黒いキューピット

平家星

#10 愛のダイアリー(後編)(脚本)

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〇リサイクルショップの中
本間猛「ね、いいじゃん! 店員さん!」
天海愛「告白なら、前のデートのときに断ったでしょ・・・?」
本間猛「何のこと言ってんの? 頼むよ! この通り!」
天海愛「ごめんなさい、出ていってください」
本間猛「なんだよ、冷たいな!」
天海愛「お願いだから、早く出ていって!」
本間猛「俺はただ、恋がしたいだけなのによ・・・」
  猛は落ち込んだ様子で店を出ていった。
ピーチ「都合の悪いデートのことは、日記を破いて忘れ去ったんだろうな。 厄介な奴に好かれちまったなぁ~」
天海愛「もう。楽しそうにしないでよね」

〇リサイクルショップの中
  一週間後・・・
本間猛「なぁ、一回デートしてくれればいい! それで俺の良さを理解できるはずだ!」
天海愛「・・・あなた、どうかしてるわ」
天海愛「もう一週間、私は何度も断ってるのに、毎日この店に来てる」
天海愛「そのたびにあなたは、日記を破いて記憶を消してるでしょ?」
本間猛「は? 確かに、日記を破いてスカッとしてるけど・・・それが何だってんだ?」
天海愛「日記はそんな風に使うべきじゃない。 ・・・って、この話も、もう3回目だけど・・・」
本間猛「・・・うぅ・・・くそう・・・」
天海愛「大丈夫?」
本間猛「・・・むしゃくしゃするんだ」
本間猛「何百回も気持ちを否定されたような感覚が、どっかにこびりついている・・・」
天海愛「日記を破けば記憶は消える。それでも、潜在意識として蓄積されているの・・・」
天海愛「都合の悪いことを忘れ続けるのは、あなたのためにならない」
本間猛「うぅ・・・」
天海愛「わかったら、もうあきらめて。別の人を探すべきよ」
本間猛「・・・くそっ! 俺を拒むなよっ!」
  猛は勢いよく店の棚を引き倒した。
天海愛「何するの!? やめてッ!」
  猛は愛の制止を振り切り、机をひっくり返す。
天海愛「やめてったら!」
  その時、ピーチが飛んできて猛の耳に噛みつく。
ピーチ「キューッ!」
本間猛「痛ぇっ!」
本間猛「このネズミ・・・!」
天海愛「もう、いい加減にして!」
本間猛「わ、悪かったよぉ・・・。こんなつもりじゃなかったんだ・・・」
ピーチ「野郎、俺をネズミって言いやがった」
天海愛「どんどん酷くなっていくみたい・・・」
ピーチ「あの様子じゃ、また日記を破って記憶を消して、店にやってくるだろうな」
天海愛「私と出会った記憶から、根こそぎ破り捨てることができればいいんだけど・・・」
ピーチ「・・・わかってるだろ? 一度売ったものは、もう客の物」
ピーチ「俺たちが取り上げたり、破いたりすることはできない」
天海愛「・・・こうなったら、仕方ないわね」

〇古いアパートの部屋
  猛は日記帳から今日の記載を破る。
本間猛「嫌なことは全部忘れて、また前向きにチャレンジだ・・・。明日こそ、きっと・・・」

〇リサイクルショップの中
本間猛「店員さん!」
天海愛「・・・やっぱり、来たのね」
本間猛「えっ? 俺の事待っててくれたの!?」
天海愛「こちらへどうぞ」
本間猛「え? いきなり店の奥に?」
天海愛「嫌ですか?」
本間猛「いやいや! 嬉しいよ・・・!」
  店の奥に進むと、地下に続く階段がある。
天海愛「降りて」

〇地下室への扉
天海愛「・・・見てもらいたいものがあるの。 誰にも、見せたことはない・・・」
本間猛「誰にも? そんな大切なものを・・・光栄だよッ!」
天海愛「・・・これを見たら、あなたは私を好きじゃなくなる」
本間猛「ありえないね! 心の底から惚れてんだ」
天海愛「そう・・・」

〇地下室
  愛に続いて、猛が地下室に入ってくる。
  部屋の奥から、呼吸音が聞こえる。
  猛が目を凝らすと、暗闇の中に何かの目が光る。
???「フゥ・・・フゥ・・・」
本間猛「な、なんだこいつ・・・ひえぇ・・・」
天海愛「私の大切な人なの・・・」
本間猛「何言ってんだ!?」
天海愛「これを見ても、私を好きだと言える?」
本間猛「き、気が狂ってやがる! もう、帰らせてくれ!」

〇古いアパートの部屋
本間猛「あれはいったい、何だったんだ・・・? 俺は、何を見せられた・・・?」
  猛は震える手で日記を開く。

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