噂のタイツマン

山本律磨

赤い目の鬼!(脚本)

噂のタイツマン

山本律磨

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〇綺麗なコンサートホール
不敗郎「・・・」
不敗郎「sit・・・何で俺が・・・」

〇役場の会議室
大倉「以上が我々町議会一同の総意だ」
大倉「町長が視察旅行中のため、君に伝えておく」
不敗郎「申し訳ありませんでした」
町議「あの取り上げられ方はいかんよ」
町議「あんなものがいつ、我々の町の代表になったんだね」
大倉「下品な格好で浮かれおって。お前はこの町を全国の笑いものにしたんだぞ」
不敗郎「いえ。笑われたのはあくまでも、私、いやタイツマンであって・・・」
「裏山町の名を出したんだ!同じことだろ!」
「軽率とは思わなかったのかね!」
不敗郎「すみません・・・」
大倉「お前の個人的活動ならともかく、はっきりと町の企画と喧伝されたんだ。あんな下らんものを町民全体が受け入れているとな」
大倉「前々から町長の人気取りは苦々しく思ってたが、あの男の軽薄さはもう勘弁ならん」
大倉「まあ町長選挙は来年だから不信任活動は止めておくがな。それこそ税金の無駄使いだ」
大倉「なあ、お前ら・・・悪ふざけもいい加減にしとけよ」
不敗郎「申し訳ありませんでした・・・」

〇教室
直「・・・!」
折口「おはよー。直」
榊「どうしたでごじゃるか~?」
「・・・!」
  『町の恥さらし!』
  『引っ越せオタク女!』
  『タイツマン殺せ!』
榊「ひどい・・・誰、こんな落書きしたの」
折口「いい加減にしてよアンタ達!」
直「いいから・・・」
折口「でも!」
直「いいから!もう面倒臭い!」
直「何もかも面倒臭い!バカじゃないの!」
直「これでいいんでしょ・・・」
折口「直・・・」

〇山間の田舎道
いぬまろ「へっへっへっへっ」
直「・・・」
いぬまろ「へっへっへっへっ」
直「・・・」
いぬまろ「へっ・・・」
いぬまろ「すんすんすんすん・・・」
いぬまろ「へっへっへっへっ!」
直「ちょっとどこいくのよ!」
「へっへっへっへっ!へっへっへっへっ!」
直「こらっ!待ちなさい!」

〇古びた神社
いぬまろ「へっへっへっへっ!」
直「ここって・・・」

〇古びた神社

〇古びた神社
いぬまろ「おおーん。おおーん」
いぬまろ「おおーん。おおーん」
  『うるさい・・・』
直「え?」
不敗郎「黙想の邪魔、しないでくれるかな」
直「す、すみません」
不敗郎「あ・・・」
いぬまろ「おおーん!おおーん!」
いぬまろ「ぺろぺろっ。ぺろぺろっ」
不敗郎「ちょ、ちょっと。やめろ」
直「こらっ!いぬまろっ!」
不敗郎「え?オスなの?」
直「メスですっ!」
不敗郎「ネーミングおかしくない?」
直「響きが好きなんです」
不敗郎「あっそ」
直「じゃ、じゃあ失礼します」
不敗郎「あ、違うんだ」
直「え?」
不敗郎「君達にうるさいって言ったんじゃない」
不敗郎「自分に言ったんだ・・・」
直「・・・?」

〇木の上
「ゴメンね」
「前に随分とヒドイこと言ってさ・・・」
「・・・」

〇役所のオフィス
不敗郎「もういいかな?」
不敗郎「ネットの受け売り?それともそういう説教する漫画とかあるの?」
直「え?」
不敗郎「君の作品・・・ジーク・デーモンだっけ?」
不敗郎「何だか分かんないけどさ。それって優勝した時点で著作権は町に譲渡されてるんだよ」
直「・・・」
不敗郎「それと、政治は最大多数の最大幸福が基本原則なんだ」
直「な、何ですかそれ」
不敗郎「意味分かんないんですけどー。か?」
不敗郎「多数決だよ」
不敗郎「少数派(マイノリティ)の味方したらお兄さんたち給料もらえないんだよね」
不敗郎「だから芸能芸術への税金使用ってのはどこの自治体もかなり及び腰になるんだ」
不敗郎「当然だよね。認知性のご老人や子育て世代の善良な市民を差し置いてオタクの活動に限りある税金使ったら、町が不幸になっちゃうよ」
不敗郎「超ヤバイんですけどー。って感じだよね」
直「・・・」
映見「ちょっとアンタいい加減に・・・」
不敗郎「オニキングは君だけのものじゃない。採用された時点で町民のものなんだ!」
不敗郎「俺達と同じ公僕なんだよ!」
直「・・・公僕」
不敗郎「そう。一年かそこら適当に持ち上げられてとっとと忘れられる公僕。それがシンボルキャラクターだ」
不敗郎「君もあれだよ。自分を特別視して身勝手なこと言ってると碌な大人になんないぞ」
不敗郎「いつかみんなに面倒臭がられて、誰からも相手にされなくなっちゃうよ」
不敗郎「マイノリティ気取るのもいいけどそろそろ世の中と足並みを揃える事も覚えないと。気が付けば一人ぼっちになって・・・」
直「もういいです・・・」
不敗郎「え?」
直「わかりましたもういいですオニキングなんていりませんあげますさようなら!」
不敗郎「・・・」

