ひとり選んで■■してください

木澤有希子

第四話 破綻(脚本)

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木澤有希子

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〇男の子の一人部屋
江藤拓真「ケガをさせる・・・全治六カ月以上・・・!」
  頭に血が集まって、顔が熱くなった。なのに体は冷たくなって、血の気が引くというのはこういうことなのかと思った。
江藤拓真(階段から落とすよりも、もっと重いケガをさせなきゃいけない)
  そんなことして大丈夫なのか、という思いと同時に、やらなきゃアズと別れることになる、という思いが湧く。
江藤拓真(アズと別れたくない・・・)

〇工事現場
江藤拓真(あれが必要だ・・・。まずは誰にも見つからずに入らないと・・・)
  駅前でやっている工事現場には誰もいないようだった。
  柵をくぐって中に入り、目当ての物をこっそり持ち出した。
江藤拓真(用意できた・・・。これで、ニュースで見たあのやり方をやれば・・・)

〇住宅街の道
  人通りのない住宅街で、工事現場から持ってきたワイヤーを電柱に巻き付けた。
  もう一方を家の柵に巻き付け、簡単にはほどけないことを確認した。
江藤拓真(あとは・・・あいつが来ればいいだけだ)
  この道を塾帰りに通る、と言っていたクラスメイトがいた。
  家の陰に隠れて待っていると、自転車の音が近づいてきた。
江藤拓真(うまく・・・いくか・・・?)
  自転車はスピードを落とさず、ワイヤーが張ってある場所に近づいて行く。
  そして──
  ガシャン!
  大きな音がしてから見に行くと、自転車に乗っていたクラスメイトは道に投げ出されていた。
江藤拓真(やった・・・うまくいった!)
  急いで携帯を見ると『指令達成』の文字は出ていない。
  そうかもしれないとは思っていた。
江藤拓真(やっぱり足りなかったか・・・)
  ワイヤーの他に、もう一つ持ってきていた物を持って、倒れているクラスメイトに近づく。
クラスメイト「う・・・っ、うぅ・・・」
  クラスメイトは目を閉じて、苦しそうにうめいている。
  これなら俺がやったとバレる心配がない。工事現場から持ってきた木材で、クラスメイトを殴りつけた。

〇教室
夏海アズ「拓真、誕生日いつ? 予定あけるから、一緒に過ごそうね」
  アズはそう言って、俺にぴったりとくっついた。
  クラスメイトから見られているのに、アズは気にしないようだった。
江藤拓真「え・・・あ、うん。そうだな」
夏海アズ「もう・・・アタシの話、ちゃんと聞いてる?」
  アズはさらに体をくっつけてくる。アズの席は、俺の隣になった。
  そこがいいとアズが言ったからだ。
江藤拓真「ちゃんと聞いてるよ。・・・で、なんの話だっけ?」
夏海アズ「もーっ。ちゃんと聞いてないじゃん」
江藤拓真「嘘、嘘。冗談だよ」
夏海アズ「・・・もっと拓真と一緒にいたいな・・・」
夏海アズ「仕事行ってたら、拓真と一緒にいれないじゃん」
  アズが俺に抱きついてきた。クラス中が、俺たちに注目しているのがわかった。
  顔がニヤけそうになるのを抑える。
江藤拓真「こら、みんなが見てるぞ」
夏海アズ「そんなの関係ないじゃん」
江藤拓真「もうすぐ授業始まっちゃうだろ?」
  そう言うと、しぶしぶ、という感じでアズは離れた。
  最高だ。
  この教室の中に、俺に対して懐疑的な視線を向けている人物がいることに、俺はまったく気づかなかった。

〇学校の屋上
江藤拓真「・・・話ってなに?」
  昼休み、俺は比嘉に呼び出された。
比嘉恭一「江藤、君がなにかしてるんじゃないか?」
江藤拓真「俺がなにかしてる? どういうこと?」
比嘉恭一「江藤のまわりでおかしな事が起き続けてる」
比嘉恭一「急に成績がよくなったり、スポーツが得意になったり・・・。 明らかにおかしいだろ」
江藤拓真「なにそれ嫉妬? 自分が負けたからって嫉妬してんの?」
比嘉恭一「そんなことで、嫉妬するわけないだろ」
江藤拓真「あー、はいはい。 イケメンはいつも注目されてたもんな。 俺の方が注目されて嫉妬しちゃった?」
  比嘉には一度、教室から出てきたところを見られたことがあるけど、あれからなにかする時にはもっと気をつけている。
江藤拓真(俺がやったなんてわかるはずがない。 難癖つけてるだけだ)
比嘉恭一「・・・父さんから話を聞いたんだ」
江藤拓真「は? お前の父親がどんな関係ある・・・」
江藤拓真(そうだ・・・比嘉の父親は警察の人だ・・・)
比嘉恭一「オレたちのクラスでは不審なことが起き過ぎてる」
比嘉恭一「誰かの物が無くなったり、壊されたり・・・」
江藤拓真「そんなつまんないこと、警察が捜査するわけ・・・」
比嘉恭一「この間は、階段から落ちて、クラスメイトがケガをした」
比嘉恭一「その件は、事故だと思われて、騒ぎにならなかったけど・・・」
江藤拓真(あんなの事故だろ! 俺はちょっと背中を押しただけだ)
比嘉恭一「昨日、クラスメイトが自転車に乗っていて転倒した件は、ただの事故じゃないと警察は見ているよ」
江藤拓真(なにもわかるはずがない・・・! 誰にも見られなかったし、後始末もした!)

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