ケダモノヘイブン

輝井永澄

ケダモノヘイブン:神宿・怪人マガツミ(読切)(脚本)

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〇入り組んだ路地裏
ヒオギ「ハァ、ハァ・・・ッ」
ヒオギ「ば、バケモノ・・・ッ!」
「・・・」
???「バケモノ? 違うな・・・」
???「欲望のままに 暴力を振りかざし、噛みつき合う・・・」
マガツミ「ケダモノさ 俺も、お前もな」
ヒオギ「うぁ・・・ああぁぁぁぁ!?」

〇雨の歓楽街
  ──東京・神宿区
  世界有数の繁華街を擁する
  欲望の渦巻く街
  昼の世界に生きられないバカどもが
  引き寄せられ、出会い──
  
  そして争いを繰り広げる
  そう、ここは安息の地
  
  暴力と共に生きる男たちの──

〇黒
「が・・・ッ!」
「げぼァ・・・ッ!」

〇廃ビルのフロア
ターキー「ぐぇ・・・がはァ・・・ッ」
ザマ「ちっ・・・ こいつまた吐きやがって」
ザマ「シャツについただろうがァ!」
ターキー「ぐぼァっ!?」
アジキ「ヘッヘッヘッ・・・ ダメだろうターキーちゃんよォ?」
アジキ「吐いたモノ・・・ 残さず喰えよォッ!」
ターキー「ごべ・・・ッ!」
ターキー「か、勘弁してください・・・」
ターキー「金は必ず・・・ 作りますから・・・」
アジキ「・・・だ、そうですぜェ ボス?」
クガミ「・・・例えばお前の女が浮気したとする」
クガミ「女は過ちを悔い これまで以上の愛をお前に注ぐと言った」
クガミ「だが、それで"浮気した"という事実は 消えないんだ」
クガミ「これから金を返そうと 今、この瞬間には関係ないんだよ」
アジキ「だとよォッ!」
ターキー「ぐぎェ・・・ッ! ヒィィ・・・」
クガミ「ヒンヒン泣くな、見るに堪えない」
クガミ「明日までに用意できなきゃ 魚のエサにするぜ」
ターキー「は、はい・・・」

〇廃ビルのフロア
アジキ「ヒーッヒッヒ! 傑作だったなァ、あいつ」
アジキ「勘弁してください~~って! ギーヒッヒッヒッ!」
ザマ「・・・少々酷なのでは?」
ザマ「元々の期限は たしか、一週間後で・・・」
クガミ「ザマ・・・この世界はな 約束や契約で回ってんじゃねェ」
クガミ「支配するか、より強く支配するか どっちかだ」
ザマ「・・・」
クガミ「徹底して尊厳を奪い、否定する・・・ すると人間は考えることを辞め 自ら支配されにくる」
クガミ「だから弱いヤツほど徹底的に叩く そうやって"秩序"を作るんだ」
ザマ「ウス・・・」
クガミ「・・・俺だ」
クガミ「・・・ほう?」
ザマ「なにか?」
クガミ「"怪人マガツミ"だとよ・・・ フフッ」

