迂回

神社巡り

エピソード1(脚本)

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〇教室
相沢 恭子「何を言ってるの!? 私は何も知らないわ・・・」
生徒A「だって、先生はここの教師ですよね!?」
相沢 恭子「違いますよ・・・私はこの学校を覗きに来た只の不審者です・・・」
生徒A「・・・・・・・・・」
  私は相沢京子・・・世間のレールから外れた挙動不審な引きニートだ・・・
  今日はこの学校が気になり覗きに来たら先生に間違われている・・・
  最近の学校の警備は厳重だ・・・潜り込むのにかなり苦労した・・・
生徒A「あなた誰なんですか・・・!?」
相沢 恭子「だから・・・不審者です・・・サッ」
  しかし私の事を何故教師だと思ったのだろう・・・今のご時世こんな教師が居たとしたらすぐに槍玉に挙げられてしまう・・・
  面白かったので学校の中を暫く探索することにした・・・

〇学校の廊下
相沢 恭子「ん? あれは・・・」
  一人の男の子が数名の男の子たちに取り囲まれてボコられている・・・
相沢 恭子「あなた達・・・何をしているの・・・!?」
  私が声を掛けると取り囲んでいた男の子たちは逃げて行った・・・
相沢 恭子「あなた・・・泣いてるの・・・?」
生徒B「いいえ・・・泣いてなんかいません!!」
  少年は明らかに泣いているのに否定した・・・いじめ問題は複雑なので私は見て見ぬふりを決め込むことにした・・・
相沢 恭子「そう・・・」
生徒B「僕は苛められてなんかいませんよ!!」
  少年は聞いてもいないのに苛められていないと断言した!!私に何を求めているのだろうか・・・?正直めんどくさい・・・
  じゃあ頑張ってね・・・と言おうとしたがどうでも良かったので本音を言ってしまった・・・
相沢 恭子「まあ・・・頑張らなくても良いけどね・・・」
生徒B「うわーん!!先生ー!!」
  少年の心に私の言葉の何が引っかかったのだろうか!?私は珍しく困惑した・・・
相沢 恭子「ここで大きな声を出されるのはちょっと・・・こっちに行きましょう・・・」

〇学校の屋上
生徒B「僕はもう毎日が苦痛で・・・学校に来たくありません・・・」
  少年は聞いてもいないのに今までの出来事を淡々と語り始めた・・・そして今どんなに辛いのかを・・・
  正直、私は関わりたくは無かった・・・私も学生の頃に苛められてから引きこもり生活が始まっている・・・
  アドバイスできる事など何もない・・・
相沢 恭子「じゃあ・・・来なければ良いわ・・・」
  私は思った事を言った・・・
生徒B「な、何を・・・」
相沢 恭子「だって辛いんでしょ・・・わざわざ辛い思いまでして学校にきてどうするの?」
生徒B「行かないなんて言ったら親が心配するし苦しむじゃないですか!?」
相沢 恭子「まあ、そうだけどね・・・ただ行かないと言うのでは無く模索してみたら?」
生徒B「模索?」
相沢 恭子「そう・・・行かないだけじゃ無くて、その後どうするかを貴方なりに模索するの・・・」
相沢 恭子「学校に行かないなんて今の世間でも簡単には誰も認めてくれないわ・・・」
相沢 恭子「それを認めさせるには学校に行かない後の貴方の行動が重要なのよ・・・納得させる程の計画は今の貴方にはないでしょう・・・?」
相沢 恭子「学校に行くふりをして街をぶらつきながらでも模索しなさい・・・図書館に行っても良いわ・・・」
相沢 恭子「とにかく皆が納得して自分の将来に繋がる様な事を考えて纏めるのよ・・・そして説得するの・・・」
相沢 恭子「重要なのは・・・学校に行かない・・・親を納得させる説得力がある・・・将来に繋がる道である・・・絶対に後悔しない・・・」
  少年は今までのこんな事を言われた事はなかったのか目を丸くしていた・・・
相沢 恭子「これは貴方自信にしかできない事よ・・・将来の為にすぐにでも行動しなさい・・・時間は待ってくれないの・・・」
  半分以上は私自身に言っていた・・・今、引きニートで当時の私は将来を甘く考えていた・・・
  嫌な思いまでして学校に通っても決してプラスにはならないが、問題はその後だった・・・
  学校に行かずにその後どうするか全く考えていなかった私に待っていたのは自堕落な生活・・・
  世間から見れば学校に行ってる筈の年齢の娘が家に居たり街を徘徊してるのだから見る目が変わってくる・・・
  焦ってはいたが、漠然とした考えは纏まらず只時を過ごしていた・・・時間はいくらでもあると思っていた・・・
  そして近所では噂の的になり、世間からは浮いた存在になる・・・私は外に出るのが恐くなり引きこもりになった・・・
  あの時、将来の道を決めて自分に自身を持てていたら何か変わってたのではないだろうか・・・?
  少なくとも自分の進む道をがむしゃらに進んでいれば周りの声など聞こえなかったろう・・・
  そして叶わなくてもそれは何かに繋がった筈だ・・・
相沢 恭子「貴方が思っている以上に世間は厳しいけど・・・道は一つではなく、頑張り次第でいくらでも切り開けるわ・・・」
生徒B「はい・・・先生・・・」
  説得力のまるでない私の話に何故か少年は納得して帰っていった・・・
???「うふふふ・・・」
相沢 恭子「誰!?」
生徒C「先生、面白いね・・・」
相沢 恭子「話を聞いてたの・・・?」
生徒C「学校に来なければ良い・・・なんて教師の言う言葉?」
  チッ・・・教師じゃないのがバレたか・・・?
相沢 恭子「何が言いたいのかしら・・・?」
生徒C「先生に相談があります・・・」

