星売りのメテオシスター

オカリ

8.少女の夢(脚本)

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〇病院の入口
粟島研究員「や〜っと到着だ ロングドライブは腰にくる・・」
粟島研究員「さて、お望み通り望遠鏡──」
粟島研究員「・・の残骸だけどな」
粟島研究員「一応、持って行くか・・」

〇病室の前
粟島研究員「長岡茉莉は・・」
粟島研究員「おや?」

〇病室のベッド

〇病室の前
粟島研究員「アレは妹の長岡花陽だ 姉の方は不在、か」
粟島研究員「そういえば以前──」

〇病室の前
粟島研究員「え〜っと、たしか病室は・・・」
長岡花陽「あ〜!あぁ〜〜! お星だあ〜〜!」
粟島研究員「今のは・・・長岡茉莉の妹か?」
粟島研究員「いったい何の話を・・?」
長岡茉莉「あ!他の人には秘密よ! 絶対言っちゃダメだぞ〜?」
長岡花陽「ごくひにんむ、だね! ラジャーねえちゃ!」
粟島研究員「隕石を妹に見せてるのか!」
粟島研究員「ということは、持ち歩いてるか 病室の中に隠して──」

〇病室の前
粟島研究員「あの時は廊下へ出た長岡茉莉に 通報されかけたが・・」
粟島研究員「もしや、チャンス到来か?」

〇病室のベッド
  あの妹、隕石の隠し場所を
  知っている可能性が高い
  あの姉から聞き出すより・・
  よっぽどやりやすそうだ

〇病室の前
粟島研究員「・・・・・・よし」
粟島研究員「相手はただの子供・・ 世間知らずの女の子」
粟島研究員「『将を射んとするならまず馬を』 ・・って言うしな」
粟島研究員「舌先三寸、オトナのしゃべりで 懐柔して・・うまく聞き出すか!」
  第8話
  少女の夢

〇病室のベッド
長岡花陽「へぇえ!お星の研究してるんだ!」
長岡花陽「すごいすごいっ! たんさきも使うの!?」
粟島研究員「たんさき・・・探査機か そっちは組織が違うなぁ」
粟島研究員「取ったサンプルはウチにも まわしてくれるけど・・・」
粟島研究員「まだ小さいのによく知ってるね」
長岡花陽「ふっふ〜! コレ読んだんだ〜!」
  『小惑星探査の展望と挑戦』・・
  なかなかイカつい本を読んでるな
  著者は糸魚川耕三・・・・
  糸魚川?
粟島研究員「コレ・・・糸魚川先生か!」
長岡花陽「知ってるの!?」
粟島研究員「あ──・・ 知ってるも何も・・・」
粟島研究員「・・ウチのボスだ」

〇化学研究室

〇病室のベッド
粟島研究員「妙なとこで繋がったな・・・」
長岡花陽「いーなーー! いーーなーーー!」
粟島研究員「羨まれるほど良い先生でもないけどね」
粟島研究員「隕石盗めって指示したヤツだし」
粟島研究員「しかし・・・・」
  バカに明るいな、この子
  たしか余命一年だよな
  そうは見えないが・・・
  まさか、伝えてないのか?
長岡花陽「どしたのオジちゃん 考えごと?」
粟島研究員「ん、ああ」
粟島研究員「ハナビちゃんは元気だなぁ ・・・・・・って思ってね」
長岡花陽「ちょう元気だよ〜!」
長岡花陽「オジちゃんは元気じゃないの?」
粟島研究員「オジちゃんは────」

〇化学研究室

〇山中の坂道

〇研究所の中

〇高速道路

〇病室のベッド
粟島研究員「──うん」
粟島研究員「元気・・・・ではないかな」
長岡花陽「ありゃま! お疲れもーど?」
粟島研究員「どうだろうね」
粟島研究員「カネも将来も人間関係も・・ なーんも考えず研究に没頭したいけど」
粟島研究員「最近はスパイのマネ事ばかりだ ・・・本当に嫌になる」
長岡花陽「スパイ?」
粟島研究員「やば、口が滑った」
粟島研究員「ああいや、スパイというか 使いっ走りというか・・」
粟島研究員「パシリというか、泥棒というか・・」
粟島研究員「バカ正直に何言ってんだ僕は 子供相手だからか?」
  この子を見てると・・
  自分がどうしようもなく
  ダメな大人なんだって
  
