いじめられっこ、魔王軍に転生する

坂井とーが

7話 レベル上げ(脚本)

いじめられっこ、魔王軍に転生する

坂井とーが

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〇闘技場
白崎蓮「――レベルが上がった」
賢者「お見事です、勇者様! 高いステータスに加え、強力なスキルまで!」
賢者「勇者様なら、必ず魔王を倒してくださるでしょう!」
白崎蓮「この程度のことで騒ぐな。 それより、もっと魔物を連れて来い」
賢者「はい、ただいま」
市沢恭也「レン、調子はどうだ?」
白崎蓮「フッ」
市沢恭也「もうレベル20か! しかも、化け物みたいなステータスだな!」
白崎蓮「勇者の成長補正ってやつだろう」
白崎蓮「拘束された魔物を殺すだけで、ここまで強くなれるとはな」
白崎蓮「どこまでも生ぬるい世界だ」

〇闇の要塞

〇闇の闘技場
宿利ユウ「くそっ! もう一度だ!」
ヴィオ「どこを狙っておるのだ?」
宿利ユウ「くっ」
宿利ユウ「わっ!?」
ヴィオ「フン。これが実戦なら、死んでおったぞ」
宿利ユウ「ううっ。思いっきり攻撃してこなくても・・・」
ヴィオ「何を言うか。貴様程度のステータス、私が本気を出せば今ごろ細切れになっておるわ」
宿利ユウ「ですよねー」
ヴィオ「貴様のスキルは決まれば強いが、弱点もある」
ヴィオ「発動のタイミングがずれると効果が下がるようだな」
宿利ユウ「おっしゃる通り」
ヴィオ「そして、背後からの不意打ちにものすごーーーく弱い!」
  そうだ。僕も自覚していた。
宿利ユウ「レベルを上げれば何とかならない?」
ヴィオ「貴様のステータスのことだ。 目覚ましい伸び方は期待できまい」
  グサッ──
ヴィオ「まったく。魔王軍はとんだお荷物を抱え込んだものだな」
宿利ユウ「・・・僕たちをここに連れて来たのは誰だ?」
ヴィオ「むっ」
  悔しいけど、今の僕ではまるで戦力にならない。
  でも、慣れればヴィオの超速にもついていける気がする。
  ゲーム廃人が称号になるくらい、僕はゲームで反射神経を鍛えている。
  もっとも、僕がゲームにのめり込んだのは、高校で友達ができなかったからだ。
  あいつらのせいで、回り回って今戦う力を得ているわけか・・・
二宮叶恵「宿利くーん!」
二宮叶恵「訓練お疲れさま」
宿利ユウ「二宮さん、その格好は!?」
二宮叶恵「えへへ。 私、魔王軍の医務室をまかされたの」
宿利ユウ「そうか。二宮さんのスキルは『回復』だったね」
二宮叶恵「うん。傷を治してHPを回復するスキルよ。 宿利くんも『回復』する?」
宿利ユウ「平気。自動回復が追いついてる」
二宮叶恵「そっか。じゃあ、私は他の人たちの様子を見てくるね!」
  二宮さん、前の世界にいた頃より生き生きしてるな。
ヴィオ「・・・貴様、今の訓練でHPが減っておらぬのか」
ヴィオ「まったく。スキルにだけは恵まれた奴め」
宿利ユウ「あ、スキルといえば」
宿利ユウ「HP自動回復はシステム外スキルらしいんだけど、どういう意味かわかる?」
ヴィオ「知るものか。異世界人の特異なスキルなど」
アマデウス「システム外か・・・。興味深いな」
ヴィオ「魔王様!」
アマデウス「様子を見にきたら、話が聞こえてな」
アマデウス「そもそもレベルシステムとは、こちらの世界で構築された力の理(ことわり)だ」
アマデウス「もしかすると、この世界の外――ユウの世界の理をシステム外と呼ぶのではないか?」
宿利ユウ「だとしても、僕のいた世界に自然治癒より早い自動回復なんてありませんでした」
ヴィオ「あったところで、システムが世界を越えて干渉してくるとは考えにくいですな」
宿利ユウ「世界を越えるって、そんなに難しいの?」
ヴィオ「ああ。聞いた話によると、何十年も儀式を続け、異世界人の生贄を待つのだとか」
宿利ユウ「生贄!?」
ヴィオ「そういえば、貴様のステータスに『生贄』という称号があったな」
アマデウス「なるほど。異世界人たちは、ユウの命を使って世界の壁を越えたのか」
宿利ユウ「そのために、僕は殺された──」
アマデウス「ということは、この世界で死んでゴースト化したわけではないのか」
宿利ユウ「たぶん、そうです。こちらに来る前に、システムにより・・・死にました」
宿利ユウ「そのとき、生贄として承認されたみたいです」
ヴィオ「その儀式なら、私が遠隔狙撃で妨害したはずだが・・・」
アマデウス「儀式が不完全だったせいで、死にきれなかったのかもしれないな」
宿利ユウ「え・・・?」
アマデウス「元の世界に肉体を残し、魂だけがこちらで別種族としての命を得たのだとしたら──」
ヴィオ「転生前の世界で、肉体の方が治癒士による治療を受けている──」
ヴィオ「そう考えれば、システム外スキルの説明も付きますな」
宿利ユウ「・・・僕の体が、病院にいる?」
  HPが減るたびに、治療を受けているということなのか?
  生きてるかもしれない・・・?
ヴィオ「ん? 何を泣いておるのだ?」
宿利ユウ「な、泣いてないっ!」
ヴィオ「フッフッフ。ヴィオ『様』と呼んでもよいのだぞ。貴様の命の恩人だ」
宿利ユウ「なんか・・・微妙にムカつくな」
  でも、希望が見えた。僕は生きて向こうの世界に帰れるかもしれない。
  白崎さえ、こちらで倒してしまえれば──
魔族「魔王様ッ! 大変です!」
アマデウス「どうした?」
魔族「人間の国との国境付近で、魔獣が大量発生しています!」
アマデウス「国境付近か。争いの火種になりかねないな」
ヴィオ「魔王様、ここは私におまかせください!」
ヴィオ「魔獣の100体や200体、すぐに狩り尽して参りましょう!」
アマデウス「頼もしいな、ヴィオ」
アマデウス「ならばついでにユウを頼む。 レベル上げにちょうどいいだろう」
ヴィオ「え・・・」
アマデウス「まかせたぞ」
ヴィオ「ええええ!? 私は結局こやつのおもりなのですか!?」
宿利ユウ「・・・不服そうだな」

