読切(脚本)
〇黒背景
!!
???「あ、おはよう! ご機嫌いかが?」
???「誰だ!?」
トーラス(なんだ、このカッコいいヤツは!? ヒーローか? そうだな?!)
???「うん? ああ、それキミ」
???「うん? オレ???」
〇研究所の中枢
カオス・ウェザ・コクーン「目覚めたか! ワシの傑作12号機! 名付けてトーラス!!」
トーラス「ト、トーラス!? 待ってくれ! オレはカイドウ リュウマっていう・・・・・・」
トーラス「いや、一体どういう事なんだ!?」
トーラス「まず、ここはどこ?」
櫛谷マイ「アマル=ディアっていう星のオウル国。キミから言うとたぶん異世界ってところだよ」
トーラス「異世界!?」
櫛谷マイ「のおじいちゃんの研究所」
トーラス「銭湯のバイトで掃除をしてただけなのに。あ、そうだ! 石鹸を踏んで転んで・・・」
トーラス「ま、まさか死んだのか?! まだ華の大学2回生なのに!?」
カオス・ウェザ・コクーン「んにゃ、生きとるじゃろ」
カオス・ウェザ・コクーン「良いかな青年。世界は薄い膜のようなものに覆われていて、何らかの衝撃が加わると別の世界に転がり込むのじゃ。現に―――」
櫛谷マイ「おじいちゃん、その学説は学会で否定されたじゃない」
カオス・ウェザ・コクーン「ヴッ!」
トーラス「クッ、なんだか分からないが・・・・・・」
トーラス「じゃあ、このヒーローがオレってどういう事なんだ!?」
カオス・ウェザ・コクーン「それはワシが改造したんじゃ」
トーラス「爺さんが!? なぜ!」
カオス・ウェザ・コクーン「そりゃオモシr―――」
櫛谷マイ「!」
櫛谷マイ「実は世界の危機なんだ! そこでキミには素質があったから―――」
櫛谷マイ「ごめんね、それに・・・」
トーラス「世界の危機? 素質? ・・・ああ、みなまで言わなくても分かったぜ」
櫛谷マイ「ホントに?」
トーラス「ああ! 転んだ拍子に大けがをしたんだな!?」
トーラス「だから爺さんが延命のためにやむなくってところだろう!? ドラマで見た事あるぜ!」
櫛谷マイ「ええと、そ、そうだよ!」
櫛谷マイ「で、でね! キミには世界を救って欲しいんだ!」
トーラス「おう! 命の恩人の頼みだ。異世界だろうと何だろうとやってみせるぜ!!」
櫛谷マイ「実はね―――」
〇諜報機関
トーラス「なるほど 大体理解したぜ」
トーラス「つまり、オレの兄弟に当たるヒーローたちが暴走してしまったと」
トーラス「しかも爺さんが創った『ゾディアックエンジン』ってヤツを狙う連中がいるということだな!」
櫛谷マイ「うん。それを無理やり取り外せば死んでしまうし、連中の手に渡ったりしたら―――」
トーラス「任せろ! 見た目がヤンキーみたいでチャラそうとか言われるオレだけど、義理と人情には熱いぜ!!」
櫛谷マイ「金髪のキミも好きだったなー LOVEじゃなくてLIKEの意味でね!」
トーラス「へっ!」
トーラス「・・・うぅ、さよなら。 イケメンのオレ・・・」
カオス・ウェザ・コクーン「フフフ。トーラスよ。ワシを崇めるのじゃな!!」
トーラス「じ、爺さん!?」
カオス・ウェザ・コクーン「この天才科学者カオス・ウェザ・コクーンの力を持ってすれば元の姿に変身することも可能に!」
トーラス「なんだって!? ・・・ん? 変身?」
カオス・ウェザ・コクーン「デフォルトがトーラス」
トーラス「お、おう」
櫛谷マイ「変身したら元の姿」
トーラス「二度と拝めないよりはありがてぇ! サンキュー爺さん!」
カオス・ウェザ・コクーン「いいって事じゃよ!」
