デスゲームに参加したくないので小料理屋始めました!

AAKI

予約予備.事件の日とコンビニ弁当(脚本)

デスゲームに参加したくないので小料理屋始めました!

AAKI

今すぐ読む

デスゲームに参加したくないので小料理屋始めました!
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇湖畔の自然公園
  その日も、男は順調に社のプロジェクトを成功させて帰路についていた。
  男は優秀だった。
  食事こそ、手にしたコンビニ弁当の他に外食に頼り切っているが、会社では期待を集めている。
  仕事以外では、その柔和な人当たりと誰にでも優しい人格があげられる。
河之内 鱚家「もしもし?」
  携帯電話が鳴ることを見越していたかのように、ワンコールの内に通話を行う。
フカ野 海斗「俺だ」
  聞こえてくる声は確かに海斗のものだった。
河之内 鱚家「今、どこにいる?」
  そう問いかける声は、表向きには落ち着いているように聞こえる。
河之内 鱚家「例のモノは手に入ったんだろうな?」
フカ野 海斗「そう焦りなさんな」
  海斗はその内心を察したようになだめる。
フカ野 海斗「女とババアが騒いでたんで、落ち着くまで待ってたんだよ」
  薫とカン子がしばらく前に帰ったところで、彼らは取引を開始した。
  なぜ優秀なサラリーマンが、暴力的組織の海斗とつながりがあるのかわからない方々も多いのではないだろうか。
河之内 鱚家「とりあえず、仕事を授受した体の資料をくれ」
フカ野 海斗「コンビニ弁当と一緒にベンチの上だ」
フカ野 海斗「689円の炭火焼きハンバーグ弁当だぜ」
フカ野 海斗「感謝しろよ」
  話を聞く限り、彼らは会社のお金を裏社会のフロント企業でマネーロンダリングしているようだ。
河之内 鱚家「廃棄品のお弁当を売ったという建前にするのは止めてくれ・・・」
  自分のカルビ焼肉弁当と交換しなければならないことを考えると億劫だ。
  海斗はそれ以上何も言わずに電話を切る。
  鱚家は諦めると、いつものようにベンチの方に向かい、置かれているコンビニの袋と自分のモノを入れ替える。
  自分の分には、お弁当の他に手間賃程度の報酬が入れられていた。
  鱚家が立ち去った後、海斗がやってきて袋を持っていく。
フカ野 海斗「まいど」
フカ野 海斗「これで若頭への道も後少しってところだな」
  公園から立ち去る中、小さくつぶやくのだった。

〇湖畔の自然公園
  夜も更けたころ、花はなんとなく近所の公園にやってきていた。
  夕刻から始まり、通り過ぎる人々の不思議な動向が現在まで続いたのだ。
花・エディブル「さすがに、もう誰も通らないよね・・・?」
  人の気配もなくなったため、不安ではあるものの様子を伺いにきたのである。
  普段であれば親に引き止められるのだが、幸いにも今夜は不在だった。
花・エディブル「近くのコンビニに行くだけ・・・近くのコンビニに・・・」
  自分に言い聞かせるように奮い立たせ、周囲を観察しつつ進んでいった。
  しかし、何度か立ち寄ったこともあり、その記憶を引き出してもあまり代わった様子がない。
  変哲もない公園に、まさか、恐ろしいものが茂みに転がっているなどと誰が想像するだろう。
  雨上がりの土の香りは、見たものならば写し撮る瞳から死の臭いを消してしまっていた。
花・エディブル「杞憂だったのかな?」
  何事もなさそうと判断して、小さくつぶやくとさっさと足を早める。
  通り抜けた先のコンビニへは、気分が切り替わっただけでとても近く感じた。
コンビニ店員「らっしゃませ~」
  入店のテーマソングと同時に、夜勤の店員が気のないアイサツをする。
  変に関わってこないだけマシなため、何も反応を示さず弁当コーナーへと向かう花。
花・エディブル「あんまりカロリーの高いヤツはダメね」
  選ぶとすればサンドイッチかオニギリの一つくらいだろう。
  カロリーが表記されているのは、それこそ女の子には嬉しいことだ。
  そして、花が選んだのは卵焼きとウィンナーが一緒に入ったオニギリのセットだ。
コンビニ店員「一点で398円になりっす」
コンビニ店員「500円お預かりしゃ~すぅ」
コンビニ店員「102円のお返しになりゃっす」
花・エディブル「袋はいりません・・・どうも」
  店員のやる気のない接客を乗り越え、一応は軽くお礼を言って店を出る。
  そういえば、もう直、買い物袋が自然にもらえなくなるようになるのだったか。
  コンビニ内のフードコートでいただくので関係ないが。
花・エディブル「頂きます」
  コンビニの弁当とはいえ礼節を注ぎ、オニギリを片手に卵焼きを口に運ぶ。
  モグモグ。
  ゴクリ。
花・エディブル「・・・・・・」
  咀嚼を終えて胃へと食べ物を通すも、はっきりしない沈黙を述べる。
  卵焼きは少し硬く、味も甘いのか塩っぱいのかよくわからない。
  だからといって、決して不味いというわけでもないのがモヤモヤとする。
  ウィンナーもまた、目立った不備こそないのに決定的な美味しさというものを生産工場に置き忘れてきたような感じである。
花・エディブル「ごちそうさまでした」
  感謝の言葉こそつぶやくも、表情はあまり晴れやかではなさそうであった。
  これまた時世なのか店舗の外に置かれたゴミ箱に、空の弁当トレーを放り込んで帰路につく。
花・エディブル「まぁ、気分転換と思って置きましょう」
  満足いく結果ではなかったものの、諦めて考え方を切り替えるのだった。
  世界はコンビニ弁当のように、大きく良くも悪くもならず回っていく。
  そう、誰もが思っていたはずの夜。

コメント

  • コンビニの店員さんの口調が、文字にすると笑えるものなのですが、脳内音声変換すると「あー、このタイプの人、いるわー」となるリアルさ。本筋と関係のないところに引っかかって笑ってしまいましたw

成分キーワード

ページTOPへ