの『花びら』なんてどうかなぁ」
人形「『花びら』? 嫌だよあんな辛気臭い歌。 元木はああいうの好きなの・・・?」
元木静佳「・・・じゃ、パニックズの『卒業』は?」
人形「『卒業』! センスいいな、元木!」
元木静佳「・・・明日のための会話練習はこれくらいでいいか。これでまた、うまく話せそう」
元木静佳「・・・・・・」
元木静佳「・・・ねぇ修吾くん、好きな人、いる?」
人形「・・・・・・」
元木静佳「修司くんのご両親はどんな人なの?」
人形「・・・・・・」
元木静佳「・・・答えてくれないこともあるのか」

〇体育館の外
  2か月後・・・
  『卒業生を送る会』を終えた体育館の外。
  静佳は修吾と話している。
安藤修吾「今日までありがとう。歌聴いて、泣いてる先輩もいて・・・大成功だったな!」
元木静佳「修吾くんが引っ張ってくれたからだね」
安藤修吾「い~や。元木が、いいアイデアをたくさんくれたから」
安藤修吾「俺たち、息もぴったりで、いいコンビだったよな!」

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コメント

  • こんにちは
    いつもドキドキしながら読んでいます

    恋のお話が多くて楽しいです!

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