〇学校の部室
  私は何故か女性徒の相談を受ける事になった・・・自分の人生すら決断できない私に相談するなんて・・・気が知れない・・・
生徒C「実は私・・・妊娠してるんです・・・」
  何故、私にそんな大事な事を相談する・・・
  私は今までの人生、彼氏なんか出来たことないし・・・ましてや処女なんですけど・・・
  そんな私にどんな回答を期待してるというの・・・?
相沢 恭子「そう・・・」
  気は動転していたが精一杯に虚勢をはった・・・
相沢 恭子「貴方はどうしたいの?」
生徒C「私は産みたいです・・・」
相沢 恭子「答えは決まってるみたいね・・・じゃあ、何か他に問題でも?」
生徒C「まず、相手が認めてくれません・・・」
相沢 恭子「認めないというのは・・・?自分が父親ではないと言ってるの?」
生徒C「はい・・・私は遊び人の様に振る舞ってはいますが、関係を持ったのは彼氏以外にはいません・・・」
生徒C「だけど彼氏は今までの振る舞いから他の男の子供じゃないかと疑っています・・・」
  自業自得じゃん・・・と思ったが口にしなかった・・・
相沢 恭子「自分の子供だとわかれば認めてくれそうなの?」
生徒C「どうでしょう・・・彼氏は臆病なところがあるから世間体とかも考えて認めてくれないかも・・・」
  結局、自分の子供では無いかも知れないと言い訳をして現実から逃げてるだけだろうか・・・?
  しかし、やった事には責任が伴う・・・
  幼いながらに子供を作った事が、これからどんな大変な苦労を背負う事になったとして責任は取らなくてはならない・・・
相沢 恭子「まずはお腹の子供が彼氏の子供だと認めさせなきゃね・・・彼氏はここの生徒?」
生徒C「はい・・・でも、私の話は聴いてくれない!!」
相沢 恭子「そうでしょうね・・・彼を連れてきなさい・・・」
  面倒な話に巻き込まれてしまった・・・大体、彼氏に認めさせる事など私には出来そうにない・・・
  しかしこれからの事をかんがえると彼氏の人間性を見極める必要がある・・・そうしなければ話は進まない・・・
彼氏「話しってなんすかー?」
  思った通りの男だった・・・上辺だけの虚勢を張ってカーストでは上位にいるものの面倒事にはかなり臆病なタイプだろう・・・
相沢 恭子「喜びなさい・・・貴方の赤ちゃんができたのよ・・・」
彼氏「な、何を・・・俺の子じゃねえし!!」
相沢 恭子「あなたの子よ・・・貴方と彼女の子作りで赤ちゃんができたの・・・」
彼氏「こ、子作りって・・・他の男とだってやってんじゃないすかね?」
生徒C「あなたの子よ・・・私、あなた以外とそんな事してないわ!!」
彼氏「どうだかねぇ~」
相沢 恭子「出来れば自分の事は有耶無耶になって欲しいと思ってるんでしょうけど・・・逃げていても解決しないわよ・・・」
相沢 恭子「何故だかわかる? やった事は自分が責任を取らなきゃいけないからよ!!」
相沢 恭子「やる事だけやって自分は知らないなんて話は通らないの!!」
相沢 恭子「浮ついた気持ちで行為に及んだのだろうけど、責任が取れなきゃそういうことはするな!!」
彼氏「チッ・・・わかったよ・・・やった事は認めるよ・・・でも、俺の子である確証がない・・・」
相沢 恭子「そう・・・じゃあ良いわ・・・貴方の人間性を見たかっただけだから・・・」
彼氏「に、人間性って・・・」
相沢 恭子「貴方はもう帰って良いわ・・・1人でも産むつもりはあるの・・・?」
彼氏「か、帰って良いって・・・ ここに居るよ・・・」
生徒C「はい・・・1人でも育てていきます・・・」
相沢 恭子「1人で産む、1人で育てると言ったって周りの大人たちは素直に認めてくれないわ・・・」
相沢 恭子「きっと相手が誰なのかを追求して、下ろす方向にあれやこれやと持って行くでしょうね・・・」
彼氏「それじゃあ結局、俺も巻き込まれるって事!?」
相沢 恭子「当然でしょう!! やった事には責任が伴うのよ!! 話を聞いてたの!?」
生徒C「私それでも産みたいんです!!」
相沢 恭子「親や周りを説得する材料はあるの? ああしたい・・・こうしたい・・・では絵空事でまともに話を取り入って貰えないわよ・・・」
生徒C「私の人生でやっと掛け替えのないものを手に入れた気がするんです・・・」
生徒C「どんな事をしてでもこの子だけは守っていきたいと思っています・・・」
彼氏「・・・・・・・・・」
相沢 恭子「そう・・・それだけの覚悟があるなら何も言わないわ・・・思った通りにやって見なさい・・・」
  多分、彼女が思っている以上に困難な事が待ち構えているだろう・・・しかし子供を思う彼女の決意に嘘は無い・・・
  どんなに苦しくてもその決意があれば乗り越えていける・・・そんな気がした・・・
相沢 恭子「頑張りなさい・・・」
生徒C「先生ー・・・」
彼氏「・・・・・・・・・・・・」
  現実から目を背けている彼氏も彼女の決意は心に響いてる筈だ・・・私は淡い期待を寄せていた・・・

