パシリ屋小走駿太郎

芹川サンキュー

エピソード11(脚本)

パシリ屋小走駿太郎

芹川サンキュー

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〇高級一戸建て
  ピンポーン♪
小走駿太郎「俺だよ! 爺ちゃん連れてきたぜ」
  今行くわ

〇一軒家の庭
山本清吉「お母さんの仕事のことは知っているのか?」
吉永麻衣「はい・・・」
山本清吉「当時、俺は店の客引き。 佳代さんは店で一番の売れっ子だった」
山本清吉「もちろん、俺たちが付き合ってることは公にはできない」
小走駿太郎「禁断の愛ってやつだ」
  早希が小走を睨みつける。
小走駿太郎「・・・・・・」
山本清吉「ある日。金が集まる日を狙って、俺たちは店の金を奪って逃げたんだ」
只野太「それがあの一億ですか?」
山本清吉「ああ、おそらくな。」
山本清吉「しかし、店には、俺たちの予想をはるかに超えた大金があった」
武井早希「そんなの犯罪じゃない」
山本清吉「・・・その通りだ」
山本清吉「しばらく身を隠し、俺と佳代さんは細々と幸せに暮らしていた」
山本清吉「しかし、その幸せは長くは続かなかった」
小走駿太郎「どうなったの?」
山本清吉「ある日、俺が警察に捕まった」
小走駿太郎「窃盗罪?」
山本清吉「いや違う。暴行罪だ」
「!!」
小走駿太郎「なんで?」
山本清吉「もともと、犯罪まがいの金が紛れていたんだろう」
山本清吉「俺たちが金を盗んですぐ、店の元締めが失踪したらしい」
山本清吉「その取り調べで呼ばれただけだった」
小走駿太郎「で、なんで暴行罪なの?」
山本清吉「俺は警察を殴って逃げた挙句、数多くの余罪があったから一年の刑を食らった」
小走駿太郎「ただのドジじゃん」
只野太「駿ちゃん」
山本清吉「ああそうだ」
山本清吉「だが、皮肉にもそれが俺の命を救うことになった」
山本清吉「一年の間、安全に身を隠せたからな」
吉永麻衣「それで、母は?」
山本清吉「出所した時、佳代さんの姿はなかった」
武井早希「それって・・・」
吉永麻衣「私ね」
吉永麻衣「母は、鹿児島の実家に帰って出産したのよ」
武井早希「でも、山本さんの出所のことは知っていたんでしょ?」
山本清吉「一度電話があった。だが・・・」

〇和室
山本清吉「佳代さん。 これから俺は追われることになる。 だから・・・」
「そんな・・・このお金はどうしたら・・・」
山本清吉「それはあなたのお金だ」
「違うわ。清吉さんのお金よ」
山本清吉「俺がその金を持ってるのは危ない。 疑われないように、少しずつ使ってくれ。 では——」
「待ってください。 せめてこの子の、麻依の顔を見てあげてください」
山本清吉「・・・・・・」
「せめて・・・声だけでも・・・」
「おぎゃー。おぎゃー」
山本清吉「うぅ・・・」
  そっと受話器を置く山本。

〇一軒家の庭
山本清吉「・・・そしてある日、この通帳と印鑑が手紙と一緒に届いた」
山本清吉「手紙には、毎月金を振り込むので自由に使ってくれと」
山本清吉「ただし・・・」
吉永麻衣「?」
山本清吉「もし振り込みが途絶えたら、娘の力になってあげてくれと」
吉永麻衣「そんなこと、何も知らなかった」
小走駿太郎「でもさ、10年前に婆ちゃん死んだんだから振り込み途絶えたでしょ?」

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