第ニ話 目には目を、歯には歯を(脚本)
〇ネオン街
浮気、二股、裏切り
私には無縁の言葉だと思っていた
だって
私たちの愛に偽りはないと信じていたから
でも
ひとつ歯車が狂うと
簡単に愛は憎しみに変わり
女は悪女に変貌する
ズブズブな関係
~それぞれのFOCUS~
高力恵美 編 2
──第ニ話──
目には目を、歯には歯を
〇シックなバー
シ―クレット店内
間宮由紀「お待ちしてました」
〇ネオン街
早速
私は謎の女性間宮由紀から
シ―クレットに呼び出された
〇シックなバー
間宮由紀「高力さん。あなたをレクチャーするにあたっての約束ごとは覚えていますね」
高力恵美「あなたが何者なのか詮索しない」
高力恵美「そしてあなたの存在を誰にも口外しない」
間宮由紀「ご名答」
間宮由紀「その言葉を胸に刻み絶対忘れないでね」
間宮由紀「それと」
間宮由紀「これから会社では、私以外誰も信用してはいけません」
間宮由紀「この前お話したシバトヨ暗黙の慣習は覚えてますね?」
高力恵美「ええ」
高力恵美「会社で上を目指すなら、不正、妨害、横取り、何でもあり」
高力恵美「そして二股、不倫、浮気も・・・」
高力恵美「それが上に上がる手段になるなら遠慮はいらない」
間宮由紀「そうです」
間宮由紀「これから会社では狩るか狩られるか」
間宮由紀「敗者にならぬよう誰にでも細心の注意を心がけて」
高力恵美「分かったわ」
高力恵美「それで間宮さん」
高力恵美「私は何よりもまず真治と林真理子に一泡吹かせてやりたいけど」
高力恵美「何をすればいい?」
間宮由紀「積極的ね」
間宮由紀「一の矢はこれよ」
スマホ画像
間宮由紀「あなたもご存知よね」
間宮由紀「この人がタ―ゲット」
高力恵美「平野係長?」
間宮由紀「そう」
間宮由紀「現シバトヨ係長平野忠司。35歳独身」
間宮由紀「あなたにはこの人を誘惑して欲しいの」
高力恵美「ええっ!」
間宮由紀「今さら出来ませんは無しよ」
高力恵美「・・・」
間宮由紀「高力さんはハンムラビ法典を知ってるかな?」
高力恵美「ええ、聞いたことはあります」
間宮由紀「目には目を、歯には歯をというフレ―ズが有名よね」
高力恵美「はい」
間宮由紀「土田真治は主任の役職を獲得する為、あなたを裏切り上司と肉体関係を持った」
間宮由紀「だから同じように高力さん!あなたも上司を利用し目標を達成するの」
高力恵美「(唾を飲む音)」
高力恵美「でも間宮さん」
高力恵美「主任の役職を獲得するには、あくまで直属の上司」
高力恵美「つまり林主任の推薦が影響すると言っていましたよね?」
高力恵美「だとすれば、係長の誘惑なんて」
高力恵美「全く意味がないのでは?」
間宮由紀「心配しないで」
間宮由紀「ニの矢があるから」
高力恵美「えっ?」
間宮由紀「あなたが係長を誘惑出来れば作戦成功」
間宮由紀「分かった?」
高力恵美「はい。でも?どうやって誘惑を」
間宮由紀「今度の休日」
間宮由紀「まずは彼のマニアックな趣味を共有しましょう」
高力恵美「ハア?」
〇空
休日
私は間宮さんの指令である場所に向かう
その場所
〇大水槽の前
水族館
間宮さんの情報だと
平野係長は無類の魚好き
要するに魚オタクである
そのせいで今まで恋愛は続かず
いつの間にか魚が恋人になってしまった
私は偶然を装い平野係長に近づいた
高力恵美「平野係長?」
平野忠司「高力君!ここで何してるの?」
高力恵美「え―っと」