〇田舎の学校
  何か今日は色んな事に巻き込まれてしまった・・・気が付いたら生徒の下校時間を過ぎている・・・
生徒A「あっ!!」
相沢 恭子「うわぁ・・・(ヤバ~)」
生徒A「あなた結局、誰なんですかー!?」
相沢 恭子「だから・・・引きこもりの不審者です・・・」
生徒A「警察に通報しますよ!!」
相沢 恭子「やめてください・・・」
生徒A「とりあえず職員室まで一緒に来てください・・・!!」
相沢 恭子「嫌です・・・サッ」
  ああ・・・懐かしの我が母校・・・苛められて行かなくなったが私は元気で生きている・・・またいつか逢う日まで・・・
  END

コメント

  • 親でもなく友人でもなくカウンセラーでもなく、部外者(不審者?)である恭子が一番親身になって生徒の相談に答えてあげているというのはなんとも皮肉な話ですね。このような役割の大人は若い人に必要だけど作ろうと思ってできるものではないので、本当に難しいです。

  • 学校には先生と生徒…
    顔はど知らない人がいないわけではない。セキュリティーの問題があるので、部外者が入ることはないものの…相談しやすい人が先生とは限らない。相談者たちがアドバイスにどうこたえていくか。

  • 主人公の彼女は引きこもっている間に沢山の本を読んだか、もともと感受性の強い人だったのか。こうして若い世代の悩みを抱えた子達が自然と彼女に打ち明けたくなるのは、きっと何か特別なオーラを感じたからでしょうね。

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