ひとり選んで■■してください

木澤有希子

第五話 成功者(脚本)

ひとり選んで■■してください

木澤有希子

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〇学校の屋上
  俺に突き飛ばされた比嘉の頭から、血が流れている。
  血はコンクリートの上にどんどん広がっていく。
江藤拓真「俺のせいじゃない・・・。 比嘉がおかしなこと言ってくるから!」
  ここにいたらまずい。
  走ってその場を離れた。

〇大きな木のある校舎
江藤拓真(くそ・・・! どうしてこんなことに・・・!)
  学校を出てからサイトを開いた。
江藤拓真(なんとかしなきゃ・・・なんて入力したらいい? どうしたら助かる?)
  サイトに、『全部なんとかしてくれ』、と入力した。
  指令が表示された。
  『クラスメイトからひとり選んで殺してください』
江藤拓真「殺す!? また殺せって指令かよ! そんなことできるはずないだろ・・・!」
江藤拓真「・・・でも殺さないと捕まる! どうすればいいんだよ!」
  とにかく走った。逃げたかった。

〇駅前広場
  ただ走っていたら、駅前にいた。
  いつの間にか夜になっていた。
  パトカーのサイレンが聞こえた。
  急いで路地裏に隠れる。

〇ビルの裏
江藤拓真(はやく殺さないと捕まる・・・!)
江藤拓真(いや、殺すなんてダメだ! ・・・なに考えてんだ、俺・・・)
江藤拓真「でも・・・捕まりたくない・・・。 絶対に捕まりたくない・・・捕まりたくない・・・!」
  比嘉が俺に突き飛ばされたと証言したら、俺は警察に捕まってしまう。
江藤拓真「なんで俺が捕まらないといけないんだよ・・・。おかしいだろ・・・」
  なんとかするにはやっぱり、サイトからの指令を達成するしかない。
江藤拓真「あ・・・! 制限時間!」
  あわててサイトを見る。まだ制限時間は過ぎてなかった。
  だけど、あと十五分しかない。
江藤拓真「そんな・・・。これじゃクラスメイトを見つけて、殺すなんて無理だ・・・」
  自分を呼ぶ声が聞こえた気がした。
  しゃがみこんで体を隠す。
江藤拓真「誰だ・・・警察・・・?」
夏海アズ「拓真ー! どこにいるのー!」
  俺を探していたのはアズだった。
  アズは声を張り上げて、必死に俺を呼んでいる。
江藤拓真「アズ・・・!」
江藤拓真(あいつは俺に夢中だ・・・。呼べば、喜んでくるはずだ・・・)
  比嘉を刺したナイフは、逃げる時に持ってきていた。
  少し血の付いたナイフを見つめる。
江藤拓真「押さえつけて刺せば・・・!」
江藤拓真「・・・だ、ダメだ! なに考えてるんだ!アズは俺の恋人だぞ!」
  自分が考えたことがおそろしい。
  アズを殺そうと思うなんて。
江藤拓真「アズ・・・ごめん・・・!」
  俺のことが大好きだと言ったアズ。
  俺と離れたくないと言ったアズ。
  ぎゅっと抱きしめられた感触を忘れるはずがない。
  涙があふれてきた。
江藤拓真「もう会えないかもしれない・・・でも、俺もアズのことが大好きだよ・・・」

〇工事現場
  泣きながらアズのことを見送った後、路地裏を出て、ふらふらと歩きだした。 
  制限時間はもう残り少ない。
江藤拓真「この指令が達成できなかったらどうなるんだ・・・?」
  前に『クラスメイトからひとり選んで殺してください』という指令が来た時、俺は達成できなかった。
  そしたら、満点を取ったはずの小テストが、悪い点数を取ったことになってた。
江藤拓真(今回はどんなことが起きるんだ? 今まで叶えてもらった願い事はなくなるんだろうな・・・)
江藤拓真(そして悪い結果だったってことになる・・・)
  それを考えただけで、喉を押さえつけられてるような感覚になる。
江藤拓真(他にも、なにか起きるんだろうか・・・。 今までおいしい思いをしてきた分のなにかが・・・)
江藤拓真「制限時間がもうすぐなくなる・・・」
男「おい! あんた危ないぞ!」
  急に怒鳴り声のようなものが聞こえてきた。
  思わずまわりを見回したけど、危ないものなんてなにもない。
男「なにやってんだ! 上だよ、上!」
江藤拓真「・・・上?」
  声にうながされて上を見ると、なにかが揺れている。
  それが、工事現場から落下しそうになっている鉄骨だと気づいた時には、俺に向かって鉄骨が落ちてきていた。
江藤拓真「え・・・」

〇黒
  鉄骨はゆっくり落ちてきているように見える。体は動かなかった。
  鉄骨が落ちてくるのをただ見ている。
江藤拓真「ぶつかる・・・俺、死ぬのか・・・」
江藤拓真「こんなことなら、なんでも願い事が叶うサイトなんて使わなければよかった・・・」
江藤拓真「こんなことになったのは、自分だけおいしい思いをしたい、って考えたからだ・・・」
江藤拓真「俺、バカだ。自分ならうまくやれるなんて思って・・・。全然ダメだった」
江藤拓真「やり直したい・・・でも、後悔しても、もう遅い・・・」
  鉄骨が降ってきて、俺にあたった。

〇工事現場
  だけど、俺は生きていた。
江藤拓真「・・・はぁっ、はぁっ・・・。たっ・・・助かった・・・!?」
  鉄骨は、ギリギリ俺にあたらなかった。
  足の力が抜けて、しゃがみこんでしまう。
江藤拓真(絶対、ダメだって・・・死ぬと思った)

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