高力恵美「係長、誰にも言わないで下さいね」
高力恵美「実は私、昔から魚の鑑賞が好きで」
高力恵美「各地の水族館を一人で巡る魚オタクなんです」
平野忠司「そうなんだ。知らなかったよ」
高力恵美「係長はお一人ですか?」
平野忠司「高力さん。誰にも言わないでよ」
平野忠司「実は私も魚オタク」
高力恵美「ええっ?」
高力恵美「意外でした」
高力恵美「それならお互い遠慮なく話が出来ますね」
平野忠司「そうだね」
高力恵美「ご一緒させてもらっていいですか?」
平野忠司「ああ」
〇水中トンネル
会社ではほとんど会話もしないのに
こうして話をしていると
けっこう包容力もあって
頼り甲斐のある人物だと分かる
そんな人物だと知ったのに
それでも騙して近づく私
胸が詰まる思いだ
〇空
〇高層ビル
〇オフィスのフロア
平野係長と水族館で会った週明けのオフィス
林真理子「高力さん。ちょっと」
高力恵美「はい」
〇非常階段
相変わらずこの女の攻撃が続く
林真理子「あなたって本当に肝が据わっているというか なんというか」
林真理子「デリケートな人かと思っていたけど、意外と無頓着よね」
林真理子「周りから無視されている事分からない?」
林真理子「まだ会社辞めないの?」
高力恵美「はい」
高力恵美「もう少し踏ん張ってみようかと」
林真理子「無駄な努力よ」
林真理子「どれだけ頑張っても無意味」
林真理子「あなたがここで輝く事は永遠にないから」
林真理子「だから何度も言わせないで」
林真理子「早くここを辞めな」
そんな攻撃を受けても
私は強い気持ちでやり過ごせる
高力恵美(私には後ろ楯がある)
高力恵美(思い通りにはさせないわ)
〇ネオン街
〇シックなバー
間宮由紀「とりあえず最初の接触は成功ね」
間宮由紀「ご苦労様」
高力恵美「(ため息)」
間宮由紀「もしかして平野係長に良からぬ感情を抱いていないよね」
高力恵美「騙しているのが申し訳なくて」
間宮由紀「そんな感情必要ないわ」
高力恵美「・・・」
間宮由紀「高力さん。あなたは元カレがした事をもう忘れたの?」
高力恵美「えっ?」
間宮由紀「10年間あなたが貫いた一途な愛をいとも簡単に裏切る」
間宮由紀「男は所詮そういう生き物。だから私は」
間宮由紀「男は性欲、出世欲を満たすだけの道具」
間宮由紀「ずっとそう思ってるわ」
高力恵美「間宮さんってドライな感覚なんですね」
高力恵美「それで・・・次は何を?」
間宮由紀「人事通達の日が近づいているから」
間宮由紀「もっと平野係長を誘惑しておく必要があるわね」
間宮由紀「出来ればあなたに恋愛感情を抱かせるぐらいに」
高力恵美「それって肉体関係を持てという事ですか?」
間宮由紀「それは高力さんの判断に任せるわ」
間宮由紀「でも・・・」
間宮由紀「会社で上を目指すのに、悪女になる事は必要不可欠よ」
間宮由紀「出世の道具と思えば、肉体関係なんて難しく考える必要もないでしょ?」
高力恵美「(ため息)」
間宮由紀「誘惑方法は高力さんにお任せするわね」
〇高層ビル
〇オフィスのフロア
相変わらずこの2人は
会社でラブラブな雰囲気を漂わせる
悔しい思いを噛み締めながら
私は平野係長への誘惑方法を思案していた
たが・・・
予想外の展開に
メ―ル音
〇空
メ―ルは平野係長からの
当日デ―トのお誘い
カモフラージュで会社は別々の時間に退社
〇広い改札
駅の改札口で待ち合わせる
平野忠司「待たせちゃったかな?」
高力恵美「いいえ」