〇殺人現場
アナウンサー「・・・殺害されたヒオギさんは 反社会集団の構成員であり・・・」
アナウンサー「警察では抗争によるものと見て 捜査を・・・」

〇立ち食い蕎麦屋の店内
アナウンサー「近隣住民によると、現場付近は 夜になると非常に暗く 人通りも少ないため・・・」
ミツキ「・・・」
ミツキ「抗争、ね」
キスカ「はいよ ハンバーグ蕎麦、おまちどぉ!」
ミツキ「おお、これが・・・」
ミツキ「(ずるずる) ・・・うーん、無秩序な味だ」
テレビからの声「・・・遺体は肩から心臓にかけ 大きく抉られており いくつかの事件と共通する特徴が・・・」
キスカ「・・・"怪人マガツミ"かァ」
ミツキ「マガツミ?」
キスカ「知らないの? この辺じゃ有名な噂だよ テレビじゃ言わないけど」
キスカ「ヤクザやチンピラばかりを襲い 心臓を抉る髑髏の怪人・・・」
キスカ「街を仕切る"四天王"さえ 震えあがる恐怖の使徒!」
キスカ「・・・なんて、まァ都市伝説だよ」
キスカ「実在したら、ただの異常者だけどね」
ミツキ「ふうん・・・」
キスカ「お兄さん この街は初めて?」
ミツキ「うーん、そうでもない」
キスカ「あら、そう?」
テレビからの声「警察では事件への情報提供を求めています 詳しくは・・・」
ターキー「・・・」
ターキー「マガツミ・・・」
キスカ「滝岡さん、待ってても おじいちゃんはしばらく帰ってこないよ」
ターキー「・・・金が必要なんだ 少しでいい」
キスカ「あたしに言われてもなぁ 明日にでもまた来て」
ターキー「チッ・・・」
キスカ「こんな店にまで無心に来るとか・・・」
ミツキ「怪我してたみたいだ」
キスカ「自業自得だよ」
キスカ「人一倍気が弱いくせに "黒後家連合"でチンピラなんかやってさ」
ミツキ「虎の威を借りた狐の末路・・・ってかァ」
キスカ「そうね でも・・・」
キスカ「この街の奴らは それしか生き方を知らないんだ」
ミツキ「・・・」

〇ビルの裏通り
ターキー「クソッ・・・ 半分も集まってねェ」
ターキー「なんとかしなけりゃ・・・なんとか・・・」
ターキー「・・・いつもそうだ 肝心なところでキメきれねぇ」
ターキー「ちくしょう・・・!」
???「お困りのようですね」
ターキー「・・・あ?」
パイドパイパー「今あなた・・・"力が欲しい"と そう思いましたか?」
ターキー「なッ・・・!? バケモノ・・・!?」
パイドパイパー「私の名は"パイドパイパー"・・・」
パイドパイパー「しがない営業マンでございます」
ターキー「え、営業・・・?」
パイドパイパー「お近づきの印に・・・どうぞ」
ターキー「なんだ、これ・・・?」
パイドパイパー「これは”エデンの種子”・・・ "獣の力"ですよ」
ターキー「けもの・・・?」

〇ビルの裏通り

〇ビルの裏通り
ターキー「う・・・? なんだ、これ・・・?」
パイドパイパー「フフ・・・お楽しみください」
ターキー「う、ぁ・・・ あああああぁぁぁッ!!」

〇開けた交差点
ザマ「・・・ん?」
ターキー「・・・」
ザマ「ターキー・・・?」
ザマ「金は出来たのか?」
ターキー「・・・」
ザマ「・・・ボスには俺から 口を利いてやってやっても・・・」
ターキー「・・・ス」
ザマ「・・・なに?」
ザマ「・・・ッ! なにしやがる!」
ターキー「・・・ロス・・・コロス・・・」
ターキー「コロス殺ス殺ス殺ス殺ス殺スゥゥゥッ!!」
ターキー「よくもイタブって くれやがったナァァァ!?」
ザマ「う・・・ああぁぁぁぁッ!?」
ターキー「ルオオォォォ!」
ターキー「ククク・・・ 俺は・・・俺は・・・ッ!!」

〇殺人現場
アジキ「ひ、ひいぃぃぃッ!?」
ターキー「アジキィィィィ!」
ターキー「よくもゲロを食わせやがったなァァァ!?」
アジキ「な、なんだって!?」
ターキー「テメェのゲロもよォォォ! 食わせてやろうかァァァァ!?」
ターキー「前歯を全部折った口でよォォォ! 大事に啜りやがれよォォォ!!」
アジキ「ひ、ひぇ・・・ や、やめろォォォ!!!」
アジキ「ぐが!」
アジキ「おぐぇェ!?」
アジキ「ぶぽッ!?」
ターキー「ふひゃひゃひゃ! 楽しいなァ、アジキィ!!」
ターキー「こんな楽しいこと してたのかよお前ェェ!!」
アジキ「ふひ・・・ひひひ・・・」
ターキー「・・・仕上げだァァッ!!」
「ぐ・・・はッ!」
ターキー「・・・」
ターキー「ククク・・・ チンピラどもを震え上がらせる 恐怖の・・・」
ターキー「・・・俺だったんだ 俺こそが、"マガツミ"だったんだ・・・!」
ターキー「ひゃーっはっはっはっはァァ!!」

