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イトウアユム

第9話:ネモフィラの祈り<episode.2>(脚本)

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〇ファストフード店の席
  それから一時間後。
城間龍昇「・・・っていうわけで 数日でも良いから泊まらせて欲しいんだよ」
  ファーストフード店で必死な表情を浮かべ
  龍昇は電話の相手に頼み込んでいた。
有坂祐樹「無理っすね」
  願いもむなしく
  電話は空振りの連続だった。
有坂祐樹「俺の家、シェアハウスなんですよ。 だから友達の出入りも禁止で・・・」
有坂祐樹「パライソのロッカールームとかは ダメなんですか?」
城間龍昇「・・・前にそれをやって オーナーに禁止令を出されてな・・・」
有坂祐樹「店の寮も居座り続けた挙句、出禁ですもんねえ。オーナーも出張中で不在ですし」
有坂祐樹「ま、とりあえずパライソの従業員陣は 無理じゃないですかね~」

〇ファストフード店の席
城間龍昇「・・・レイヤのやつ、電話にも出ねえぞ」

〇ファストフード店の席
真渡愛瑠「あはは、無理―☆ 龍昇も知ってるでしょ? ボク、プライベートな空間に他人は 入れたくないんだよねー」
城間龍昇「そこをなんとかっ! 俺とお前の仲じゃんかっ!」
真渡愛瑠「いやーん、そんな言い方しないでよ~ 三守クンに誤解されちゃう」
城間龍昇「なんでそこに累の名前が出てくるんだよ! つか、お前ナオに変な事吹き込むの やめろって」
真渡愛瑠「事実しか言ってないモーン☆ そんなわけで三守クンにお願いしなよ~」
城間龍昇(人でなしっ! 覚えてろよ・・・次は)

〇ファストフード店の席
  数時間後。
  テーブルに突っ伏す龍昇は
  真っ白に燃え尽きていた。
城間龍昇(誰もダメだった・・・ そうだよな、いきなり泊めろなんて言って 泊めてくれる人なんていないよな)
  実家だから、恋人と同居してるから
  新宿から2時間の場所だから
  3畳1間だから。
  その後様々な理由で断られ続けた。
城間龍昇(俺、結構人望があるって 思ってたんだけどな・・・はは・・・)
  やけになって眺めるスマホの充電も
  残り1パーセント。
  元々金は無いし、家に立ち入りが出来ないから充電器も当面の着替えもない。
  万事休す。
城間龍昇「もしかして、誰か思い直してくれたの かも! ・・・って・・・」
  表示されている名前を見て
  ためらうが・・・
城間龍昇「頼む、助けてくれ!」
  気付くと通話ボタンを押し
  思わず叫んでいた。

〇ファストフード店の席
三守累「事前に真渡さんから 連絡を頂いてまして・・・ 事情はある程度伺いました」
  電話をしてきたのは
  今、目の前にいる累だった。
城間龍昇「・・・アイルめ、余計な事を。 でも、それなら早いな。 頼みがあるんだ、累」
三守累「はい、なんでしょう」
城間龍昇「金、貸してくれ」
三守累「はい?」
城間龍昇「ホテルに泊まるのに金が必要なんだ なんなら利子付けても良いぞ」
三守累「・・・返せる予定の無い人には貸しません」
城間龍昇(こいつ、何怒ってるんだ?)
三守累「よく分かりました。・・・他の人には 泊まらせろと迫りながら、僕には金を 貸せというんですね。なるほど」
三守累「もしかして・・・僕の家に泊まったら 僕に襲われると思っている、とか」
城間龍昇「えっ?」
三守累「いつもは友情だ、気のせいだなんて 突っぱねてるくせに・・・ 本当は意識してるんですね。僕の事」
城間龍昇「そ、そんなことねえって! 俺はお前の事 なんてぜーんぜん意識してないしっ!」
城間龍昇「第一俺の方が背が高いんだし 襲われるなんてナイナイ」
三守累「じゃあ見せてくださいよ。僕の家に 泊まっても全然意識してないってところを」
城間龍昇「おお! もちろん望むところだっ! お前に 襲われても返り討ちにしてやるからな?」
三守累「男に二言はありませんからね」
城間龍昇(ん? ・・・これって、もしかして・・・ 累の思うつぼか?)

〇ファストフード店の席
  累は仕事に戻り、龍昇も仕事をしてから
  再度落ち合う事になった。
城間龍昇(・・・とりあえず住まいは どうにかなったし。 オレも仕事まで時間があるな・・・ん?)
  ズボンのポケットに入ったままのカード。
城間龍昇(開店の準備をしてるって言ってたな。 ここから結構近いし・・・行ってみるか?)

〇お花屋さん
石井直人「龍昇っ! 家が火事になったって 聞いたんだけど、無事だったんだね! 電話も通じなかったから心配したよ」
  開店準備に追われる
  『フローリスト・スナオ』
  段ボールの積み重なった店内に
  龍昇が顔を見せた途端、
  直人が大きな声を出して駆け寄ってきた。
  家を焼け出された話は既に
  アイル経由で伝わっていて
  直人達は心配していたらしい。
城間龍昇「悪い、スマホの充電が切れたまんまだったわ。はは、心配かけたけどなんとか無事だ」
大谷義彦「おまえなぁ・・・ そういう時こそ一番に連絡して来い」
  あきれ顔で直人の後ろから顔を出したのは
  大谷義彦(オオヤ ヨシヒコ)。
  このフローリスト・スナオの店主で
  直人の公私共々のパートナーだ。
石井直人「そうだよ、水臭いじゃないか。もし良け れば、ここで寝泊まりしても良いんだよ」
大谷義彦「ああ、俺たちはまだアパートを引き払っていないからここに住むのも当分先だし」
城間龍昇「いや、遠慮するよ。とりあえず当面の 泊まらせてもらえる家は決まったし」
石井直人「あっ! もしかして・・・三守さんの家?」
大谷義彦「三守? ああ、昨日ナオが見かけたって やつだろ? アイルから聞いてた・・・」
石井直人「そ、龍昇の噂の恋人のエリート警察官さん」
城間龍昇「恋人じゃねえって!」
大谷義彦「女運が無い奴だと思ってたが、 男運はあった訳か」
大谷義彦「同棲祝いにでっかい花輪でも 作ってやろうか」
  からかう義彦に龍昇は口先を尖らせる。
城間龍昇「うるせえ、同棲じゃなくて同居な。一時的なっ! ナオもそういう話を広めんなよ?」
石井直人「ふふ、はいはい・・・あ、電話だ。 ちょっと出て来るね・・・ もしもしフローリスト・スナオです・・・」
  直人が部屋の奥に消えて行くと
  義彦はそっと龍昇に耳打ちをした。
大谷義彦「・・・龍昇。――夕方、店に行くから」
城間龍昇「・・・直人に気付かれないようにな」
  直人の方を気にしながら
  龍昇は小声で頷いた。

〇ホストクラブの待機スペース
有坂祐樹「おはようございます、龍昇さん! はい、これ。プレゼントです」
  出勤早々
  ユウキは龍昇に大きな袋を渡す。
城間龍昇「なんだこれ?」
有坂祐樹「寝袋です。 うちに泊められないからせめてもと」
有坂祐樹「これがあれば公園でも 寝泊まり出来ますんでっ!」
城間龍昇「・・・ありがとう。だいぶ気の回し方が 違うと思うけどな。でもおあいにく様!」
城間龍昇「俺は今夜からタワーマンションの最上階の フロアの高級ベッドで寝る予定なんで これは慎んでお返しいたします」

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