高力恵美「デ―トが楽しみで待ち時間は気になりませんから」
平野忠司「嬉しい言葉だね。では行こうか」
〇アーケード商店街
間宮さんから
平野係長は恋愛経験があまりないと聞いていたけど
〇映画館の入場口
デ―トプランをしっかり考えてきてくれて
〇映画館の座席
女性を飽きさせない
〇ラーメン屋のカウンター
庶民的なデ―トだけど
私のためにしっかりプランニングしてきてくれた事が
もの凄く嬉しくて
〇カラオケボックス
真治の二股という裏切りで
私の心に広がった傷を
彼は排除し癒してくれた
だから
〇川沿いの公園
そのまま成り行きで
口づけを交わした
〇空
そして
人事選考会議の前日
事件が起きる
〇高層ビル
会社の内部通報窓口に
匿名のメ―ルが送信されたのである
その驚愕の内容
それは
〇オフィスのフロア
3ヶ月前
真治は○○物産への納品数量をミス
そして
林真理子に報告するが
担当上司としての管理評価が落ちるため
2人は共謀して書類のねつ造
ミス発覚を隠蔽したのである
それが・・・証拠書類のファイルとともに
会社の内部通報窓口で暴露される
まさに「寝耳に水」の出来事だった
そして
真治と林真理子は
会社の処分が決定するまで
即日自宅待機となる
〇高層ビル
そしてその翌日、人事選考会議が開催
その数日後
〇オフィスの廊下
私と千夏は課長の橋本香里奈から
呼び出される
〇綺麗な会議室
橋本香里奈「どうぞ」
高力恵美「失礼します」
彼女は課長の橋本香里奈38歳
同期や先輩をごぼう抜きで課長に抜擢された
エリ―トコ―スをひた走る人物
橋本香里奈「人事の発表をするから座って」
〇高層ビル
結論から先に言うと
私はポストが空いていた係長代理に抜擢
千夏は主任に昇進した
そして
林真理子は隠蔽の責任を取らされ
主任代理への降格および謹慎1ヶ月
また
真治も謹慎1ヶ月となり
昇進は見送られた
〇綺麗な会議室
橋本課長の話だと
林真理子は隠蔽が発覚した時点で
人事選考への加担は取り消し
代わりに会社の取り決めでその上の上司
つまり平野係長にバトンが移った
そして
橋本香里奈「最終的にあなた達と土田君の3人が最終選考に残っていたけど」
橋本香里奈「残念ながら土田君は仕事のミスで失脚」
橋本香里奈「そして残ったあなた達2人選考だけど」
橋本香里奈「平野係長からの強い要請で」
橋本香里奈「高力さん。あなたが係長代理に抜擢されました」
橋本香里奈「一般社員がいきなり係長代理に昇進なんて」
橋本香里奈「今まで前例がないけど」
橋本香里奈「期待してるわよ」
この時初めて私は間宮さんの凄さを痛感した
そして今回の内部通報が
間宮さんが言っていたニの矢だったと理解した
だが
同時に疑問点も浮上した
内部通報窓口は外部からのアクセスは不可能
つまり
誰か内部の人物がアクセスしたのだ
だが
それ以上の詮索はやめた
今回の件ではっきりした事は
間宮さんを敵に回せば
勝ち目はないと悟ったから
〇オフィスの廊下
雨宮千夏「恵美」
雨宮千夏「ちょっと聞いてもいい?」
高力恵美「何?」
雨宮千夏「あなた」
雨宮千夏「平野係長と何かある?」
高力恵美「えっ!」
雨宮千夏「それとも誰か指南役でもいるの?」
高力恵美「何の話?ゴメン!先行くね」
この時はまだこれが
生き残りゲ―ムの始まりだとは
知る由もなかった
面白くて2話目も読みました🙌悪女を捨てきれない主人公。揺れ動く良心に今後の展開も目が離せません!