  
  ・・思ってしまう
長岡花陽「お星の研究、できてないの?」
粟島研究員「うん・・・・・・そうだね」
長岡花陽「そっか〜〜 せちがらいね」
粟島研究員「僕のことはいいよ! それよりもさっ!」
粟島研究員「ハナビちゃんは・・・ どうしてこんな本を?」
長岡花陽「ふっふっふ〜! オジちゃん気になる?」
粟島研究員「まあ、そうだね 気になるかな」
長岡花陽「1個目の理由はね〜 いっぱいベンキョーして〜」
長岡花陽「おっきくなったら 宇宙飛行士になってね〜」
長岡花陽「とうちゃとかあちゃに会いに行く!」
粟島研究員「・・・・・・・・・・・・ハァ?」
長岡花陽「ねえちゃが言ってたんだ〜」

〇カラフルな宇宙空間
長岡花陽「とうちゃとかあちゃはね、 お星になったんだって!」
長岡花陽「だからロケットにのって 会いに行くんだ!」
粟島研究員「「星になった」って・・」
粟島研究員「そりゃ言葉のあやだろう 死んだってことじゃないか」

〇病室のベッド
粟島研究員「まさか本気で信じているのかい?」
長岡花陽「んー、むかしは信じてたよ!」
長岡花陽「今は・・・はんぶん、かな?」
粟島研究員「半分、ね・・」
長岡花陽「もう1個の理由はね〜・・」
長岡花陽「・・・・・・」
粟島研究員「ん? どうかしたかい?」
長岡花陽「う〜ん、こっちのはねえちゃに ナイショなんだけど・・」
長岡花陽「オジちゃんってヒミツにするの得意?」
粟島研究員「得意も得意、大得意だよ!」
粟島研究員「オジちゃんほど口の固い人、 そうそうないぞぉ?」
長岡花陽「じゃーねー・・ ちょっとこっち来て!」
長岡花陽「耳!耳近づけて・・」

〇原っぱ
長岡花陽「あのね、おウチに帰ったら ねえちゃと星を見るんだけど・・」
長岡花陽「その時ね、ハナビが先生になるの」
粟島研究員「先生?」
長岡花陽「うん、星のお話いっぱいするんだ」
長岡花陽「たぶんビックリすると思うよ?」
長岡花陽「だから今のうちに ベンキョーしとくんだ〜」
長岡花陽「ねえちゃにヒミツだよ、オジちゃん」
粟島研究員「うん・・・」
粟島研究員「「おウチに帰ったら」、ねぇ」
  ──その時
  不意に、ドス黒い感情が芽生えた

〇病室のベッド
  さっきからキラキラキラキラ
  ニコニコニコニコ──
  なにも知らないから将来が
  明るく見えてやがる
  この眩しさは、毒だ
  宇宙飛行士?星の先生?
  無理だぞ、絶対に無理だ
  夢が叶うなんてひと握り
  こだわり続けて行き着く先は・・
  今の自分だ

〇モヤモヤ
  研究者になりたくて
  でも結果は出なくて
  収入は不安定で
  常に解雇に怯え
  上司から顎で使われ
  見下され
  まわりはデキが良く
  自分だけ取り残され
  積み上げたものは年齢だけ
  挙げ句の果てにはもう──
  研究者でもなんでもない
  コソ泥もどきに身をやつす
  振り向けばなにも──

〇黒
  そうだ
  遅かれ早かれ知るならば
  いま、この場で伝えるのも
  優しさじゃないか?

