17歳、夏、片思いを叶える。

卵かけごはん

#9:僕のせいで(脚本)

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〇ケーキ屋
西野 柊也(にしの しゅうや)「兄貴、カラメルソース美味かったな! また作ってくれよ!」
浅井 貢(あさい みつぐ)「作ってくれっていうかさ、 うちらが覚えないと!」
西野 柊也(にしの しゅうや)「ハッ、いいじゃねえか、 これだから優等生はつまんねえぜ!」
西野 咲也(にしの さくや)「はいはい二人とも。 浅井君、そんなに慌てなくて大丈夫」
西野 咲也(にしの さくや)「さっきのカラメルソースは、 お菓子作りの面白さが伝わればなあと 思って見せたものだからさ」
西野 咲也(にしの さくや)「アルバイトの2人が今できなきゃいけないものじゃないから、安心して!」
浅井 貢(あさい みつぐ)「はい、でも僕たちで出来るなら 何でもしますから!」
西野 咲也(にしの さくや)「そうだね・・・じゃあ、 2人に留守番頼みたいんだけど?」
西野 咲也(にしの さくや)「大口の発注があって、車で納品に行かなきゃいけないんだ。 2時間くらいかかるかも」
浅井 貢(あさい みつぐ)「はい、承知しました!」
西野 柊也(にしの しゅうや)「そうだ兄貴、シナモンロール売り切れてるから、帰ったら作んだろ?」
西野 咲也(にしの さくや)「うん、そのつもりだったけど」
西野 柊也(にしの しゅうや)「シナモンと粉砂糖、在庫なかったぜ。 俺買ってこようか?」
西野 咲也(にしの さくや)「柊也、気が利くようになったじゃない! じゃお願い。 浅井君、1人になるけど、店番いい?」
西野 咲也(にしの さくや)「カウンターに居てもらえればいいよ。 火元は全部切っていくから」
浅井 貢(あさい みつぐ)「はい、お任せ下さい!」
西野 柊也(にしの しゅうや)「ちゃんと留守番しろよ、子犬!」
浅井 貢(あさい みつぐ)「うっさいな、君に言われたくないって!」
浅井 貢(あさい みつぐ)「いってらっしゃいませ!」
浅井 貢(あさい みつぐ)「一人は初めてだな・・・ 一つでもできること増やして、 咲兄の役に立とう!」
浅井 貢(あさい みつぐ)「そうだ、さっき咲兄が見せてくれた カラメルの練習してみよっか!」
浅井 貢(あさい みつぐ)「プリン作るのに使うはずだったのに食べちゃったし、 あれなら僕でもできるかも!」

〇広い厨房
浅井 貢(あさい みつぐ)「ええと、ガスの元栓開けて・・・ 鍋は、これ」
浅井 貢(あさい みつぐ)「水とグラニュー糖だったよね!」
  カチャッ、ボウッ
  フツフツ、ジュジュジュッ・・・
浅井 貢(あさい みつぐ)「やっぱお店のコンロは火力強いな―」
  「こんにちわ~!
  あら、誰もいないのかしら?」
浅井 貢(あさい みつぐ)「あ、お客さん! は~い、今行きま~す!」
  フツ、フツフツフツ・・・
  ジュジュジュッ・・・

〇ケーキ屋
浅井 貢(あさい みつぐ)「お待たせしました~ いらっしゃいませ!」
お隣・久保田のおばさん「あら、あなた新人さん?」
浅井 貢(あさい みつぐ)「そう、ですが?」
お隣・久保田のおばさん「柊ちゃんの同級生ですって? あたし、隣の電気屋なのよ、久保田デンキ店」
お隣・久保田のおばさん「咲ちゃんから聞いたわ。 優秀な子が来てくれたって」
浅井 貢(あさい みつぐ)「そ、そんな・・・」
お隣・久保田のおばさん「あなた、小学校の時この辺に住んでた?」
浅井 貢(あさい みつぐ)「はい、でもどうして?」
お隣・久保田のおばさん「もうずうっと前だけど、 あなたに似た子がよく、 ランドセルしょってこのお店覗いてたから」
お隣・久保田のおばさん「あたしずっと店先にいるから、 あの子また来てるって思ってたんだけど。あなたじゃない?」
浅井 貢(あさい みつぐ)「うっ──!」
浅井 貢(あさい みつぐ)「嘘―! 何で覚えてて、しかもバレてんの~!?」
お隣・久保田のおばさん「おばさんってのはさ、自分の子供じゃなくてもよく見てるもんなの! アハハハハ!」
浅井 貢(あさい みつぐ)「そ、それ絶対内緒にして下さい! 店長と柊也には!」
浅井 貢(あさい みつぐ)「やばい、恥ずかしい、 恥ずかしすぎる~!!」
お隣・久保田のおばさん「高校生になってアルバイトに来るなんて、よっぽど好きだったのね、このお店」
浅井 貢(あさい みつぐ)「は、はい・・・ あの、それで、お求めのものは・・・」
お隣・久保田のおばさん「そうそう、フルーツタルトと、 焼き菓子詰め合わせ・10個入りのを お願い」
  ジュジュジュッ・・・ボウッ・・・
  モクモクモク・・・
浅井 貢(あさい みつぐ)「お買い上げありがとうございます!」
お隣・久保田のおばさん「柊ちゃん、ホントはいい子だから 仲良くしてあげてね~」
浅井 貢(あさい みつぐ)「うう・・・」
浅井 貢(あさい みつぐ)「ふう、まさか、昔の僕を覚えてる人がいるなんて・・・」
浅井 貢(あさい みつぐ)「え!?何この音!?」
浅井 貢(あさい みつぐ)「しかも・・・焦げ臭い?」
浅井 貢(あさい みつぐ)「嘘、この煙って──」
浅井 貢(あさい みつぐ)「ハアッ、、ハアッ・・・」
  ドクッ、ドクッ、ドクッ──
  鍋の火、つけっぱなしだった―

