第四話 禍樹-マガツキ-(脚本)
〇黒
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冒険を再開します。
〇炎
〇サイバー空間
電脳神「ゴブリンボスのモデル── 西瓜 根蔵(にしうり こんぞう)」
電脳神「現世では元詐欺グループのリーダーだった」
〇雑踏
電子マネー詐欺、
プリペイドカード詐欺・・・
部下を従えた西瓜は、主に
コンビニエンスストアを標的にしていた。
〇コンビニ
時間帯は深夜。
店員が一人のコンビニがターゲット。
部下をコンビニ店員として潜伏させ、
店の情報を密告。
管理が手薄と解れば、西瓜が主犯として
犯行に及んだ。
〇コンビニの店内
ICカード詐欺──
店員「──ですから、 まだ支払いが終わっておりませんので、 もう一度カードをかざして下さい・・・!」
西瓜「払っただろうが! また払わせるのかこの店はっ!」
偽のICカードをかざし、
支払ったように見せかけ・・・
故意に店員と口論を誘発させる。
西瓜「お前達、今だぞ!」
〇コンビニ
〇コンビニの店内
西瓜(よし、切り上げるか)
西瓜「あー、もういいや。 払われてねえなら要らね」
西瓜「店員は使えねえし、言う事聞かねえし、 この店は終わってんな!」
西瓜「ゲホッ! ゴホォッ!」
店員「・・・なんでマスクしないの?」
〇コンビニのレジ
プリペイドカード詐欺──
店員「い、いらっしゃいませー!」
店員(なんで毎回多いんだよ! こっちは1人なんだけど!)
西瓜「オウオウ、繁盛してるなあ」
西瓜「日付が変わるまでは そこそこ忙しいみたいだからな、この店」
西瓜「しかも店員ひとり!」
西瓜「──だから狙い易いんだよ」
予め従業員になりすました部下から貰った、プリペイドカードのバーコードをコピーした
シールを用意し──
店内に展開されたカードのバーコードに
重ねるよう貼り付け──
他人が購入直後、コピー元のバーコードが
使用可能になるという仕組み。
〇散らばる写真
プリペイドカードは、
購入して初めて使用出来る・・・
その仕様を逆手に取った悪質な犯行。
〇散らばる写真
当然、購入した客からは多額の返金を
要求される始末。
中には閉店を余儀なくされた店舗も数件。
〇取調室
警察の調査により、
西瓜及び部下24名の身柄を確保。
部下は殆どが未成年者だった。
西瓜の取調べでは次のように供述──
西瓜「人件費削減なんてやってるから 狙われるんだよ」
西瓜「俺は部下達に、そして哀れなコンビニ店員に レクチャーしてやったに過ぎねえ」
西瓜「今のご時世、世知辛いだろ? ウィルスとか物価上昇とか、な?」
西瓜「そういう世の中で生き抜く為の手段を ガキどもに教えてやったのさ!」
西瓜「1人で店を、商品を守れる訳がないだろ。 ましてや従業員が、だ」
西瓜「だったら深夜は店閉めるよう、 義務化すりゃあいいのに」
西瓜「何が24時間営業だ? 売上げの事しか考えてないから不満が出る」
西瓜「従業員の事を気配り出来ない店なんて、 潰しちまえばいいんだよ!」
西瓜「ゴホッ! ゴハアァッ!」
警察「マスクを着用しなさい!」
西瓜「うるせえ! どの道もう手遅れだろうが!」
西瓜「何だったらお前ら全員に ウィルスばら撒いてやろうかあ!?」
〇サイバー空間
電脳神「奴は最後まで反省する事なく、 やがて出所に至った」
電脳神「出所後も深夜のコンビニを巡り、 咳を吐き、持論を掲げては自身の正当化を 主張し続けていた・・・」
電脳神「・・・・・・」
電脳神「忌々しい──」
電脳神「その傲慢で身勝手な行動思想によって、 一体どれ程の人間が傷付いたか」
電脳神「己が客の立場なら、 減らず口であれば何をやっても良い──と?」
電脳神「他人を脅し、圧を掛ければ、 如何なる犯罪も許される──と?」
〇黒
勘 甚
違 モ ダ シ
イ イ
ダ カ ラ
削 除 シ タ
ワ タ シ ガ 断 罪 シ タ
〇サイバー空間
電脳神「然しながら、 奴は未だに残滓を存在させている」
電脳神「まるで削除データが ごみ箱ファイルに残留しているかのように」
電脳神「──さて、勇者達は バグ塗れのZIPを解凍してしまったようだ」
電脳神「其の罪深き存在を、如何に処す?」
〇黒背景
〇武術の訓練場
景色が緑色に統一されつつある。
どこかで見た事のある文字化けの光景。
〇渋谷のスクランブル交差点
〇武術の訓練場
イツキ(現実世界の時と同じや・・・!)
イツキ(まさか、この村ごと消すつもりか!?)
〇炎
「グル・・・ジイィ! ニグ・・・ィイ! ダ・・・ズゲ・・・デェ!」
「ゴガアァアアッ!!」
〇武術の訓練場
イツキ(アカン・・・! ゴブリン達が暴走しとる!)
イツキ(はよ動いてくれや! 俺の身体! 足っ!)
イツキ(待機状態て、こんなん長いんか!?)