〇古びた神社
不敗郎「悪かった・・・」
直「もういいです・・・どうでも」
不敗郎「・・・」
直「それじゃ・・・」
不敗郎「・・・」
直「・・・あの」
直「『モクソー』って何ですか?」
不敗郎「え?」
不敗郎「あ、ああ黙想ね・・・」
不敗郎「精神集中みたいなもんだよ。柔道やってかたから」
不敗郎「黙想中に頭の中で声がするんだ。昔からそうだ。頭のゴチャゴチャを鎮めようと目を閉じても全然ダメだ」
不敗郎「ぶっちゃけ意味わかんねー。って思う時もあるよ。なんだ黙想って、みたいな」
直「そうなんですか」
不敗郎「見ての通りのハーフだろう。親父もお袋もチャラくてさ。何かそういうものに対する反発、みたいな」
不敗郎「誰よりも日本人らしい日本人になりたかったんだろうな」
直「日本人のどこがいいのか分かんないです」
不敗郎「俺もだよ」
不敗郎「でも、中途半端ってのも中々しんどいもんだからね」
直「そうですか?カッコいいと思いますよ」
不敗郎「お、ありがとう」
直「ハーフがです。あなた個人じゃないです」
不敗郎「あっそ」
不敗郎「じゃあ髪も染めるのやめようかな?」
不敗郎「本当はモロに金髪なんだよ。少しはカッコよくなるかな」
直「え?」
直「・・・」
直「もしかして・・・目、赤いですか?」
不敗郎「え?そんな吸血鬼みたいな人間いるの?」
直「・・・冗談です」
不敗郎「柔道だけじゃないよ。書道とか剣道もやってたんだ。算盤も。日本的なもん全般」
不敗郎「母親は日本人でもう亡くなった。親父は、イタリア人でね。今故郷に戻って何かやってる」
直「何かって」
不敗郎「興味ないから。多分、向こうも」
不敗郎「日本の自然や文化がどーしたとかぬかして移住したみたいだけど。結局飽きたんだろうな」
不敗郎「日本にも・・・この町にも・・・」
直「私と一緒だ」
不敗郎「そうなの?」

〇古びた神社
直「知ってます?ここって元々、鬼を祀ってる神社だったみたいです」
不敗郎「そうなんだ。知らなかった」
直「本当は、漂流してきた異人を鬼扱いして虐め殺して祟りを恐れた村人が慌てて作ったものらしいです」
不敗郎「えぐいな~」
直「最低ですよね。最低の町です」
直「これも多数決で決めた最大幸福ですか?」
不敗郎「・・・」
直「・・・すみません。生意気言って」
不敗郎「いや・・・君の言う通りだ」

〇古びた神社
直「ネットで調べただけです。賞がほしくて、自分のキャラに無理矢理鬼を絡めて。別にこの町の事なんて何の興味もないです」
不敗郎「でも、大事なキャラクターだったんだろ」
不敗郎「ジーク・デーモンは」
直「オニキングだって一生懸命仕事してたって思います」
不敗郎「そうだね。そんな俺たちを・・・」
不敗郎「俺達を・・・」
タイツマン「我々を、笑いものにした者達がいる」
ジーク「ああ、断じて許さぬ」
タイツマン「奴らの笑顔は子供達の笑顔とは違う」
ジーク「もうこれ以上、私を貶めさせぬ」
タイツマン「悪ふざけだと?」
ジーク「恥晒しだと?」
タイツマン「戦う時が来たのだ」
ジーク「反撃の時が来たのだ」
不敗郎「F○ckOff・・・!」
直「え?」
不敗郎「あ、ゴメン」
不敗郎「子供の前だった・・・」
直「ははっ・・・」
直「F○ckOffだ!」
直「この町も、東京も、日本も、どいつもこいつもF○ckOffだーーーーーッ!」
いぬまろ「おおーーーーーーーん!」
不敗郎(そうだ・・・あの時決めたじゃないか)
不敗郎(神様なんていないと・・・)
不敗郎(目を腫らして泣いていじけてるだけじゃ、何も変わらないと・・・)
不敗郎(戦うんだ・・・)
不敗郎「戦うんだ!」

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