〇殺人現場
ミツキ「・・・」
ミツキ「手遅れか・・・」

〇道
ヤクザ「ぐが・・・ッ!?」
ヤクザ「か・・・はッ・・・」
クガミ「・・・」
ターキー「クガミ・・・クガミさんよォ・・・」
クガミ「・・・ターキーか?」
クガミ「なにしてんだてめェ・・・ 金はできたンだろうなァ?」
ターキー「・・・ クックックックッ・・・」
ターキー「要らねぇんだ・・・ 金なんか要らねぇんだよォ」
ターキー「なにしろ俺は”マガツミ” クズどもを掃除する 正義の使徒だからよォ・・・」
クガミ「・・・」
ターキー「ああ、そうだ・・・ 今度はあんたが俺に金を払うのはどうだ?」
ターキー「そしたらあんたを守ってやるぜ 他のクズからよォ」
クガミ「・・・頭までおかしくなったンだな」
ターキー「余裕ぶってろよォ 俺にはできる・・・できるんだよォ・・・」
ターキー「この"力"が・・・あればなァァァァ!!」
クガミ「・・・ッ・・・!?」
ターキー「よけてんじゃねェよ、クガミさんよぉォ!!」
ターキー「俺があんたを支配してやるってんだよォ!!」
ターキー「あんただけじゃねェ "黒後家連合"も! この街の"四天王"も!!」
ターキー「全部全部全部全部全部・・・ 俺にひれ伏せやあァァァッ!!」
クガミ「・・・フン」
ターキー「・・・ごぶェ・・・ッ!?」
ターキー「なんだ・・・なぜ俺がやられ・・・ッ!?」
クガミ「いいじゃないか、ターキー・・・ わかって来たなァ」
クガミ「この世界は支配するか より強く支配するか・・・」

〇道

〇道
クガミ「・・・こうやってなァッ!?」
クガミ「必要だよなァ!? こういう"力"がよォォ!?」
ターキー「な、なァァァ!?」
クガミ「フオォッ!!」
ターキー「ごガッ・・・!?」
クガミ「哀れだなァ・・・ まったく、哀れだ・・・」
クガミ「"力"を得てよォ 俺に勝てると思って来たのにナァ?」
ターキー「こんな・・・こんなことって・・・ッ」
クガミ「手にしたと思った瞬間こぼれ落ちる・・・ 人生とはそんなものだ」
クガミ「いい勉強になったなァ!?」
ターキー「ごべぁッ!?」
クガミ「いい顔だなァターキー!? もっと絶望してみせろよォ!?」
クガミ「強そうなその姿で! 泣いて土下座をしてみせろよォォォ!?」
ターキー「あ・・・ぐ・・・」
クガミ「もう終わりかァ? 俺ァもうちょいでイキそうなのによォ」
クガミ「もっと楽しませろよなァ!?」
???「そこまでにしときなよ」
クガミ「なに・・・?」
ミツキ「・・・」
クガミ「誰だ貴様・・・?」
ミツキ「・・・通りすがりさ」
ターキー「あ、あんたは・・・?」
ミツキ「えーっと、滝岡さん」
ミツキ「・・・道を踏み外したね」
ターキー「ぐァ・・・ッ!」
ターキー「そ、んな・・・ 俺は・・・マガ、ツ・・・」
ミツキ「あんたはマガツミじゃない 滝岡さんだ」
ミツキ「滝岡さんのまま、死ね」
ターキー「か・・・はッ・・・」
クガミ「迷いのない一撃だ ・・・殺り慣れているな」
クガミ「フフフ・・・ そうか、お前が・・・」
クガミ「なにをしに来た?」
ミツキ「力にうぬぼれたバカに 身の程をわからせようと思ってね」
クガミ「フフフ・・・そうだな 力に支配されるのは愚かだ」
クガミ「人を支配し、より強く支配する! それが力! それが暴力! それこそが絶対の真理!」
クガミ「お前はわかってるようだなァ ・・・"怪人マガツミ"よォ?」
ミツキ「・・・」
ミツキ「"支配"かァ・・・ くだらねエなァ」
ミツキ「せっかくの"獣の力"を そんなつまんねェことに使うのかい?」
クガミ「ほう・・・ ならばなんだと?」
クガミ「まさか、人を守るためだとでも・・・」
ミツキ「そんなんじゃねェよ・・・」

