いじめられっこ、魔王軍に転生する

坂井とーが

12話 魔王と人間(前編)(脚本)

いじめられっこ、魔王軍に転生する

坂井とーが

今すぐ読む

いじめられっこ、魔王軍に転生する
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇闇の要塞
宿利ユウ「やっと、帰ってきた・・・」
  まさか、魔王城を見てほっとする日が来るなんて。
リーナ「さぁ、早く医務室へ。 カナエに診てもらいましょう」
宿利ユウ「二宮さんのこと知ってるんだ」
リーナ「ええ。彼女はいい治癒師よ」
リーナ「傷ついている誰かの心まで癒そうとするんだから──」
宿利ユウ「リーナ・・・」
リーナ「大丈夫・・・とは言えないけど、いつまでも泣いているわけにはいかないもの」

〇城の救護室
リーナ「カナエー! いるー?」
リーナ「探してくるから、ユウはここで待ってて」
  この前家族を亡くしたばかりなのに、強いな・・・
  彼女は僕なんかよりずっと──
板東「二宮さーん、いるか?」
宿利ユウ「あ──」
板東「よぉ、宿利じゃねぇか。 お前、ボロボロで何やってんだよ?」
宿利ユウ「お前こそ、何の用だ?」
板東「訓練後の回復に来たんだよ。俺たちも魔王軍に入ることにしたからな」
板東「クラスで一番弱いお前でも魔獣を倒せるんだろ。じゃあ俺ならもっと余裕だな」
宿利ユウ「――僕は弱くない」
板東「はぁ? お前のステータス、見たからな」
板東「レベルが上がってるのに、俺より低かったじゃねぇか!」
宿利ユウ「いつまでも自分が上だと思うなよ」
板東「チッ」
板東「スキルに早く気付いたからって、調子に乗りやがって」
板東「俺のスキル、食らいやがれ! 『殴打』!」
板東「ぎゃふっ!」
宿利ユウ「怪我人に対して、スキルで攻撃かよ?」
  ――あ、そうだ。

〇牢獄
  地下牢くらい、あるんじゃないかと思ってた。
板東「何のつもりだ!? 出しやがれ!」
宿利ユウ「暴力は罪になる。 知らなかったとは言わせない」
板東「ふざけるな! てめぇみたいな雑魚がイキるんじゃねぇ!」
宿利ユウ「へぇ。これでも?」
板東「なっ──」
板東「あれ・・・?」
板東「え・・・?」
板東「ご、ごめんなさいッ!」
板東「許してください。お願いします。何でもしますからぁ」
宿利ユウ「上辺だけの謝罪なんていらない。 ずっとそこにいろ」
板東「待ってくれよ。 俺、魔王軍の役に立つからさぁ・・・」
宿利ユウ「お前のスキル、『殴打』っていったっけ?」
宿利ユウ「あのスキルはハズレだ。 何の役にも立たないよ」
板東「そ、そんなぁ・・・」

〇要塞の廊下

〇英国風の部屋
  今日は疲れた・・・
  ・・・
  ・・・でも、やっぱり、眠れない。
  できないと思うなら、
  人の何倍も努力しなさい
  そうだな。食事も睡眠も不要になった、今の僕なら──

〇闇の闘技場
  不格好でもいい。あがき続けろ。
  スキルの使い道を徹底的に探るんだ。
  『一芸一能に深く達する』
  このスキルは、僕だけの特技だ──

〇城壁
ヴィオ「あやつ・・・」

〇闇の闘技場
  休憩が必要ないのも、僕だけの強み。

〇闇の闘技場
  毎日だって続けてやる。
宿利ユウ「あれは・・・」

〇空
ユウ(魔王だ。こんな夜中に、どこに行くのだろう)
アマデウス「んん?」

〇闇の闘技場
宿利ユウ「あっ」
アマデウス「お前は眠らないのか?」
宿利ユウ「ゴーストですから。 アマデウスさんは、どうしたんですか?」
アマデウス「これから北の森に行くところだ。 ちょうどいい。共に来るか?」
宿利ユウ「ヴィオを連れて行かないんですか?」
アマデウス「奴はお前ほど夜目がきかない」
宿利ユウ「僕は飛べませんけど」
アマデウス「知っている」
宿利ユウ「わ!」