〇大樹の下
宿利ユウ「魔獣退治か・・・。そもそも魔族と魔獣って、違うものなの?」
ヴィオ「どこが同じだというのだ」
ヴィオ「魔族とは、対話のできる知能を持ったもののことをいう。それを持たぬ獣が魔獣だ」
ヴィオ「そういう意味では、人間も『魔獣』かもしれぬがな」
宿利ユウ「棘のある言い方だな・・・」
ヴィオ「この40年間、我々が対話を試みなかったとでも思うのか?」
ヴィオ「聞き入れられることはなかったのだ。 一言も──」
  ・・・想像以上に、溝は深いらしい。
宿利ユウ「どうかしたの?」
ヴィオ「貴様、気づかぬのか」
宿利ユウ「え?」
宿利ユウ「うわああああ!」
ヴィオ「おい、転んでいる場合か!」
宿利ユウ「びっくりした・・・!」
ヴィオ「はぁ。なんと格好の付かない倒し方か」
宿利ユウ「倒したんだからいいだろ。というか、気づいてたなら助けてよ」
ヴィオ「手を貸しては貴様のレベル上げにならんだろう」
ヴィオ「それより、あの魔獣は暗い場所を好むはず。昼間に出歩いているのは異常だ」
ヴィオ「ダンジョンに異変が起こっているのやもしれん。ゆくぞ!」
宿利ユウ「ま、待ってっ」

〇坑道
宿利ユウ「・・・もっと奥まで行くわけ?」
ヴィオ「どうした、怖いのか?」
宿利ユウ「――いや、別に」
  慎重なヴィオがずんずん進んでいくということは、それほど危険じゃないんだろう。
ヴィオ「む。ユウ、これをどうする?」
宿利ユウ「どうするって、どうせ僕が倒すんだろ」
  大丈夫だ。
  タイミングさえ合わせれば──
宿利ユウ「・・・あれ?」
宿利ユウ「効いてない!?」

次のエピソード:8話 ダンジョン探索

コメント

  • 現実の世界に残してきた謎がちょっとずつ分かってきましたね❗白崎、ちょっとカッコいいとこがズルいんですよ😅私は強い男に弱いので💦ルックスもいいし。
    そして今回ヴィオがお父さんに見えてきました😁何だかんだ優しい✨

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