エピソード8(脚本)
〇貴族の応接間
津久井駅と高天神駅の間で発生した大事故で同区間は不通となり
市街地から高天神駅へのアクセスは
遮断された!
自動車道も通行止めとなっているいま
高天神家は陸の孤島となってしまったのだ
警官「事故では多数の怪我人がでている ようなのですが」
警官「この状況では市街地側から事故現場に 要員を送ることが難しいとのことで」
警官「田滝上さんに、ご協力をお願いしたい と所轄署から要請がきています」
田滝上敬司「わかった。すぐに行くと伝えてくれ」
警官「了解しました。 いったん高天神駅に向かっていただき」
警官「そこから線路沿いに現場を目指すことに なるかと思いますので、ご準備ください」
菊梁善意「田滝上さん、僕も一緒に行きます」
田滝上敬司「いや、おまえはここに残れ」
田滝上敬司「天上さんを助けて 引き続いて事件の捜査にあたれ」
高天神吉祥子「外から孤立してしまって 私たちは大丈夫でしょうか?」
田滝上敬司「詳細はこれから現場に行って確認しますが」
田滝上敬司「事故の状況によっては 復旧に数日かかる可能性もありますね」
田滝上敬司「とは言え、道路の復旧もそろそろでしょうし、ご心配なさることはありません」
天上美月「そうです。 しばらくのご辛抱だと思います」
高天神持国「冗談じゃやないぞ、こっちは忙しいのに こんな山奥にカンヅメだなんて!」
田滝上敬司「まあ、そうおっしゃらずに。 事故は不可抗力ですし」
天上美月「事件の関係でも、事情聴取させていただく 必要がありますから」
田滝上敬司「そういうことです」
高天神持国(なんてこった!? 兄貴も広目もとことん迷惑な連中だよ!)
田滝上敬司「じゃ、あとはよろしくな!」
天上美月「まかせてください」
高天神吉祥子「天上さんや警察の皆さんに 今夜お泊りいただくお部屋を」
高天神吉祥子「ご用意させていただこうと思いますけど いかがでしょう?」
菊梁善意「とんでもありません! お気遣いなく!」
高天神吉祥子「まさか野宿されるおつもりですか? 今夜は天気も下り坂みたいですよ」
天上美月「所轄の警官の方もいらっしゃるし ここはお言葉に甘えましょ」
菊梁善意「わかりました。宿泊の費用については 改めてご相談させてください」
高天神吉祥子「費用とか、お気になさらないでください」
菊梁善意「そうは参りません。 田滝上さんからも怒られますので」
高天神吉祥子「わかりました。 では詳細は後日ということで」
高天神吉祥子「桐山、お願いね」
桐山利博「かしこまりました」
天上美月「では時間もたっぷりあることですし」
天上美月「昨夜の事件について、皆さんから 詳細を聞かせていただいても良いですか?」
高天神吉祥子「ええ」
多聞氏は夕食後に、夫人の梨香子さんと
口論になったと聞いていますが
理由はご存知ですか?
高天神吉祥子「昨夜は私は不在だったので・・」
外浦知里「私と堀川さんは、夕食の時間帯には 鷹王さまのお世話で別館の方におりました」
天上美月「鷹王氏は人格が変わられて、ご自分は庭師だと思い込まれていたんでしたっけ?」
外浦知里「ええ。ですので、別館の、木島さんが 使われていた昔のお部屋にご案内して」
外浦知里「ふたりでずっと 鷹王様に付き添っておりました」
天上美月「じゃあ、多聞さんご夫妻の口論は 聞かれていないんですね」
外浦知里「はい」
天上美月(ということを、わざわざ言うのは何故? なにか狙いがあるの?)
天上美月(話したこと以外の考えは、読み取れない けど、なにかあるわね)
高天神真知子「あの・・・」
高天神真知子「お二人は お友達のことで言い争っていました」
天上美月「お友達というのは、どなたのことですか?」
高天神真知子「お名前までは・・・けれど 梨香子さんのお友達のことのようでした」
真知子は記憶の中で
昨夜の「ふたりの声」を反芻していた
天上美月(ほぼ真実みたいね。 たまに、記憶を捏造しちゃう人もいるけど)
〇荒廃した国会議事堂の広間
口論のあと、多聞氏は音楽堂に向かい
作曲を行われていたようですが
夜半を過ぎた頃
ピアノの音が途絶えたため
執事の桐山さんが音楽堂を訪ねたところ
多聞氏が日本刀で刺殺されているのを
発見した、ということですね
天上美月「ここで桐山さんに3つ質問があります」
桐山利博「なんなりと」
天上美月「遺体発見の正確な時刻は?」
桐山利博「午前2時3分でございました」
天上美月「2つ目の質問です。遺体を発見されたとき 中に入られましたか?」
桐山利博「いいえ。 格子窓の隙間から見ただけでございます」
桐山利博「灯りがともっておりました上に あのような状態でしたので、一目で」
天上美月「わかりました」
天上美月「最後の質問ですが、事件後に どうやって音楽堂に入ったのでしょう?」
桐山利博「音楽堂は、中にどなたかいらっしゃると 罠が発動する仕掛けでございますが」
桐山利博「1時間以上、堂内の人物に動きがない場合 罠の動作は停止する仕組みでございます」
天上美月「そーだったんですか?」
桐山利博「さようでございます。 その昔、ご当主のどなたかが」
桐山利博「堂内でお倒れになって、そのまま お亡くなりになられたことがあったとか」
桐山利博「そのため、現在の仕組みに改造された そうでございます」
桐山利博「話を戻しますと、状況を確かめたあと 警察に通報させていただき」
桐山利博「1時間以上、経過するのを待った上で」
桐山利博「到着された警官の方と「ふたりで」 中に入ってご遺体を確認致しました」
桐山利博「床に倒れていた広目様のご遺体には そのとき初めて気づいたしだいでして・・」
天上美月「ちょっと待ってください。 いま「ふたりで」とおっしゃいました?」
天上美月「入れるんですか? ふたり一緒だと?」
桐山利博「ええ。「同時に一緒」であれば 入ることは可能でございます」
桐山利博「「ふたりまで」ではございますが」
菊梁善意「じゃ、じゃあ 犯人とふたりで入って」
菊梁善意「犯行後に犯人だけ出る方法なら 音楽堂は密室じゃないことに!?」
天上美月「・・・には、ならないわよ」
菊梁善意「え!? どうして?」
天上美月「よく考えてみて」
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