〇町の電気屋
お客・斉藤さん「・・・ちょっと久保田さん! 火災警報器の音じゃない? お隣よ!」
お隣・久保田のおばさん「え? さっきお菓子買いに行った時は 何でもなかったわよ?」
お客・斉藤さん「でも、焦げる匂いがするじゃない!!」
お隣・久保田のおばさん「大変、アルバイトの子がお店にいるのよ!」
お客・斉藤さん「早く、119番!」

〇広い厨房
浅井 貢(あさい みつぐ)「どうしよう、どうしよう! 火事起こしちゃった──!」
浅井 貢(あさい みつぐ)「ハアッ、ハアッ・・・」
  どうし、よう―

〇病室
浅井 貢(あさい みつぐ)「あれ、ここ・・・」
貢の母「貢!?起きたのね?」
  ハッ―!!
浅井 貢(あさい みつぐ)「ハア、ハアっ! どうしよう、どうすれば!」
浅井 貢(あさい みつぐ)「お店火事にしちゃった! どうしよう、どうしよう!」
貢の母「落ち着いて!無事だったんだからいいの!」
西野 咲也(にしの さくや)「浅井君!!」
浅井 貢(あさい みつぐ)「店長、店長っ! ごめんなさい、僕・・・ 僕、とんでもない事を―」
浅井 貢(あさい みつぐ)「!? 母さんっ!!」
貢の母「あんた、うちの子をどうしてくれるの? 店空けて貢を一人にするって、 無責任すぎでしょ!?」
西野 咲也(にしの さくや)「すみませんっ!」
浅井 貢(あさい みつぐ)「母さんやめて!」
貢の母「貢は黙ってなさい!」
貢の母「あんたのせいで貢の人生どうなるの? 勉強の妨げどころか、命落とすとこだったじゃないの!」
貢の母「お前が死ね!」
西野 咲也(にしの さくや)「本当に申し訳ありません!」
西野 咲也(にしの さくや)「私の責任で―!」
浅井 貢(あさい みつぐ)「やめろよ母さん!」
貢の母「頭下げられてもねえ? 何回殺しても足りないんだから!」
西野 咲也(にしの さくや)「うっ―!!」
浅井 貢(あさい みつぐ)「店長!!」
貢の母「ハアッ、ハアッ・・・ 貢、ママ一旦家に戻るから。 あなたの荷物持ってくるわ」
貢の母「明日は入院して経過を見るそうよ。 これで分かったでしょう?」
貢の母「ママとパパの言う通りにしないと、 こういうことになるのよ!」
西野 咲也(にしの さくや)「本当に、申し訳・・・ありません―」
浅井 貢(あさい みつぐ)「店長!僕が悪いんです!」
浅井 貢(あさい みつぐ)「早く何かできるようにしなきゃって思って、 勝手にコンロ使って、カラメルの練習したんです! そしたらお客さんが来て―」
浅井 貢(あさい みつぐ)「僕が勝手なことしたせいです! 謝っても遅いけど!」
西野 咲也(にしの さくや)「ううん、浅井君を一人にした私の責任だよ。 柊也とだったら、こういうことにはならなかっただろうし」
西野 咲也(にしの さくや)「店の方も安心して。 鍋からの煙だけで、燃え広がった訳じゃないから」
西野 咲也(にしの さくや)「店の設備は直せるけど、 浅井君の命に何かあったら私は―」
西野 咲也(にしの さくや)「とにかく、無事でよかった──」
  咲兄がそう言って、
  僕の手に触れた時だった。
西野 咲也(にしの さくや)「痛っ―」
浅井 貢(あさい みつぐ)「店長!?」
西野 咲也(にしの さくや)「大丈夫、浅井君に比べたら何てことないよ。 親御さんの気持ちはもっともだしね」
西野 咲也(にしの さくや)「・・・じゃ、今日は失礼するね」
浅井 貢(あさい みつぐ)「どうして咲兄は、こんな時まで優しいの?」
浅井 貢(あさい みつぐ)「人の事ばっか気にして一つも怒らない  勝手なことして大迷惑かけたのは僕なのに!」
  僕、どうしよう、どうすれば―!!

次のエピソード:#10:残酷な事実

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