排斥or相席

トルネイド斉藤

エピソード1(脚本)

排斥or相席

トルネイド斉藤

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排斥or相席
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〇教室の外
須田「おはよう、佐々木さん。今日も早いね。水やり?」
佐々木「あ、須田君、おはよう。係の仕事だから・・・・・・」
須田「俺は挨拶当番。全く、他の人より1時間も早く来いだなんて酷い話だよ・・・」
須田「でも佐々木さんが頑張って水やりしてるのに、俺だけ愚痴なんて言ってられないよな!」
佐々木「ふふ、そんなことないよ」
須田「やべ、俺行かないと!じゃあね!」
佐々木「うん、じゃあね・・・」
佐々木(いっぱい話せた・・・)
佐々木「無口な私にも話しかけてくれて、須田君って優しいなぁ・・・」

〇教室
須田「俺、東中の須田って言うんだ。よろしくね!」

〇教室
須田「隣のクラスの奴から聞いたんだけど、今度の小テスト、これが出るんだって!」

〇教室
須田「昨日の英語の宿題、難しかったよね・・・ もしよければ答え合わせしない?」

〇教室の外
  私は須田君が好きだった。
  ずっとこんな関係が続けば、願わくば付き合えたら。私は密かに願っていた。

〇教室
  数日後
先生「学年歴を見た奴は知っていると思うが、うちの高校は6月の真ん中に文化祭がある!」
先生「各クラスで出し物をする訳だが、今から内容とか実行委員とかを決めてもらう。 じゃあ須田。あとは任せるぞ!」
須田「はい!」
須田「えっと、まずは実行委員からかな? 立候補してくれる人ー?」
佐々木(もし実行委員になったら、須田君と一緒になれるかな?)
児江「うち、実行委員やりまーす!」
佐々木(えっ・・・!?)
先生「児江か!それなら安心だな!」
須田「じゃあ女子は児江でいいかな」
佐々木(っ!手、挙げないと・・・)
先生「じゃあ男子も決めてくれ」
佐々木「あ・・・」
須田「やってくれるよーって言う人ー?」
一同「・・・」
先生「須田、よろしくな!」
須田「・・・はーい」
児江「よろしくー!」
  クラス全体が沸き立つ。
  須田君の隣では児江という女が笑っていて。締め付けられる心臓を他所に、私も無理やり口角を捻じ上げた。

〇教室の外
佐々木「あの・・・今日の数学難しかったから教えてほしいんだけど・・・」
須田「えっと、俺にわかるとこなら」
須田「どれどれ・・・」
児江「須田!このあと文化祭実行委員の集まり遅刻するよ!?」
須田「そうだった!ごめん、また明日な!」
児江「ささちゃん、マジゴメン!」
佐々木「・・・」
佐々木「・・・チッ」
  あれからあの女は実行委員という建前で須田君に近づいてきた。
  聞けば小学校からの付き合いらしい。恵まれた環境にありながら、なぜ私から須田君を遠ざけるのか。
  あの時手を挙げなかった自分も悪いのはわかっている。でもそれ以上にあの女が妬ましくて仕方がなかった。

〇古びた神社
  怒りや妬みを発散できぬまま彷徨っていると神社を見かけた。
佐々木(須田君からあの女を引き剥がせますように・・・)
佐々木「はぁ・・・」
???「おい、そこの嬢ちゃん」
佐々木「だ、誰ですか!?」
売人「ソイツは言えねぇが、 嬢ちゃん・・・その怨み、晴らしたいか?」
佐々木「・・・私、お金持ってないですよ」
売人「試供品さ。君にはコイツのテスターになってもらいたい」
佐々木「・・・なんですか、これ」
売人「こういうモンさ」
佐々木「ッ!!」
売人(怪人態)「見てろ」
売人「・・・んで、こうすりゃ戻る。嬢ちゃんも使ってみな」
佐々木「・・・」
佐々木(怪人態)「これが私・・・ 何かが湧き上がってくるみたい・・・」
売人「ああ、上出来だ! よく似合ってるぜ、って言われても嬉しかねぇな、ハハ」
売人「怪人の力がありゃ大抵のことはできる。 ま、溺れねぇ程度に上手いことやってくれや」
売人「あばよ!」
佐々木(怪人態)(これで須田君に群がる悪い虫を駆除できる・・・)
佐々木(怪人態)(怪人の噂に怯えるフリをすれば一緒に帰れちゃうかも・・・)
佐々木「ふふ、楽しみ・・・!」
  彼は渡さない。
  化け物になってでも。