〇病室のベッド
  この衝動を「魔が差した」
  ・・と呼ぶのかもな
粟島研究員「ねぇ、ハナビちゃん」
粟島研究員「教えてくれた代わりにね ひとつヒミツを教えてあげよう」
粟島研究員「ハナビちゃんに関する秘密だよ」
長岡花陽「ハナビのヒミツ!? なにそれ〜!」
粟島研究員「このニュース、見たことあるかな?」
長岡花陽「あーっ!ねえちゃだ!!」
長岡花陽「ありゃ?ハナビのことも 書いてあるの?」
粟島研究員「実はね・・」
粟島研究員「ハナビちゃん、余命1年なんだって」
長岡花陽「よめい・・?」
粟島研究員「残り1年しか生きられないってコト」
粟島研究員「宇宙飛行士も、星の先生も できないねぇ」
  さあ、どうなる?
  受け入れ難い現実
  ましてや子供なら尚更だ
  絶望して涙を流すか?
  それとも健気に振る舞うか?
  まだニコニコ笑えるか?
  この子はいったい
  どんな顔を──・・
  まっ・・真顔っ!?
長岡花陽「よめい1年かぁ・・」
長岡花陽「ねえ、オジちゃん」
長岡花陽「いま、ハナビにイジワルしたでしょ?」
長岡花陽「ふっふ〜ん、甘いよオジちゃん!」
長岡花陽「まだハナビはちょう元気だからね なんにも諦めないよ〜!」
粟島研究員「だっ、だけどハナビちゃん!」
粟島研究員「お勉強しても役に立たないかも しれないんだよ?」
粟島研究員「もっと残りの人生を楽しんだ方が いいんじゃないかなぁ」
長岡花陽「そうかな、でも楽しいよ?」
長岡花陽「お星の勉強も、話すこともね!」
長岡花陽「あとね、オジちゃん」
長岡花陽「ねえちゃがいるから・・ ぜったい大丈夫なんだ」
粟島研究員「あっ・・」
  ────強がり、じゃない
  まったく揺らいでいない
  それほどまでに
  この少女と姉の信頼関係は──
粟島研究員「すごいな、この子」
粟島研究員「いや、この姉妹と言うべきか」
粟島研究員「あーあ、何が「舌先三寸」だ 「オトナのしゃべり」だ」
粟島研究員「ゴメンな、ハナビちゃん」
粟島研究員「キミの言う通りだ オジちゃんイジワルだったよ」
粟島研究員「許してくれないかな?」
長岡花陽「へへ〜よくないね〜 ど〜しよっかな〜・・」
長岡花陽「あーーそうだっ! オジちゃんお星の研究者じゃん!」
長岡花陽「いろいろ教えてよ! さいしんの星のお話!」
長岡花陽「ゴメンなさいの代わりにね!」
粟島研究員「・・・・・・そうだね」
粟島研究員「じゃあ今日はオジちゃんが 星の先生になってあげよう」

〇病室のベッド
  ──気づけば
  「隕石の隠し場所を聞き出す」
  ・・・なんてことも忘れて
  宇宙と星、そして研究について・・
  ただただ喋っていた
  穏やかな時間だったと思う
  まあ
  そんな経緯を後から来た
  彼女が知るわけもなく
長岡茉莉「たっだいま〜〜!」
長岡茉莉「ハナビ元気にしてた・・か・・・?」
粟島研究員「あ、嫌な予感」
長岡花陽「ねえちゃおかえりーー!」
長岡茉莉「──妹に近づくな」
長岡茉莉「このストーカーッ!!」
粟島研究員「待って、勘違いっ・・!?」

〇病室の前
長岡花陽「ひゅ〜〜! ねえちゃイイ音ぉ!」
  と、思いきりぶっ叩かれたワケだけど
  なぜかスッキリしたのは・・
  僕だけの秘密だ

〇病院の入口

〇おしゃれな大学

〇研究所の中
魚沼准教授「・・・・・・・・・へぇ」
魚沼准教授「湿地遺体(ボグボディ)に 近い状態かと思ったけど・・」
魚沼准教授「ノイズがヒドイなぁ! 従来設定だとお話にならない」
魚沼准教授「スキャンパラメータをイジって 画像再構成の関数も調節・・」
魚沼准教授「さて」
魚沼准教授「キミの魅力を解き明かさないとね」
魚沼准教授「まる裸にしちゃうぞ♡」

次のエピソード:9.抜け殻【閑話】

コメント

  • ハナビちゃんに泣いた
    そして腕が不穏……

  • 花陽ちゃんは余命伝えられても笑ってられるんですね。半分くらい知ってるんだろうな。何と健気な子…。うるうるきました。

    専門書の作者が駄目な人ってのはリアルですね。僕も自分の分野で本の著者に会ったことがありますが、3人に2人はもう会いたくない人でした。

  • 腕だけジョンドゥの正体は次回以降に持ち越し…気になりますなぁ。

    余命一年宣告はヘイトを買う行為ですが、まぁ、彼の周辺事情を考慮すると…。トントンですかねぇ。

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