エピソード13(脚本)
〇一軒家
〇学生の一人部屋
星桐彦「どの本だったっけ・・・」
夏川乙女「いきなり何なの。 ちゃんと説明してくれなくちゃ分からないわ」
星桐彦「見た方が一発で・・・あ、あった!」
夏川乙女「!! これ、私!?」
星桐彦「そう。と、俺。この写真のこと、覚えてる?」
夏川乙女「・・・・・・」
首を横に振る乙女。
星桐彦「でもこれ、きっと今年の春だよな」
夏川乙女「そんな・・・写真も、鍵も、全然覚えてない」
夏川乙女「私たち、何を忘れているの。 他にも忘れてること、あるんじゃないかしら」
星桐彦「で、その鍵」
夏川乙女「え?」
星桐彦「なんで夏川が持ってるかって・・・」
乙女をじっと見つめる桐彦。
夏川乙女「やめて」
目をそらす乙女。
星桐彦「え?」
夏川乙女「そういう風に見るの、やめて」
後ずさる乙女。
星桐彦「ちょっと」
乙女の腕をつかむ桐彦。
夏川乙女「せっかく誰にも言わず、何の未練もなく、ここからいなくなろうとしてるのに・・・台無しじゃない」
星桐彦「誰にも? それって引越しのこと?」
夏川乙女「・・・・・・」
星桐彦「なんで?」
夏川乙女「・・・挨拶とかそういうの、面倒くさいもの」
夏川乙女「言わなければ日常のまま・・・今日の続きみたいに終わるのに」
星桐彦「なんだそれ・・・てことは、クラスの誰も、学校のみんな誰も知らないってこと?」
夏川乙女「・・・先生はご存知よ」
星桐彦「先生って。だってイギリスだろ? 急に夏川がいなくなったらみんな驚くよ」
夏川乙女「そうかもしれないけど、でも別に何も変わらないわ」
星桐彦「変わるよ!」
夏川乙女「変わらないわよ」
夏川乙女「今の時代、会えなくても、連絡手段はたくさんあるんだから」
星桐彦「そんなの、今みたいに毎日会えるのとは、全然違うじゃん」
夏川乙女「・・・・・・」
星桐彦「昨日、”心の底から明日になって欲しいと思えなくなってるかも”って言ってたの、そういうことだろ?」
夏川乙女「それは」
星桐彦「このまま、明日が来ないで欲しいって思ってしまうんだろ?」
星桐彦「このまま変わらないでいて欲しいって」
夏川乙女「・・・・・・」
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