11話 炎の魔獣(脚本)
〇岩の洞窟
ヤバイ、見つかった!
宿利ユウ「ぐ──」
やっぱりダメだ。跳ね返せない。
スキルの効果で即死は免れたけど、これだけ力の差があって勝てるわけがない。
僕の速度じゃ、逃げることも不可能だ。
ここまでか──
〇学校の廊下
逆らっても勝てるわけがない。僕は非力だし、あちらは人数も多いのだから。
〇黒背景
いじめられていたときの僕の考え・・・
あのときは、どうせ逃げられないと諦めきっていた。
結局、今の僕も同じだな。スキルを得ただけで、なにも変わってない。
強い奴にはひれ伏すのか? 白崎相手に何もできなかった、あの頃みたいに。
もし今、目の前にいるのが白崎だったら──
それでも僕は、諦めるのか!?
〇岩の洞窟
正面からやり合おうとするな。
あいつと100回ぶつかり合えば、100回負ける。
でも、もし僕が予想外の行動を取り続けたら?
100回に1回くらいは勝てるかもしれない。
勝負に不確定要素を持ち込むんだ。弱者である僕が勝つ方法は、それしかない。
熱い──
でも、水から出たら直撃を食らうだけだ。
宿利ユウ「ゴボッ」
・・・水が沸騰しつつある。
ゆで上がる前に、下の階へ──
〇岩の洞窟
逃げ切ったか・・・?
こいつ、泳げるのか!?
返せた!
そうか、水が勢いを殺してくれたから。
こうなったら、あとはどちらのHPが先に尽きるかの勝負だ。
宿利ユウ「かかって来い!」
水の中でその攻撃は・・・。
熱で殺すつもりか?
いや、まさか──
〇岩の洞窟
熱で氷が解けたんだ!
こうなったら地底湖に飛び込むしか・・・
防がれた!?
こいつ、やっぱり知能があるんだ。
今度こそ、もう──
???「ユウ!」
宿利ユウ「え・・・!?」
宿利ユウ「リーナ!? どうして!?」
リーナ「ユウがいなくなったって聞いて、助けに来たのよ!」
宿利ユウ「気をつけて! 炎を吐くんだ!」
リーナ「わかった!」
リーナ「くっ」
ダメだ。リーナにだって、この怪物は倒せない。
宿利ユウ「もう無理だ! 逃げて!」
リーナ「何言ってるの! ユウを見捨てるわけないでしょう!」
リーナ「仲間なんだから!」
宿利ユウ「ッ──」
誰かが助けにきてくれるなんて、思ってもみなかった。
元の世界では、僕を助けようとしてくれる人なんかいなかったから。
炎の魔獣「フー・・・」
宿利ユウ「・・・あいつも消耗してるんだ」
リーナ「ユウは怪我、大丈夫?」
宿利ユウ「血は止まってる。 そのうち自動回復するはずだ」
リーナ「無茶をしたのね」
宿利ユウ「忘れてたんだ。僕はひとりじゃないってこと」
リーナ「どうする?」
宿利ユウ「僕のスキルで、攻撃を返し切れれば──」
リーナ「ユウ、これを」
リーナ「この腕輪を付ければ、守りの力を高めることができるの」
リーナ「スキルだけに集中して!」
宿利ユウ「わかった」
リーナ「力を貸してね、ミーア」
宿利ユウ「ミーア?」
リーナ「・・・妹が、最後に作ってくれたものなの」
リーナ「ユウに託すね」
宿利ユウ「そんな大切なものを・・・」
宿利ユウ「来る! 下がって!」
リーナ「一緒に受け止めるわ!」
宿利ユウ「ぐっ」
「いけぇぇぇ!」
宿利ユウ「やった・・・!」
宿利ユウ「魔獣の力が強い分、返しの攻撃も強力になるはずだ。これで──」
宿利ユウ「まだ倒せないのか!?」
・・・次の攻撃は返せない。
宿利ユウ「負けた──」
リーナ「まだよ」
リーナ「あの魔獣を見たときから、育ててたの」
リーナ「水と土と、あの魔獣の光があれば、植物は急激に成長する」
リーナ「ユウがここまでやってくれたんだもの。 あとは私が──」
リーナ「くっ。焼き切られる・・・!」
宿利ユウ「貸して!」
うっ・・・。これ、重い──
いくら努力しても、報われないことはある
でも、だからといって諦めてしまえば
できるはずのこともできなくなるんだ
そんなふうに終わりたくない。
だから──
宿利ユウ「僕は、絶対に諦めない!!」
〇滝つぼ
「・・・」
『レベルが上がりました』『レベルが上がりました』『レベルが上がりました』『レベルが上がりました』『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』『レベルが上がりました』『レベルが上がりました』『反撃のスキルレベルが上がりました』
