黒いキューピット

平家星

#12 グロウアップ・グロス(後編)(脚本)

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〇シックなバー
三上仁「全部めちゃくちゃにして、あんな学校、辞めてやりたい・・・」
吉井穂香「仁さん!? どうしたの?」
三上仁「・・・俺は保護者から不評らしいんだ。気に入った児童を、ひいきするって」
吉井穂香「えっ!? そんなこと無いと思うけど・・・」
三上仁「前は逆に、『もっと児童との距離を縮めろ』って注意されてたんだ」
三上仁「これ以上、どうしろって言うんだよ・・・クソッ」
吉井穂香(三上先生、ずいぶん荒れてる・・・)
三上仁「・・・そもそも俺は、子供なんか好きじゃないんだよ。うるさいし、生意気だし」
吉井穂香「・・・え?」
三上仁「この前なんか、何を勘違いされたのか、女子児童に告白されたんだ」
三上仁「『付き合ってくれ』なんて、どうかしてる・・・」
吉井穂香「・・・・・・」
三上仁「もちろん、断ったよ。付き合えるわけない。相手は子供だぞ。気持ち悪い」
吉井穂香「・・・気持ち悪い?」
三上仁「最近のガキは背伸びばっかしてさぁ。 断る方の身にもなってほしいよ。 変にこじらせたら、後が大変だっつーのに」
吉井穂香「何それ・・・。 ひどい・・・」
三上仁「ん?」
吉井穂香「先生への気持ち、真剣だったのに! そんな風に片付けるなんて、ひどすぎる!」
三上仁「恵梨香ちゃん!? どうしたの!?」

〇市街地の交差点
吉井穂香(最悪・・・。先生があんなことを思ってたなんて!)
吉井穂香(この口紅がなかったら、知らなくて済んだのに・・・)

〇音楽室
三上仁「あと決まってないのは・・・吉井さんだけだね。どのパートに入りたい?」
吉井穂香「・・・私は、何もやりたくありません」
三上仁「・・・吉井さん?」

〇音楽室
三上仁「吉井さん、今日は様子がおかしかったけど、どうかした?」
吉井穂香「・・・なんでもありません」
三上仁「この前、僕に思いを伝えてくれたよね? そのことが関係あるのかな?」
吉井穂香「・・・・・・」
三上仁「気持ちはすごく嬉しかったんだ。君はとても素敵な生徒だし、率先して頑張ってくれていたし・・・」
吉井穂香「・・・全部、きれいごと」
三上仁「え?」
吉井穂香「やめて! 嘘ばっかり!」

〇まっすぐの廊下
吉井穂香(本当は子供だって見下してるくせに・・・絶対に許さない)
  走りさっていく穂香を、翔平が見ている。
奥田翔平「あいつ・・・大丈夫かな?」

〇ラブホテルの部屋
三上仁「恵梨香ちゃんがまた連絡してくれて嬉しいよ。この前は何故か怒ってたから・・・」
吉井穂香「・・・ごめんね。あの時は機嫌が悪かったの。ほら、もっと飲もう」
三上仁「もうじゅうぶん、酔っぱらったよぉ」
吉井穂香「・・・いいから。ほら、もっと」

〇ラブホテルの部屋
吉井穂香「はは。何にも知らずに、寝てるよ」
  穂香は口紅をごみ箱に捨てる。
吉井穂香「・・・もうこんなもの、いらない」

〇まっすぐの廊下
女子生徒1「えっ、なにこれ・・・?」
  廊下に張り出された一枚の写真。そこにはホテルのベッドで酔いつぶれた三上の姿が写っていた。
  写真の横には『三上仁は、泥酔して女子生徒をホテルに連れ込んだ犯罪者』と書かれた紙が並んでいる。
女子生徒1「これ、三上先生だよね?」
女子生徒2「てか・・・ヤバくない? ランドセルまで写ってるし」
三上仁「なんだ? なんなんだよこれ!?」
  やってきた三上は慌てて写真をはがす。
  少し離れたところから、穂香がそれを眺めている。
吉井穂香「フフ・・・」

〇教室
担任の教師「三上先生は体調不良を訴えていて、治療に専念されるために退職しました」
吉井穂香(・・・いい気味。これでよかったのよ)
奥田翔平「・・・・・・」

〇商店街
奥田翔平「なぁ、穂香」
吉井穂香「・・・なに?」
奥田翔平「三上先生のあれ、やったのって、お前?」
吉井穂香「・・・なんのこと? 知らないわよ」
奥田翔平「何か悩みがあるなら、話してくれない?」
吉井穂香「は?」

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