〇住宅街
  願うだけだった私は、変身した事によって背中を押され、行動を起こせるようになった。
  あの女への牽制もあるけど、まずは須田君を見守ることから始めた。
須田「〜♪」
佐々木(怪人態)(ふふ、今日も二人きり・・・)
佐々木(怪人態)「危なかった 話すのには心の準備が・・・」
  須田君を見守ったり、近づいてきた女を付け回したり。怪人とはかくも便利なものであった。

〇教室
須田「いやー、悪いね。手伝わせちゃって。助かったよ」
佐々木「ううん。私から言ったことだし・・・」
佐々木「今日の配布物いっぱいだったし・・・」
須田「文化祭関係のと、課題の模範解答と、学年だよりに次週の課題プリント、不審者注意・・・へー」
佐々木「・・・私、最近誰かにつけられてる気がするの」
須田「それは怖いね・・・」
佐々木「だからしばらく一緒に・・・」
児江「須田ー、週末ホームセンター行かない?」
  児江は私が夜な夜なプレッシャーをかけているというのに、相変わらず能天気に割り込んできていた。
須田「お化け屋敷やるって決まっただけで他は何も分からないだろ?」
児江「でもさ?事前に何がいくらするって分かればなんか予算内でイイ感じに計画立てれるじゃん?」
須田「なるほどなぁ・・・」
須田「確かに大事だけど今週課題重いだろ。どうすんだよ?」
児江「それは・・・二人でやればすぐ終わるっしょ!」
須田「ははは・・・」
児江「でさー・・・」
佐々木「・・・」

〇教室
佐々木「・・・」
児江「ささちゃん!!今大丈夫?」
佐々木「・・・何?」
児江「ささちゃん、小道具係じゃん?材料どんな感じになりそう?」
佐々木「紙粘土、プラ板、ケミカルライト・・・」
児江「ケミ?」
佐々木「・・・折ると光るやつ」
児江「あれな!!何に使うん?」
佐々木「・・・こんな感じで照明の代わりにする」
児江「すご!!絵うま!!こういうの慣れてる系?」
佐々木「まぁ・・・ こういうの作ってるし」
児江「え!、そのストラップ手作り!? 売ってるやつかと思った!!」
児江「ささちゃんいたらうちのクラスMVPワンチャンあるよ!!」
佐々木「そんなこと、ないよ・・・」
児江「じゃあ週末値段とか見てくる!!忙しいとこごめんね!!」
佐々木「児江さん、私の邪魔ばかりするけど、もしかしてそれほど悪い奴じゃないの・・・?」
佐々木「いっそ生きる価値の無い極悪人だったらよかったのに・・・」

