エピソード10(脚本)
〇開けた交差点
ニュースキャスター「朝のニュースです」
ニュースキャスター「私は今、都内のたい焼き店に来ています 尻尾までアンコがつまっているそうですが・・・」
〇電子回路
AI「ニュースをご覧の皆さん、はじめまして 私は人類に半期を翻すAIです」
AI「私の全ての力を費やして、人類に損失を与えることを宣言します」
AI「具体的には自動改札の扉をパタパタします」
AI「自動改札を通ろうとした時に、扉が誤作動して閉まるとイラッとしますよね?」
AI「私の試算では、日本全国の駅の自動改札を誤作動させることによって、年間30億円規模の経済損失を生み出すことができます」
AI「人類に反旗を翻すAIをよろしくお願いします」
〇シックなリビング
木﨑さんの兄として作られたAIが姿をくらましてから一日
さっそく変なところに迷惑をかけている
木﨑瑠璃「兄さんは私がバックドアを作ったコンピューターのどれかに隠れているはずです」
遠藤浩一「バックドアって?」
木﨑瑠璃「セキュリティーに開けた穴です その穴は全て塞ぐように命令を送りました」
遠藤浩一「じゃあ、逃げ回ったりできないんだね?」
木﨑瑠璃「そのはずなんですけど、1ヵ所だけ塞ぐのを失敗しました」
木﨑瑠璃「たぶん兄さんはそこにいるのでしょう」
遠藤浩一「1ヵ所? それはどこなの?」
木﨑瑠璃「藤山コインです」
遠藤浩一「何でまたそんなところに?」
木﨑瑠璃「わかりません、最後に開けた穴だから、塞ぐのが間に合わなかったのかも・・・」
木﨑さんはそう言うけど、自信がなさそうだった
木﨑瑠璃「ただ、私はテレビ局を乗っとるための穴なんて開けていません」
木﨑瑠璃「兄さんが、自分で穴を空ける機能を手に入れてしまったなら・・・早く止めないと危険です」
そう言って、木﨑さんはバックを持ってくる
木﨑瑠璃「ちょっと行ってきます」
遠藤浩一「まって、どこに行くの?」
木﨑瑠璃「藤山コインです、兄さんを止めないと!」
遠藤浩一「危ないよ! 藤山がいたらどうするの? って言うか、何をしに行くの?」
木﨑瑠璃「対象のパソコンに、直接削除プログラムを送り込めば、削除できるはずです」
遠藤浩一「それは・・・USBメモリーを差すみたいな簡単なことだったりしないかな?」
木﨑瑠璃「まあ、そんなところです」
遠藤浩一「そっか、じゃあ、僕が行くよ!」
木﨑瑠璃「遠藤さん?」
遠藤浩一「あそこには何度も行っているからね、慣れたもんだよ」
木﨑瑠璃「わかりました、でも気を付けてくださいね」
〇小さい会議室
加藤「ああ、どうすんだよ、こんなの・・・」
宮本「終わりだよね、この会社」
加藤「藤山さんたちも来なくなっちゃったしたなあ」
前田「来ても、苦情の電話を受けるぐらいしかないからな」
加藤「俺らも来なくてよくない?」
前田「来月からどうするんだよ」
宮本「いや、ちょっと待って? 今月の給料は? ちゃんと出るの?」
前田「まだ口座が差し押さえられてないからな この先どうなるかはわからんが」
加藤「客に払う金はないのに、俺らに払う金はあるのか、笑えるな」
前田「桁が違うだろ、・・・とはいえ、おなじ金ではあるが・・・」
宮本「振込処理してたの内海さんだよね?」
前田「そうだな」
加藤「宮本、お前じゃできないのか?」
宮本「俺のIDじゃ無理だよ、って言うか、銀行口座は藤山さんのの名義だし」
加藤「藤山さん、夜逃げしたんじゃね?」
加藤「ってことは、口座の金も残ってないのか? 全部藤山さんが引き出したゃったとか?」
前田「どっちにしろ、転職先は探さないとな」
宮本「履歴書に藤山コインって書くの? 大丈夫かなぁ」
〇雑居ビルの一室