カイドウ リュウマ「ところでキミの名前聞いてなかったよな?」
櫛谷マイ「ん? あたしは櫛谷マイ。マイって呼んでねー」
カイドウ リュウマ「ああ、よろしく。マイ」
〇川沿いの公園
カイドウ リュウマ「異世界っていうからもっとヘンテコな街並みだと思ったぜ」
櫛谷マイ「そう?」
櫛谷マイ「車が空を飛んだり、建物がトランスフォーメーションするんだよ」
カイドウ リュウマ「未来的でカッコいいじゃんか 憧れた世界が目の前にあるんだ!」
カイドウ リュウマ「ワクワクするぜ!」
櫛谷マイ「キミの町は違ったの?」
カイドウ リュウマ「オレの住んでたところは、田んぼや畑が多くて、高い建物なんて無かった。だけど好きな場所だったな」
カイドウ リュウマ「あ、金魚が名産なんだぜ?」
櫛谷マイ「金魚ってあの食べられるヤツ? お店で売ってるよね」
カイドウ リュウマ「たぶん違う金魚だぜ」
カイドウ リュウマ「ところでどこに向かってるんだ?」
櫛谷マイ「暴走したヒーローって言っても人のいないところなんて行きたくないよね」
カイドウ リュウマ「うん?」
カイドウ リュウマ「お、おう。そうだな。 とりあえず人のいるところの方が便利だろうし・・・」
櫛谷マイ「つまり灯台下暗しってこと! こうやって見回っていたらタイミングさえ合えば遭遇するはず!」
カイドウ リュウマ「割と地味なのな」
〇センター街
カイドウ リュウマ「すでに5日間市内を巡ってみたけど」
櫛谷マイ「いないね」
カイドウ リュウマ「アニメじゃないんだし、どこか別の都市にいるとか」
櫛谷マイ「ワープポータルを使わなかったら数日歩く事になるし」
櫛谷マイ「公共交通機関を使ったらウワサになると思うんだよね」
カイドウ リュウマ「なんでだ?」
櫛谷マイ「リュウマ、ここ数日町の中を見て気付かなかった?」
カイドウ リュウマ「なにに?」
櫛谷マイ「怪人・・・・・・ いや、トーラスみたいなヒーローだよ」
カイドウ リュウマ「あー、そう言えばいないな」
カイドウ リュウマ「なるほど! 分かったぜ!!」
カイドウ リュウマ「カッコいい姿のまま歩いているヤツが大勢の目に付くところに来てないって事は潜伏してるってことだな!!」
櫛谷マイ「そう! さっすがリュウマ! えらいえらい!」
カイドウ リュウマ「ところで、いま怪人とか言わなかったか?」
櫛谷マイ「あっ、ええー・・・と? それは・・・」
???「きゃあああああーーーッ!!!」
???「オラオラァ!! 動くんじゃねえ!!」
???「いいか、騒いだり逃げようだなんてしてみろ!! ハチの巣にしてやるぜ!!!」
???「ひ、ひぃぃぃッ!!」
カイドウ リュウマ「な、なんだ!?」
櫛谷マイ「エネルディア強盗!? ウソ、また? 最近多すぎない!?」
カイドウ リュウマ「強盗だって?! マジかよ!!」
カイドウ リュウマ「ところでエネなんとかってなんだ!?」
櫛谷マイ「高エネルギーのパックで色々な産業に使われてるんだ! 高値で売買されてるよ」
カイドウ リュウマ「未来の銀行強盗みたいなもんか!! マイ、オレは助けに行くぜ!!」
櫛谷マイ「だ、ダメだよ!!」
カイドウ リュウマ「なんでだよ!? 見ろよ、あんなガキまで人質になってるんだぜ!?」
櫛谷マイ「ダメなんだっ!」
櫛谷マイ「キミは、トーラスを見て、ヒーローだって言ったよね」
櫛谷マイ「でも、世間的には怪人なんだ・・・」
〇おしゃれな受付
強盗アニキC「さっさと保管庫を開けんだよ!! 後頭部の風通しを良くしてやろうか?!」
店長「ひ、ひい! 解除キー! 解除キーの申請に時間が掛かるんで」