〇雲の上
  なんか、こうして運ばれるのに慣れてきた・・・
宿利ユウ「転移陣を使わないんですか?」
アマデウス「北にはまだ転移陣がない。 これから同盟を申し込むところだ」
  転移陣とは、以前の世界の概念にたとえると、空港のようなものらしい。
  空港と空港がつながっていれば、その航路を使って誰でも行き来ができる。
  魔王やヴィオのように魔力が高ければ、どこからでも空港に飛ぶことができるらしい。
宿利ユウ「・・・アマデウスさんは、人間が嫌いじゃないんですか?」
アマデウス「なぜ俺が人間を嫌う?」
宿利ユウ「だって、ヴィオは人間嫌いだし、そもそも魔族と人間は敵対しているんでしょう?」
アマデウス「確かに、敵対している人間もいる。 しかし、それがすべてではない」
アマデウス「俺にはかつて、人間の友がいた」
宿利ユウ「人間の友達!?」
アマデウス「・・・ヴィオには内緒だぞ」
宿利ユウ「人間は異種族に対して残酷なんですよね。どうして友達になれたんですか?」
アマデウス「――俺が種族を偽ったからだ」
アマデウス「森は遠い。 少し昔話につき合ってもらおうか」

〇黒
  俺がまだ幼かったころの話だ。
  人間の国の近くで
  怪我をして動けなくなったことがあった。

〇けもの道
  そこに人間が通りかかって、もう殺されるかと思った。
???「誰かいるの?」
アマデウス「あっちへ行け!」
アマデウス(幻影魔法で翼を隠してみるか・・・?)
アマデウス「・・・」
???「キミ・・・どうしたの!?」
アマデウス「来るな!」
アマデウス「うっ・・・」
???「怪我をしてるじゃないか! 待ってて、お父さんをよんでくるから!」
アマデウス(この隙に逃げないと・・・)
???「動かないでね! お父さんがきっと手当てしてくれるから!」
アマデウス(手当てだと・・・?)
???「お父さん、こっち!」
少年の父「ああ、酷い怪我だ・・・。 どれ、見せてごらん」
アマデウス「触るな!」
少年の父「大丈夫だよ、怖がらないで」
アマデウス「なっ!? 俺は怖がってなんか──」
少年の父「強がらなくていい。 ひとりで魔物に襲われたのかい?」
少年の父「怖かっただろう。よく生き延びたね」
少年の父「もう大丈夫だ。さぁ、おいで」
アマデウス「・・・」

〇暖炉のある小屋
少年の父「これでよし。痛かっただろう。 泣かずに我慢できてえらいぞ」
アマデウス「この程度の痛みで泣くもんか」
ダンカン「キミ、強いんだね。 僕の名前はダンカン。キミは?」
アマデウス「・・・アマデウスだ」
少年の父「上等な服を着ているようだが、貴族の子かい?」
アマデウス(貴族って・・・?)
アマデウス「えっと・・・、家を出てきた。 今はひとりで修行している」
アマデウス(・・・本当のことだ)
少年の父「その年でか!?」
少年の父「ああ、ご両親がどれほど君を心配しているだろう・・・」
アマデウス「まさか。俺の心配なんてするもんか」
アマデウス(俺の強さは父上も知っている)
少年の父「・・・そうか。つらいことを聞いてしまったね」
アマデウス「?」
少年の父「パンを焼いてあげよう。 お腹が減っているだろう」
ダンカン「傷が痛くなったらいつでも言ってね。 薬草を貼り替えてあげるから」
アマデウス(・・・なぜ、見ず知らずの俺に優しくするんだ?)

〇黒
  人間とは、
  これほど優しい生き物だったのか
  あのときは、そう思ったのだ・・・

次のエピソード:13話 魔王と人間(後編)

コメント

  • 魔王様~♥️好きです😊
    そして板東、あ~スッキリしました✨✨

  • ステータスの伸びは遅くとも、ゴーストの特性とスキルの使い方で克服しようとする展開がアツい!!
    そして、アマデウスの幼少期に何が…?

成分キーワード

ページTOPへ