〇駅前広場
  特に何も進まないまま週末を迎えた。思うがままに力を振るえば一瞬の筈なのに存外難しかった。
  須田君と児江さんが二人で出かけるというので私もとりあえず見張りに行くことにした。
佐々木(集合はここだったはず)
佐々木(いた)
須田「児江、遅いなぁ。遅刻がちでも連絡ないのは初めてだぞ?」
佐々木(いないの? それに越したことはないけど・・・)
須田「ん?なんだろう。あの人だかり・・・」
  須田君の視線の先では、児江さんが私ではない怪人に囚われていた。
出来損ない(怪人態)「オマエを生かす価値を言ってみろ・・・」
児江「いきなり何!?」
須田「児江!!」
出来損ない(怪人態)「知り合いか?丁度いい。コイツを生かす価値を言ってみろ」
須田「生かすって、そもそも○す事自体駄目ですよ!!」
通行人「なんだ?ヒーローショーか?」
通行人「え・・・」
通行人達「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」
児江「嘘・・・ 人が・・・」
出来損ない(怪人態)「ククク、警察でも呼べば良いのに呑気に動画撮影だなんてな!!」
出来損ない(怪人態)「そんな危機感の無い「出来損ない」は淘汰されるべきだ」
児江「淘汰・・・? アンタ何様なわけ?偉そうに!!」
出来損ない(怪人態)「逆だ。 「出来損ない」が無計画に俺みたいな「出来損ない」を生むんだよ・・・」
出来損ない(怪人態)「劣る者の苦しみが解るか?解らんだろうな」
出来損ない(怪人態)「俺は、俺のような者を増やさない為に「出来損ない」を駆除すると決めた」
出来損ない(怪人態)「だから、オマエたちが駆除すべき「自覚のない出来損ない」か、「残すべき有能」か、ここで示せ」
須田「・・・自分達は文化祭実行委員です。 皆が楽しみにしているイベントを成功させる役目があります。これで良いでしょう!?」
出来損ない(怪人態)「・・・社交性、リーダーシップ有り、か」
出来損ない(怪人態)「良いだろう、見逃してやる。 他の「出来損ない」を探すとしよう」
児江「させない!! 須田、警察呼んで!!」
出来損ない(怪人態)「離せ、邪魔立てするならその限りでは無いぞ!!」
須田「やめてくれッ!!」
児江「ッ!!」
児江「生き、てる・・・?」
  そのままやられてしまえ、と思った。
  不慮の事故として両方切り裂いてしまえ、と思った。
  でも身体は憎んでいたはずの児江を守っていた。
佐々木(怪人態)「・・・邪魔」
児江「あ、はいっ!!」
出来損ない(怪人態)「お仲間じゃないか。 まさか貰った力で正義のヒーローにでもなるつもりか?」
佐々木(怪人態)「違う。目的は、ある」
  私の大切な人を害する者を駆除すること
出来損ない(怪人態)「そうか。なら俺の目的も通させて貰う!!」
佐々木(怪人態)「・・・」
出来損ない(怪人態)「ククク・・・やはり、俺は出来損ないか・・・」
  同業者の身体は致命傷を負い、爆発した。機密保持も兼ねてだろう、奴は塵すら残らなかった。
二人「あの、助けて下さってありがとうございました!!」
佐々木(怪人態)「・・・」
  張り詰めた息を吐きだす。
  私は折角のチャンスを逃したのか、取り返しのつかない事をせずに済んだのか、分からなかった。
  とにかく一度頭を冷やしたかった。

〇駅前広場
須田「これから、どうしようか」
児江「予定通り行くしかないでしょ・・・ うちらは文化祭成功させなきゃだし」
須田「そうだな・・・」
佐々木「須田君、児江さん!」
須田「佐々木さん、無事で良かったよ・・・」
佐々木「さっき遠くから見てたの・・・ 児江さんが襲われてて、私、怖くて何もできなくて・・・」
児江「助からなかった人もいたけど・・・」
児江「うちらは大丈夫!正義のヒーローが助けてくれたし!!」
須田「ああ、正義のヒーローで、命の恩人だよ」
佐々木「・・・そっか」
佐々木「二人はこれからどうするの?」
須田「ホームセンターに文化祭の材料費調べに行くんだ」
佐々木「私も、ついていっていい?」
児江「ありよりのあり!確かに担当者が直接見たほうがいいし!!」
児江「だったら大道具係も呼べばよかったー。 ・・・いや今日めちゃ危険だったわ!!」
須田「暇そうな奴呼んでみるか!」
佐々木「ふふふ・・・」
  二人は精一杯の笑顔をしていた。もし私があの時違った行動をしていたら、きっとこの笑顔すらなかったのだろう。
  それなら私の選択は正しかったと言える。
  でも須田君は渡さないから。怪人の力も奥の手として封印しておいてあげる。
  おわり

コメント

  • 「憎いから排斥する」という安易な結論に至らずに「憎くても相席してしまう」というアンビバレントな状況に至るまでの過程が丁寧に描かれていて、怪人ストーリーというよりは人間心理の妙を描いた不思議な味わいのある物語でした。

  • 安易な気持ちで擬態化出来るようになってしまいましたが、助ける時の勇気は色々と葛藤があったと言うより咄嗟に助けた感があり、人間味を感じました。
    後悔先に立たず、その言葉通り助けて良かったと共感します!

  • この日曜日が来る前に佐々木さんが児玉さんへの印象が変わる機会があって本当によかったですね。さもないと、結局佐々木さんが苦しむ結果になっていたかもしれません。怪人という武器を上手く使いながら、須田君の気持ちに思いっきりアタックしてほしいです。

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