8話 ダンジョン探索(脚本)
〇坑道
反撃が効かない・・・!
何度やってもダメだ。どうして?
ヴィオ「貴様のスキルに新しい弱点が見つかったな」
ヴィオ「アレは、毒を吐いて獲物をじわじわと弱らせる魔獣だ」
ヴィオ「毒を吐くものに毒を返してもダメージにはならぬ。さあ、どう倒す?」
宿利ユウ「くっ。反撃が効かないなら──」
ドロドロの魔獣「キュ?」
・・・ダメだ。まるで効いてない。
こちらはうっかり攻撃を食らえば毒をあびてしまうというのに。
宿利ユウ「あのさ、剣とか持ってない?」
ヴィオ「あったところで、貴様の攻撃力ではたいしたダメージにならんだろうな」
宿利ユウ「じゃあ、どうしろっていうんだ?」
ヴィオ「自分の頭で考えるのだな」
どうする?
これじゃ、僕のMPが尽きる方が先だ
『反撃のスキルレベルが上がりました』
宿利ユウ「えっ!?」
効いてなくても、使い続けるとスキルレベルが上がるのか。
そういえば反撃はレベル4になったけど、いったい何が変わったんだ?
ヴィオ「・・・考え事をしている場合か?」
しまった! 挟み撃ちだ!
・・・いや。
むしろチャンスだ。
できるかどうか、わからないけど。
──来る!
これを・・・あっちへ!
宿利ユウ「できた!」
反撃の対象は、直接攻撃してきた相手だけじゃない。
攻撃を跳ね返す方向を選べるのだ。
あとは蜘蛛の魔獣だけ。
攻撃力が高い相手を倒すのは簡単だ。
宿利ユウ「・・・ふぅ」
ヴィオ「本当に他者頼みだな、貴様のスキルは」
宿利ユウ「のんきそうに・・・。大変だったんだぞ」
ヴィオ「さっさとゆくぞ。遅れるな」
宿利ユウ「あっ、待てよっ!」
〇坑道
宿利ユウ「よし、コツがつかめてきた」
宿利ユウ「・・・それにしても、数が多いな」
ヴィオ「おかしい。数が少なすぎる」
宿利ユウ「え?」
ヴィオ「魔獣の大量発生・・・」
ヴィオ「ダンジョンの中で増えすぎた魔獣が外に出てきたものだと思っていた」
ヴィオ「だが、それならダンジョンの中はもっと魔獣だらけになっているはずだ」
宿利ユウ「これ以上!?」
今だって、僕のMP回復は間に合っていないのに・・・。
宿利ユウ「・・・ん?」
〇洞窟の深部
宿利ユウ「うわっ」
宿利ユウ「ヤバイ! 捕まった! 動けない!」
ヴィオ「・・・はぁ。なぜ貴様はいつもそうなのだ」
宿利ユウ「なんでヴィオは引っかかってないんだよ!?」
ヴィオ「慎重に行動すればよいだけの話だ」
宿利ユウ「ダメだ、糸が粘ついて離れない!」
宿利ユウ「わっ」
スキルが不発だった!?
ヴィオ「なるほど。貴様のスキルはダメージを与える攻撃にしか使えないのか」
ヴィオ「これも弱点だな。拘束系の魔法を使えば、簡単に無力化できそうだ」
宿利ユウ「分析してる場合か!?」
直接的な攻撃しか返せないなんて。
このまま視界まで奪われたら、一巻の終わりだ!
・・・でも、魔獣にそんな知能ってあるのか?
知能は、なかった。
『レベルが上がりました』
やった。・・・でも、それで糸を千切れるわけじゃない。
宿利ユウ「あのー、ヴィオさん」
ヴィオ「情けない」
宿利ユウ「助かった・・・」
ヴィオ「・・・が、たいしたものだ」
宿利ユウ「ん? 何か言った?」
ヴィオ「何も言っておらぬ。さぁ、進むぞ」
宿利ユウ「それが、今のでMP尽きてて」
ヴィオ「まぁ、そんなものか。 ならば後ろに下がっていろ」
〇坑道
早い――
どの魔獣も、離れたところから一撃だ。
ヴィオの性格は慎重そのものだけど、いざ戦いになると本当に強い。
ヴィオがもっと無謀な性格だったら、僕は死んでたんだな・・・
ヴィオ「ふぅ。やけに暑いな」
宿利ユウ「そう?」
宿利ユウ「・・・僕、足手まといだったんだな」
宿利ユウ「・・・・・・」
〇教室
昔から、何をやってもダメだった。
みんなより勉強をがんばっても、テストは平均以下。
駆けっこはいつも最下位だった。
宿利ユウ「僕は落ちこぼれなの?」
そんな僕に、父さんが言ったんだ。
できないと思うなら、
人の何倍も努力しなさい。
そうすれば、きっと報われるから──
だけど、僕は報われなかった。
人の2倍も3倍も努力しているのに、皆の『普通』にさえ届かないんだ。
〇グラウンドのトラック
中学で陸上部に入った僕は、同じ部の誰よりも練習に励んだ。
そして、誰よりもタイムを縮めた。
だけど、いつまでたっても僕は、陸上部の中で最下位のまま。
宿利ユウ「努力すれば報われるって、本当に?」
僕は努力しているけれど、何も結果を出せないでいる。
〇魔王城の部屋
これだけレベルを上げても、僕のステータスはレベル1の板東に負けている。
人の何倍も努力したのに、人並みにさえなれないなんて・・・
だったら、僕ががんばる意味って何なんだろう。
僕はいつまでがんばればいい?
いつになったら、報われるのだろう・・・
〇坑道
宿利ユウ「邪魔になるのがわかってるなら、僕なんか連れてこなければよかったじゃないか」
ヴィオ「貴様のおもりなどしたくないと、最初から言っておるだろう」
宿利ユウ「ッ──」
宿利ユウ「じゃあ置いていけばいいだろ」
ヴィオ「そうできればよいのだが・・・」
「!!」
ヴィオ「おい、前に出るな!」
宿利ユウ「才能があるヴィオにはわからないよ!」
宿利ユウ「それでも努力し続ける以外に、どうしろっていうんだ・・・」
ヴィオ「戻れ、ユウ!」
ヴィオ「貴様のスキルでは、そいつの攻撃を跳ね返せないぞ!」
宿利ユウ「え?」
宿利ユウ「わっ」
ヴィオ「ユウ!」
〇岩の洞窟
ここは・・・?
宿利ユウ「ヴィオ!?」
・・・
まさか、転移魔法で引き離されたのか!?
努力しても、努力しても普通になれない。切実な叫びですね。
ユウがその葛藤に対して答えを見つけてくれるのか…この先も楽しみに読ませて頂きます。
ユウくん…いつか努力が実って覚醒して欲しい…!
努力しても報われない。胸が痛いです。
宿利君が大器晩成型でありますように。