黒いキューピット

平家星

#11 グロウアップ・グロス(前編)(脚本)

黒いキューピット

平家星

今すぐ読む

黒いキューピット
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇音楽室
吉井穂香「先生のことが好きです! 良かったら私と、付き合って下さい!」
三上仁「・・・ごめんよ。君の気持ちには答えられない」
吉井穂香「えっ?」
三上仁「・・・君はとても素敵な女の子だと思う」
吉井穂香「じゃあ、どうしてダメなの・・・?」
三上仁「先生は、生徒とは恋できないんだよ。 わかってほしい」
吉井穂香「そんな・・・」
三上仁「思いを伝えてくれて嬉しかった。 ありがとう」
三上仁「これからも、音楽が好きな君でいてほしいな」

〇商店街
吉井穂香(音楽の授業を頑張ってたのは、先生が好きだったからなのに)
吉井穂香(結局、先生は私のこと、子供としか見てないんだ・・・)
  落ち込んで歩く穂香の元へ、奥田翔平(おくだしょうへい)が走ってくる。
奥田翔平「よぉ、穂香! 一緒に帰ろうぜッ!」
吉井穂香「・・・ついてこないで」
奥田翔平「何だよ! 前までずっと一緒に帰ってたじゃんかよ!」
吉井穂香「前とは違うの。あんたみたいなお子様に構ってられないんだって。 こっちは真剣に悩んでるんだから」
奥田翔平「悩み? 俺が聞いてやるよ! ほら、お菓子でも食べながら話そうぜ! ふがし、うまいぞ!」
吉井穂香「いらないから」
奥田翔平「チェッ。なんだよ・・・あいつ」

〇リサイクルショップ
吉井穂香(あ~あ。先生が好きになってくれるような、大人の女の人になれたらなぁ・・・)
吉井穂香(あれ? いつの間にこんなところ歩いてたんだろう・・・)
  穂香は知らぬ間にリサイクルショップの前に立っていた。
  ショーウィンドウには大人っぽい口紅が置かれている。
吉井穂香(この口紅をつけたら、私も少しは大人っぽく・・・)
天海愛「それ、きっとあなたに似合うと思いますよ」
吉井穂香「えっ?」
天海愛「良かったら、見て行って下さい」

〇リサイクルショップの中
天海愛「ありがとうございました」
ピーチ「小学生のくせに、口紅を買っていくなんてな。マセガキめ」
天海愛「恋愛に年齢は関係ないでしょ? 綺麗になって、振り向かせたい人がいるなんて、素敵じゃない」
ピーチ「どうだか? 俺は、ガキはガキらしい方が良いと思うけどね」

〇女の子の部屋
吉井穂香(明日これをつけていったら、先生気づいてくれるかな・・・?)
  穂香は緊張気味に口紅を塗る。
吉井穂香(ちょっと派手かな?)
  手元の口紅を見て、鏡に視線を戻す。
  すると・・・
吉井穂香「えっ!? 嘘、なにこれ!?」
  穂香は困惑しながら、自分の顔や体を触る。
  顔も体も、すっかり大人になっていた。
吉井穂香「お、大人になっちゃった・・・?」
吉井穂香「どうして? この口紅をつけたから・・・?」

〇学校の校舎
吉井穂香(お母さんの一番可愛い服、借りてきちゃった)
吉井穂香(・・・思わず飛び出してきちゃったけど、こんなの上手くいくわけ・・・)
  その時、校門から三上が出てくる。
吉井穂香(三上先生だ!)
吉井穂香(・・・よし、こうなったら・・・)
吉井穂香「あっ、あの!」
三上仁「学校に御用ですか?」
吉井穂香「い、いえ! 私、この学校の・・・そう、卒業生なんです!」
三上仁「ああ、そうでしたか!」

〇おしゃれなレストラン
吉井穂香「今の学校の話をたくさん聞かせてくれて、ありがとうございます。とっても楽しい」
三上仁「いえいえ。仕事帰りは一人さみしく夕飯を食べるだけなので」
三上仁「話し相手になってもらえて、かえってありがたいです」
吉井穂香(先生にこんな目で見られるの、初めて・・・)
三上仁「あなたは、不思議な人ですね。大人の女性だけど、どこか教え子たちみたいな純真なところがある」
吉井穂香「そんな風に言ってもらえて、嬉しい」
三上仁「それに、初めて会った感じがしない」
三上仁「ああ、すみません。吉田さんって、下の名前は何とおっしゃるんですか?」
吉井穂香「名前・・・え~と、・・・恵梨香です。吉田恵梨香」

〇音楽室
吉井穂香(あれから、毎晩のように会ってる。あの口紅のおかげで、大人の恋が始まった)

このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です!
会員登録する(無料)

すでに登録済みの方はログイン

次のエピソード:#12 グロウアップ・グロス(後編)

成分キーワード

ページTOPへ