〇道

〇道
ミツキ「お前に教えてやるぜ、クガミ!」
マガツミ「本当の"暴力"ってやつをなァァァ!!」
クガミ「ようやく姿を現したなァァ!!」
クガミ「貴様もッ!! この俺がッ!! 支配してやるゥァァァ!!!」
マガツミ「・・・ッ!」
クガミ「クハハハ!! 俺の"糸"は鋼鉄の強度と! ゴムタイヤの柔軟性を兼ね備える!」
クガミ「この"蜘蛛の巣"の中で! 動くことさえままならず 屈しやがれァァッ!!」
マガツミ「ヌオオオオオ!」
クガミ「なに・・・ッ!?」

〇崩壊した道
クガミ「グオォォ!? 周囲の道路ごと破壊して逃れ・・・ッ!?"」
マガツミ「・・・"暴力"ってのはよォ・・・ 無意味で、理不尽で・・・ そして自由でなきゃいけねェ」
マガツミ「力とは解放、そして救済 今、お前も解き放ってやる」
クガミ「ガッハァァァッ!?」
マガツミ「・・・終わりだ、クガミ」
クガミ「・・・マガツミ・・・ "災厄"の使徒・・・!」
クガミ「善なる秩序も、悪なる秩序も 全てを"混沌"へと返す破壊者・・・」
マガツミ「そんな大層なもんじゃねェ」
マガツミ「俺はただのケダモノさ お前たちと同じだ」

〇個別オフィス
???「"黒後家連合"が壊滅か・・・」
???「騒がしくなりそうだな」
???「どう動くでしょうか "四天王"は・・・?」
???「均衡が崩れるのは なにかが動くときじゃあない」
???「山が崩れ落ちるように・・・ 状況が耐え切れず、動くものだ」
???「まるで災厄のように、な・・・」
???「して、我ら"テンプル騎士団"は?」
???「変更はない "獣"の討伐、秩序の維持・・・そして」
???「"パンドラの匣"の回収だ」
???「・・・御意 神の御心と共に・・・」

〇立ち食い蕎麦屋の店内
キスカ「はいよっ ネギトロ・ホイコーロー蕎麦ね!」
ミツキ「おお・・・ 無秩序が加速している・・・」
ミツキ「(ずるずる) ・・・」
キスカ「なァに? そんなにうちの蕎麦が気に入った?」
ミツキ「いや、ぜんぜん ちゃんと不味いよこれ」
キスカ「あたしもそう思うわ~」
テレビからの声「・・・反社会集団"黒後家連合"のリーダー 玖賀弥直哉が死亡した事件について・・・」

〇崩壊した道
テレビからの声「周辺への被害が大きく 警察ではテロの可能性も・・・」

〇立ち食い蕎麦屋の店内
キスカ「・・・」
キスカ「・・・そういえば 滝岡さん、最近見かけないのよね」
ミツキ「あの人なら・・・ 相変わらずだよ」
キスカ「・・・そっか」
ミツキ「・・・」

〇黒

〇ナイトクラブ
オルグ「・・・よう、久しぶりだな」
オルグ「"デッドリグズ"に顔を出すとは 珍しいじゃねェか、営業マン?」
パイドパイパー「フフ・・・ ご無沙汰をしております ”四天王”のひとり、オルグさん・・・」
パイドパイパー「さっそく、ビジネスの話をしましょうか フフフ・・・」

コメント

  • あ、こっちがAチームだ、いろんな暴力かありそうな予感がします。徹底していて、スカッとしますね。やはり、本能にある力への憧れなんでしょうか?

  • こんばんは!
    熱い戦闘シーンの演出がとてもかっこよかったです!怪人なりの美学があるを感じその主張が激しいほど虚しく感じるのがまた怪人の魅力なのかなと思いました!

    あとあまり関係ないんですけど、ヤクザたちのやられ声のバリエーションが豊富でリアルでした(笑)

  • いやー、あの食堂マズそうですね。そして絶対店員も何か持ってる。
    前作に引き続き面白かったです。設定がパンパンに詰まって破裂しそうなのがいいですね。

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