『スキルレベルの上昇効果は、対応可能威力の上昇です』
宿利ユウ「リーナも、このメッセージを?」
リーナ「ユウも?」
「はぁぁぁ」
勝ったんだ、僕たち。
宿利ユウ「・・・そうだ。リーナ、弔いをしたいんだ」
宿利ユウ「この湖の底には、大勢の死者が眠ってるから──」
宿利ユウ「おかしいな。 詰まった氷は解けたはずなのに──」
〇岩の洞窟
〇坑道
ヴィオ「ふー、ふー。 まったく、空を飛べれば一瞬だというのに」
ヴィオ「ん?」
〇坑道
ヴィオ「何事だー!?」
〇大樹の下
リーナ「驚いた。ユウ、大丈夫?」
宿利ユウ「いたた。何とか・・・」
ヴィオ「ユウ、貴様、無事だったのか!」
宿利ユウ「リーナが助けてくれたおかげでね」
リーナ「ヴィオ様が知らせてくれたのよ。狭い場所で、自分は素早く動けないからって」
宿利ユウ「素早く動けない? ヴィオが?」
ヴィオ「私の脚は地を蹴るのに向いておらぬのだ」
ヴィオ「この程度のダンジョンなら問題ないと思っていたが・・・」
宿利ユウ「あ・・・」
〇坑道
宿利ユウ「じゃあ置いていけばいいだろ」
ヴィオ「そうできればよいのだが・・・」
〇大樹の下
宿利ユウ「もしかして、走ったら僕より遅い?」
ヴィオ「地を這う生き物と走って比べようなどとは思わぬ」
ヴィオ「私はただ、空を飛ぶだけだ」
宿利ユウ「・・・ああ、そうだった」
〇体育館の舞台
高校のオープンスクールで、先生が言ってた。
先生「得意なことは人それぞれ違います」
先生「学校では、運動や勉強ができる人が目立つかもしれません」
先生「しかし、人の『特技』はもっと多種多様です」
先生「絵が得意な人、話がうまい人、豊かな発想力を持った人」
先生「すべての人は、何かにおいてナンバーワンになれる可能性を秘めています」
先生「特技は何か。君だけの強みは何か。それを見つけ、伸ばしていくこと」
先生「『一芸一能に深く達する』という教育理念には、そのような意味があります」
宿利ユウ「僕の、得意なこと・・・」
勉強も運動も苦手だった僕に、その教育理念は深く刺さったんだ。
〇教室
だから、どれほどつらくても学校に通い続けた。
いつか、自分だけの強みを見つけるために。
――つらいことが多すぎて、いつの間にか忘れていた。
〇大樹の下
宿利ユウ「そうだな。勝てるように戦えばいいんだ」
ヴィオ「・・・フン」
ヴィオ「さぁ、帰るぞ。 貴様を連れていては仕事にならぬ」
宿利ユウ「あ、待って」
リーナ「これって・・・」
宿利ユウ「湖の底に沈んでた人たちだ。 この人たちが助けてくれて──」
「!?」
ヴィオ「こやつらも、ある種のゴースト族か」
宿利ユウ「消えていく・・・」
宿利ユウ「――やっと、出られたんだね」
宿利ユウ「ん? 僕に?」
宿利ユウ「宝石・・・?」
ヴィオ「こ、これは、魔石ではないか!」
宿利ユウ「ませきって?」
リーナ「魔獣や魔族の力を高める石よ。きっと、ユウが倒した魔獣が持ってたのね」
ヴィオ「ユウが!? 倒した!? 魔石の魔獣をか!?」
宿利ユウ「あ、うん。たぶんそいつがダンジョンの異変の原因だと思うけど・・・」
宿利ユウ「なんでそんなに驚くんだよ!?」
「・・・・・・」
宿利ユウ「え? 何?」
リーナ「ユウ、その魔石は大事に持ってて。 いつか、必要になる時が来るまで──」
宿利ユウ「うん・・・?」
宿利ユウ「そうか。これを湖に落としたおかげで、君たちは外に出られたんだね」
宿利ユウ「よかった」
リーナ「弔いをしたいって、言ってたよね」
〇宇宙空間
彼らの魂は、遠い故郷へと帰っていくのだろうか──
いやぁ~強い敵でしたが何とか倒せたし、ガイコツ達の弔いも出来て良かったです😫💨
大変な戦いだった分レベルが上がりまくるとこがすごく爽快でした🤗✌️
リーナが助けに来てくれたときのユウの涙に、ぐっと来てしまいました…。
諦めずにやり続けたからこそ、仲間にも恵まれ、もぎ取れた値千金の勝利ですね!
近づくとデッドエンドになるボスを、知力と仲間の協力で倒す、熱い展開でした!(物理的にも熱い…笑)
ダンジョン脱出後の弔いシーンの演出も、とても美しかったです^^
他の人と比べるとゆっくりペースですが、一歩ずつ確実に成長しているユウ。大幅なレベル上げも成功し、次の展開が楽しみです!