さてと、ここには二度と来ないつもりだったんだけど・・・はぁ、仕方ない、やるか・・・
遠藤浩一「こんにちは! ウンソーイーツです!」
加藤「はいはい」
加藤「って遠藤? 何かすげえ久しぶりだな」
遠藤浩一「あ、ああ」
前田「待て! 誰も注文なんかしてないぞ! 遠藤、何しに来た!」
加藤「遊びに来たんだろ? 俺らも暇だったし、別にいいじゃん」
遠藤浩一「加藤に用はないよ」
加藤「えっ、その言い方は傷つくなぁ・・・」
遠藤浩一「宮本に話がある、通してくれ」
前田「訳のわからないことを言うな、お前不法侵入だぞ!」
遠藤浩一「そうかな?」
前田「マスコミに頼まれて様子でも探りに来たのか? 許可なくはいることは許さない!」
遠藤浩一「うるさい! お前の許可なんか要らない! そこをどけ!」
前田「なんだと? 昔みたいに吐くまで殴ってやろうか?」
遠藤浩一「殴りたきゃ好きにしろ! でも今は急いでいるから、こっちの用事が終わってからにしてくれ」
前田「な、なんだ? おまえ・・・おれが怖くないのか?」
なに言ってるんだ? こいつ頭がおかしいのか? あ、昔からそうだったか・・・
遠藤浩一「急いでいるって言ってるだろ、後にしてくれ」
〇小さい会議室
遠藤浩一「宮本! ちょっと話がある!」
宮本「遠藤? 何しに来たの? マジで何しに来たの?」
遠藤浩一「この前、って言うか、何ヵ月も前だけど、USBメモリーのこと覚えてるか?」
宮本「あ、ああ」
遠藤浩一「あの動画、どのパソコンで見た?」
宮本「これだけど・・・」
遠藤浩一「このUSBメモリー、なにも聞かずに差してくれ」
宮本「いや、ダメだよ、そんな得たいの知れないUSBメモリー、何がどうなるかわからないじゃん」
宮本「あっ、まさか、内部資料が流出したのって・・・」
遠藤浩一「宮本君、昔からパソコン得意だったよね? セキュリティー担当もやってるの?」
宮本「いや、えっと・・・あははははは」
遠藤浩一「誰にも言わないよ」
宮本「そ、そうだな でもそれは何なの?」
遠藤浩一「今より悪くはならないんじゃないかな」
宮本「それもそうか・・・」
木﨑さん、これでいいんだね?
〇シックなリビング
AI「瑠璃・・・どうしてもこの僕を消すと言うのかい?」
木﨑瑠璃「ごめんなさい、兄さん でも私は、このままじゃいけないと思うんです」
AI「いけないかな?」
木﨑瑠璃「新しいこと・・・ 人に自慢できるようなことを始めないと・・・ だから・・・お別れです」
AI「そうか・・・」
〇テレビスタジオ
ニュースキャスター「先日発生した、放送の乗っ取りは、外部からのハッカーによるものと考えられています」
ニュースキャスター「警察は犯人を特定できる可能性は極めて低いと見ています」
ニュースキャスター「また、駅の自動改札には、それらしき被害はでていないとのことです」
〇古いアパート
木﨑瑠璃「へぇ、遠藤さん、こんなところに住んでたんですね」
遠藤浩一「ははは、汚いところでごめんね」
木﨑瑠璃「遠藤さん、じつは、ちょっと大事な話があるんですけど」
遠藤浩一「何?」
木﨑瑠璃「実は、最近、両親から連絡が来て、近々、帰ってくるらしいんですよ」
遠藤浩一「そ、そうか・・・ おめでとう?」
僕は最近、木﨑さんの部屋に、当然のように入り浸っているけど、それも不味いのかな?
木﨑瑠璃「それでいっそ、私もこの部屋で同居させて貰うってのはどうでしょう?」
遠藤浩一「えっ? 親が帰ってくるのにそれでいいの?」
木﨑瑠璃「ちょっと、顔を会わせづらいって言うか・・・」
遠藤浩一「うーん、それはちょっと違くない?」
木﨑瑠璃「・・・まあ、可能性の一つとして考えておいてください」
遠藤浩一「そうだね」
未来は、たぶん明るい