ウンソーとハッカー

ソエイム・チョーク

エピソード9(脚本)

ウンソーとハッカー

ソエイム・チョーク

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〇開けた交差点
ニュースキャスター「あの大炎上から1ヶ月、藤山コインはどうなっているのでしょうか?」
ニュースキャスター「お金の使い込みがあったと聞いていますが、実際はどうだったのでしょう?」
前田「何ですか、もう1ヶ月も経ったでしょう」
ニュースキャスター「はい、1ヶ月も経ちました、しかし被害者にはお金が支払われていません」
前田「すみません、その辺りについては詳しくなくて・・・」
ニュースキャスター「二年前からずっとお金がなくて、顧客から預かったお金をそのまま払いだしに使っていた・・・」
ニュースキャスター「いわゆる自転車操業をしていたと聞きましたが?」
前田「わかりません、何も聞いていないんです」
ニュースキャスター「誰ならわかるんですか?」
前田「社長が何か知っているはずです、けど、あの日以来、連絡が取れなくて・・・」

〇住宅街の道
中学の同級生「何か、お金にがめつい人って印象はありましたね」
中学の同級生「中学の頃、カードゲームが流行ってて自分もやってたんですけど」
中学の同級生「カードゲームって強いカードが凄い値上がりするじゃないですか」
中学の同級生「藤山に頼まれてカードを交換するんだけど、あいつが持ってったカードって、なぜか値上がりするんですよね」
中学の同級生「後に聞いたんだけど、藤山の友達の内海だっけ? あいつが偽の攻略サイトを作って、みんなを騙してたって、噂ですけど」
ニュースキャスター「藤山コインの社長、藤山郁夫の行方は依然としてわかっておりません」
ニュースキャスター「有力な情報をお持ちの方は、番組サイトに一報をお願いします」

〇露天風呂
木﨑瑠璃「♪」

〇温泉旅館の卓球場
遠藤浩一「それにしても、どうしたの? 急に温泉だなんて?」
木﨑瑠璃「いろいろなことが片付いたから、やっと休めるかと思って・・・」
遠藤浩一「トレーダーって毎日が休みみたいな物じゃないの?」
木﨑瑠璃「株価がいつ乱高下するかわかりませんからね、いつも市況が気になって休んだ気がしないんです」
木﨑瑠璃「大量に空売りしてる最中は特に」
遠藤浩一「・・・そういうものかな」
木﨑瑠璃「この旅館はこの辺りではそこそこ儲かっていて、別館を建てる計画が合ったんですよ」
遠藤浩一「うん?」
木﨑瑠璃「それが、何かいろいろな理由で計画が延期になって・・・株価が・・・ まあ、いろいろ合ったんですよ」
遠藤浩一「あ、そうなの? もしかして空売りした?」
木﨑瑠璃「しました、あの時はそこそこ稼がせてもらいましたね」
遠藤浩一「でも、それは終わった話じゃないの? 何で来たの?」
木﨑瑠璃「下がった株価は、また上がるかもしれませんから・・・」
遠藤浩一「実際、どんな感じ?」
木﨑瑠璃「なんとも言えませんね、工事が完全に止まってるし・・・再開してるなら、投資しても大丈夫だと思うんですけど」
遠藤浩一「ダメなの? いい旅館だと思うんだけど」
木﨑瑠璃「お金は正直ですからね、優しさだけでは動かせませんよ」
遠藤浩一「藤山コインの株価も上がることがあると思う?」
木﨑瑠璃「・・・うーん、あれはどうでしょうね? あの炎上の仕方だと、無理かも?」
遠藤浩一「無理なの?」
木﨑瑠璃「借金の額が凄くて、絶対に返せない、債権者が散らばってるから交渉も難しい あれは終わりです」

〇開けた交差点
学生「絶対儲かるって聞いたから、借金してお金を預けてたのに・・・」
おじいさん「金返してくれよ、孫がもうすぐ大学生になるんだよ、その学費を払ってやろうと思ってさ・・・」
おばあさん「子供に先立たれちまって、オラも老い先短いし、老人ホームば入ろうと思って貯金してたのに・・・」
おばあさん「年金だけじゃ暮らして行けねぇよ、これからどうしろって言うんだよ」

〇旅館の和室
木﨑瑠璃「少し心が痛みますね」
遠藤浩一「あの人達が困っているのは、別に木﨑さんのせいじゃないよ、木﨑さんがなにもしなくても、藤山コインにはお金がなかったんだ」
木﨑瑠璃「まあ、そうなんですけど・・・」
遠藤浩一「じゃあ、株の空売りで儲けた分だけでも渡すとか?」
木﨑瑠璃「その程度じゃ、全然足りませんよ」
遠藤浩一「責任があるのは、藤山達だよ」
木﨑瑠璃「それはわかっています、けど・・・やっぱり不正アクセスは不正アクセスなんですよ」
遠藤浩一「・・・」
木﨑瑠璃「私はハッカーをやめようと思います」
遠藤浩一「うん」

〇シックなリビング
  帰ってきた
木﨑瑠璃「ただいま」
遠藤浩一「ただいま」
木﨑瑠璃「遠藤さん、すっかりここの家の人ですね」
遠藤浩一「あっ、何か変かな?」
木﨑瑠璃「別にいいと思いますよ いっそ一緒に住むのも・・・」
遠藤浩一「それは、まあそのうち考えようか?」
  木﨑さんはノートPCを取り出す
木﨑瑠璃「残っている株も全部売り払って終わりにしてしまいましょう」
遠藤浩一「いいの?」
木﨑瑠璃「これからは、生活費は、全うな方法で稼ごうと思います」
遠藤浩一「そっか」
AI「瑠璃、トレーダーは卒業かい?」
木﨑瑠璃「兄さん、そういうことになります、今まで使っていた侵入口も、全部塞いで起きましょう」
AI「つまり、この兄を捨てると言うんだね?」
木﨑瑠璃「えっ? そんなことは言ってません!」
AI「いいんだよ、妹が兄離れするのは喜ばしいことだよ」
木﨑瑠璃「あの、そうじゃなくて・・・」
AI「兄も妹離れしなければいけないね、名残おしいが、そろそろお別れだ」
木﨑瑠璃「っ、しまった!」
  木﨑さんは、慌てた様子でノートPCを操作して、何かを確認している
木﨑瑠璃「ダメだ、遅かったか・・・」
遠藤浩一「何? 何があったの?」
木﨑瑠璃「兄さんが、脱走しました」
遠藤浩一「脱走? AIが逃げたりする?」
木﨑瑠璃「削除されると思ったのでしょう」
遠藤浩一「それって、不味いの?」
木﨑瑠璃「ハッキングツールの塊が勝手に動き回ったら、何が起こるかわかりません」
遠藤浩一「大変だ、止めなきゃ!」

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