店長「びゃぼッ!!」
店員さん「て、店長!!!」
強盗アニキA「おおっと俺たちゃ気が短いんでね」
強盗アニキC「ジャスティスレッドどもが来る前にトンズラしなきゃならねえの」
強盗アニキA「ご要望には迅速に対応、だろぉ? 店員ちゃん?」
「ひいい、う、撃たないでくださいッ!」
リーブラ「貴様、見るからに悪だな?」
「な、なんだてめぇは!! 動くなったつったろが!!」
リーブラ「我が名はリーブラ」
リーブラ「白黒つけようでは無いか! 答えろ! 貴様ら悪人か?」
強盗アニキA「ざまあみやがれ! 俺たちゃ忙しいってんだろがよ!!」
リーブラ「なるほど貴様を悪人と断定・・・ 審判の時だ!」
強盗アニキA「ぐッ!! な、んだでめぇ・・・強面のコス、ブ、レ野ろ・・・」
強盗アニキA「う、ぐがッ!!」
リーブラ「審判の鐘が鳴り響く! 我がイデアが貴様たちを滅ぼせと囁いている!!」
強盗アニキB「ひ、ひぃ! 兄貴!?」
強盗アニキC「この怪人野郎!!」
櫛谷マイ「あ、あれは・・・リーブラ!! リュウマ! 探していた怪人だよ!!」
カイドウ リュウマ「やべえ、あいつ人を・・・! 悪い、マイ!」
カイドウ リュウマ「オレは行かなきゃならねえ!!」
櫛谷マイ「あっ!! もう!!!」
〇おしゃれな受付
強盗アニキB「ぐ、がぁ・・・」
リーブラ「弱い! 脆い!!」
リーブラ「くだらぬ悪など枯れ木の枝を折るが如し!!」
リーブラ「弱者の群れごときが醜い! 実に醜い!! ああ醜いぃぃぃ!!!」
店員さん「ひ、ひぃ!」
店員さん「あ、ありがとうございます おかげで、ぐッ!!」
リーブラ「問う。貴様も悪人か?」
リーブラ「我がイデアが囁いている。貴様にも審判の鐘がなるであろうと!!」
店員さん「が、ふっ!」
???「う、うわ! く、来るなよ! ママに近づくな!」
男の子「このっ、うぎゃ!」
リーブラ「なんだ貴様は? 貴様、将来の悪か? 我がイデアが判断する」
リーブラ「断罪―――」
???「や、やめろーーーーーーーッ!!!!」
リーブラ「!!」
リーブラ「なんだ貴様? 我が審判を阻むかッ!!」
カイドウ リュウマ「やめろ! あんた、一般人の! それも子どもにまで手は出しちゃいけねぇ!!」
リーブラ「子どもだからどうした? 我がイデアは悪と判断した。断罪せねばならない」
カイドウ リュウマ「この! 分からず屋め!!」
リーブラ「金髪の痴れ者がッ!! 貴様も断罪してくれる!!!」
カイドウ リュウマ「ぐッ!! このままじゃヤベェ!!」
櫛谷マイ「トーラス!!」
カイドウ リュウマ「マイ!? 危ないぞ!!」
櫛谷マイ「着装! フェイズアップって叫ぶんだ!! 私がっ、食い止めている間に!! 早くッ!!」
カイドウ リュウマ「!!」
カイドウ リュウマ「ああ! 分かったぜ!!!」
カイドウ リュウマ「はあああッ!! 着!! 装ッ!!! フェッイズ!!! アッッップッ!!!」
???「『ヴェヴェヴェイ!! テンションアポー!! phase up!!!』」
櫛谷マイ「きゃッ!!」
リーブラ「青い光ッ!? まさか貴様ッ」
リーブラ「貴様も断罪者か!? 認めん!! 認めんぞ!!」
トーラス「認めようと認めまいと関係ねぇ! 暴力を見境なく振るうヤロウは許せねえ!!」
トーラス「カイドウ家訓示その3! 『分からず屋とは拳で語れ!』だ!」
リーブラ「ぐッ!! 貴様キサマきさまぁァァァッ!!」
トーラス「がはっ!! なんつー重てぇ拳だ!! だがな負けられねぇんだ!!」
リーブラ「悪は断罪するッ!! すべて!! 世の不条理を我が、私がァァァッ!!」