〇黒背景
クルシイ・・・タスケテ・・・
イツキ(ゴブリン達の──声?)
コワイ
イヤダ
ワルイコト、シタクナイノニ
ワルサ、シナイト、ボスニ・・・
ミンナニ、イジメラレル・・・!
イツキ(違う──)
イツキ(待機状態はとっくに解除されとる)
イツキ(ただ俺自身が怖気付いとるだけなんや)
イツキ(コイツらが背負っとるモンを 受け止めきれるかどうかを──な)
〇学校の屋上
『──だからアンタは背負い過ぎなんスよ』
『抱えきれないンなら、
誰かに頼ればいいだけの話じゃないッスか』
〇黒背景
イツキ(学生の頃の事、思い出してもうたな)
イツキ(ホンマ、アイツの言う通りや)
〇森の中
イツキ「もし、俺の作戦が失敗した時は・・・」
イツキ「俺を後回しにして、 捕まってる人達の救出を優先してくれ」
ユカリナ「そんなこと言わないで? 危なくなったらイツキも助けるから」
〇黒背景
イツキ(俺のアホ! アホアホや!)
イツキ(もっと言い方があったやろが・・・!)
イツキ(でも──)
イツキ(あんな風に気にかけてくれて、 嬉しかったなあ)
だから──信じられる
〇森の中
ユカリナ「私も、嬉しいよ」
ユカリナ「画面の向こう側だった、貴方に逢えて」
〇黒
ユカリナが
俺を
覚えていてくれたから
ユカリナ「イツキ──・・・!」
〇武術の訓練場
「"フォレスト・ウォール"!」
ドライアド族の男「村の者はフォレスト・ウォールで ゴブリン達を囲い込むんだ!」
【フォレスト・ウォール】《木属性》
分類:マイナーアクティブ
効果:樹木生成し、敵の攻撃を防ぐ
イツキ「ドライアド族のみんな・・・!」
イツキ「でもアカン! ゴブリン達を倒さんといてくれ──」
ユカリナ「大丈夫! 村のみんなには伝えといたから」
ユカリナ「言ったでしょ? 『イツキも助ける』って」
イツキ「ユカリナ・・・」
イツキ「おおきに、助かった──」
ユカリナ「ほんとよ! もう! 無茶ばっかりして!」
ユカリナ「心配、したんだからね?」
イツキ「すんまへんでした」
ユカリナ「わかればよろしい!」
〇炎
〇武術の訓練場
イツキ「アイツは一体・・・?」
ユカリナ「アレこそが、 凶鬼の真の姿──"禍樹-マガツキ-"」
イツキ「真の・・・姿やて?」
ユカリナ「ええ。私達の──」
ユカリナ「この世界の敵よ・・・!」
〇炎
サ レ ア ブ
イ ン ウ レ イ
ス ト ク
〇武術の訓練場
「──? ──!?」
ドライアド族の男(なんだ・・・? 声が出ない、スキル封印か!?)
イツキ(何がどうなってんねん!)
ユカリナ(これは── "サイレントウィルス"!?)
ユカリナ(私達を苦しめた、凶悪ウィルス!)
〇休憩スペース
負けないわ!
あたしだって!
なんて強い力・・・!
敵わない・・・!
お疲れ様!
お疲れ様です!
〇壁
〇病室のベッド
──陽性です
貴方は
サイレントウィルスに感染しています
声帯を損傷しており、
元の声には戻らないでしょう
〇血しぶき
ウィルスは
私の声を奪った
〇武術の訓練場
ユカリナ(──コネコネッコ)
ユカリナ(ごめん、やっぱり使うね)
〇花模様
ユカリナ「ユーカリツリー! 力を借りるね!」
ブレス-Bless-
オブ-of-
ゴッデス-Goddess-
〇花模様
ユカリナのスキル封印が解除された!
ユカリナ「みんなのウィルスを、治療する!」
ユカリナ「"セラピュティック・フレグランス"──」
〇武術の訓練場
イツキ「喋れる・・・! スキルも使えるで・・・!」
イツキ(・・・体感したけど、 レベルが高いんか、覚えられへんかったな)
ユカリナ「みんな治療出来たみたいね!」
イツキ「助かったで! まさかこんな隠し玉があったなんてな」
ドライアド族の男「女神様、ありがとうございます!」
ドライアド族の女「おかげさまで、 ゴブリン達を抑え続けられます」
ドライアド族の娘「お姉ちゃん女神さま! ありがと〜!」
ドライアド族の男「さあ! 村の皆んな! 樹木の壁を築き上げ続けるぞ!」
ユカリナ「それじゃあ、私達も──」
イツキ「──ああ」
〇白
イツキ「コイツを倒し──」
イツキ「ゴブリン達を救うんや!」
〇白
ユカリナ「村のみんなの──」
ユカリナ「この緑ノ樹界の平和の為に!」
〇炎
〇黒
ここまでの記録をセーブしますか?
→はい
いいえ
〇黒
セーブ完了しました。
To be continued...
沈黙状態にするウィルス。現実世界どころかゲームの世界までばら撒くとはとんでもない野郎ですね。あの男。
ユカリナちゃんの詠唱シーン、とても美しかったです。
ゴブリンたちも村人たちも救う、素敵な展開にほっこりしました😌
詠唱の演出の上手さに思わず見惚れてました❗️