???「『Zodiac Power Charge』」
トーラス「な、なんだッ!?」
櫛谷マイ「トーラス! キミに与えられた必殺技だよ!」
リーブラ「断断罪すすす!!」
トーラス「な、なんだ!? どうした!? 目が明滅してやがるぞ!?」
櫛谷マイ「暴走限界?! いけない! このままだとリーブラは大爆発しちゃう!!」
トーラス「!!」
トーラス「止めないと町も吹っ飛んじまう!!」
櫛谷マイ「もう倒すしかないよ! トーラス! 腕のブレスレットをクロスさせるんだ!!」
トーラス「く、くそっ!! 仕方ない!! はああああっ!!!」
トーラス「トォォォラスゥブラストファイアァァァ!!!」
リーブラ「ぐ、グワアアアアァァ!!!」
トーラス「仕方・・・・・・なくない!!!」
トーラス「カイドウ家訓示その11『壊れた家電には鋭角チョップ!!』」
リーブラ「ッ!!」
トーラス「よし!! 気絶させたぞ!!」
「ええ・・・・・・?!」
トーラス「訓示その1!『命と資源は大切に』だ!!」
???「どいてくれ! 執行戦隊ジャスティスチーム到着! 悪蔓延る世に一条の正義あり!!」
トーラス「!!」
櫛谷マイ「トーラス! リーブラを! バックレるよ!!」
???「煙幕!? 毒ガスかッ!?」
トーラス「マイ・・・・・・くのいち?」
櫛谷マイ「っぽくてカッコいいでしょー?」
〇異世界のオフィス
昨日、昼ごろセントラル通りエネルディア商建中央2丁目店に強盗が押し入り―――
オオキヨシ テンカ「ええと・・・ええと、えとえとと・・・あの、本当にッ! ごめんなさい!」
カイドウ リュウマ「あの女の人だれ?」
櫛谷マイ「おはよー 誰ってリーブラの中の人だよ」
カイドウ リュウマ「リーブラ・・・・・・?」
『我が名は審判者リーブラ!! 我がイデアが貴様を断罪するッ!!』
カイドウ リュウマ「誰やねん!!」
櫛谷マイ「前回戦ったリーブラ」
カイドウ リュウマ「違う違う! 変わりすぎでしょ!? えええッ?! いや、誰かと取り違えたんじゃ!?」
櫛谷マイ「そう思うよね 暴走したって言ったでしょ?」
櫛谷マイ「変身の時の青い光、あれの制御が出来ていないとおかしくなっちゃうんだって」
テレビ
同時刻、現場付近で青白い光の柱が目撃されており―――
カイドウ リュウマ「うっわー じゃあ、他の10人も?」
櫛谷マイ「たぶん、ね」
カイドウ リュウマ「はああ~・・・ 世間的には怪人で、戦隊ヒーローは別にいて」
櫛谷マイ「やめてもいいよ?」
カイドウ リュウマ「いや! カイドウ家訓示その4! 母さんが言っていた!『意地は貫き通せっ』てな!!」
櫛谷マイ「律儀じゃん」
カイドウ リュウマ「ん?」
櫛谷マイ「なんでもー じゃあ、これからもよろしくね」
テレビ
ホントだよ! ―――が助けてくれたんだ!
怪人が?
ううん!
トーラスっていうヒーローだよ!!
研究所を出て町をぶらつく前に、変身の決まり文句や技の名前を予習してたらもっとスムーズに相手を倒せたのに、とヤキモキしてしまった。家訓を叫びながら戦うトーラスもいいけど、金髪イケメンちょっとチャラいリュウマも魅力的なキャラでした。
所々に出てくる家訓が面白くて笑ってしまいました笑
言ってることは合ってるんだけど!状況!って思わずツッコみたくなりました!
続編も期待しております!
目まぐるしい変化の中、トーラスとして清く正しく闘う意志が芽生えたかいどう君にとても好感もてました。可愛い女のこの指示を素直に聞いているところも
優しいヒーローを想像させられます。