奴は恐怖のモモタロウ!(脚本)
〇お台場
『東の京、ヤマトテレビ社屋』
「で、それの何が面白いってんだよ!」
〇大会議室
陣原「一週間考えて街ブラってどういう事だ?」
新人D「す、すみません・・・」
陣原「お前さ、テッペン超える仕事につきたいなら風俗ででも働け」
陣原「てか業界やめちまえ!」
新人D「すみません・・・」
陣原「歌手のユウト。役者のナオキ。芸人のけんけん。俺は絶妙なバランスを考えてGO3Q作ったんだぞ。幾らでもアイデア出るだろ」
新人D「あ、あの・・・」
ヴェテランD「あ、いいからお茶汲んで来い」
ヴェテランD「つか空気読めよ新人・・・」
ヴェテランD「そういうのも企画会議の勉強だぞ。つって」
新人D「すみません・・・」
陣原「いらねえよお茶なんか」
ヴェテランD「・・・」
陣原「火に油注ぐなってか?面倒くせえってか?」
ヴェテランD「い、いえそういう訳じゃ・・・」
陣原「茶なら手前で汲んで来いや!」
ヴェテランD「すみません!」
陣原「で、何?」
新人D「いえ。こないだのGO3Qの町興しライブにちょっと面白いものが映ってまして」
陣原「何?見せてよ」
新人D「あ、はい。それじゃ準備を・・・」
陣原「バカか!意見すんなら資料くらい持ってきとけコラ!」
新人D「た、ただちに!」
〇中庭のステージ
〇大会議室
陣原「なんだこのプラカードを掲げた全身タイツ男は?」
新人D「裏山町のローカルヒーローだそうです」
陣原「なんで『緑を大切に』なんだ?」
新人D「啓蒙活動だそうです」
陣原「ふん。取って付けたような文言だな。そんなに芸人ゴッコがしたいのかコイツ」
陣原「いいな一般人は楽しそうで」
新人D「でも地元の子どもなんかは、テレビそっちのけでタイツ男に群がってましたよ」
陣原「そっちのけ?」
陣原「俺の考えたGO3Qはそっちのけか」
新人D「あ、そういう意味では・・・」
陣原「ローカルヒーローねえ・・・」
陣原「なあチーフ。このタイツ、取材できる?」
ヴェテランD「え?まあ多分・・・」
陣原「多分?」
ヴェテランD「いえ、できます!」
ヴェテランD「うちの番組で取り上げてあげるんですよ!断る理由なんてないっしょ!あははは!」
ヴェテランD「・・・」
陣原「・・・」
〇空
『一ヶ月後・・・』
〇役所のオフィス
遠藤「おう、もう帰るぞ」
不敗郎「あ、お疲れさまでした」
遠藤「あんまり根詰めるなよ。残業代出ないんだから」
遠藤「俺はお前の健康が心配で心配で・・・」
不敗郎「じゃあパソコン使えるようになって下さい。そしたら僕の仕事量も」
不敗郎「・・・」
不敗郎「sit・・・!」
〇田舎の役場
〇役所のオフィス
不敗郎「はあ~」
不敗郎「一服して帰るか・・・」
「え~と、オニ、なんですか?」
「オニキングです。私は裏山町のシンボルキャラクター、オニキング。覚えやすいでしょう?」
不敗郎「あ、これこないだ取材された時の・・・」
不敗郎「・・・」
〇中庭のステージ
雛段芸人1「で、なんで緑を大切になんですか~?」
不敗郎「ここには豊かな自然が沢山あります。それを子供達に守ってほしくて掲げてます」
雛段芸人1「オニキングさんは~大自然の味方なんですか~?」
ヴェテランD「ハハハハッ!ハハハハッ!」
不敗郎「いえ。大自然ではなく裏山町の味方です」
雛段芸人1「じゃあ他の町のことはどうでもいいんですか~?」
ヴェテランD「ハハハハッ!ハハハハッ!」
不敗郎「いえ、決してそのようなことは?」
雛段芸人1「てか裏山町ってここの隣町でしょ~?便乗じゃないですか~?」
ヴェテランD「ヒャハハハ!ヒャハハハ!」
不敗郎「いえ断じてそんなやましい気持ちなど」
雛段芸人1「ところでキャラ設定それでいいんですか?」
不敗郎「だ、大丈夫だ!問題ない!」
雛段芸人1「モチーフ、鬼なんですよね。角ないけど」
不敗郎「い、いや。私にモチーフとかないから」
雛段芸人1「口調大丈夫ですか?鬼って悪なんでしょ?」
不敗郎「ぐははは。町を思う吾輩の気持ちに善も悪もないわ~」
雛段芸人1「もっと設定に主体性を持ってください」
不敗郎「す、すみません。まだ色々勉強中で・・・」
ヴェテランD「ヒャハハハ~!」
めっちゃよいこ「バカ~ッ!」
めっちゃよいこ「タイツマンをいじめるな~っ!」
雛段芸人1「タ・・・タイツマン?」
不敗郎「そ、それではサラバだっ!」
〇黒
タイツマンとは一体何なのか?
裏山町のローカルヒーローは謎のキーワードを残して去っていった・・・
〇テレビスタジオ
陣原「おいおい何だよ。突然のライバル出現じゃないか」
陣原「さては仕込んだな?」
ナオキ「ライバルか。モモタロウに対してオニですもんね」
雛段芸人1「それにしてはキャラブレブレでしたけど」
雛段芸人2「完成度低っ。もうちゃんとやって~」
陣原「じゃあムトちゃん。情報お願い」
女子アナ「はい。裏山戦士オニキングは裏山町のシンボルキャラクターとしてこの夏に市役所と地元の中学生が考えたゆるキャラです」
雛段芸人3「ゆるすぎっしょ!」
陣原「仕方ないだろ。どこの自治体も今は財政難なんだから。よく出来てる方だ」
けんけん「あのー。タイツマンって何ですか」
雛段芸人2「そこは触れないの」
ナオキ「でも俺達の活動に触発されて地域を活性化しようと頑張ってくれる中学生が出てきてくれたってのは、マジ感動っす」
ユウト「ぜひ会いに行ってあげたいな」
雛段芸人2「やめて~王子。客席の嫉妬が凄いから~」
けんけん「あのー。タイツマンって何ですか?」
雛段芸人2「だから触れないの!」
けんけん「ちょっと縫い目が気になって・・・」
雛段芸人3「縫い目とかないから!あれはああいう生き物だから!」
雛段芸人1「ヒーローだ!生き物いうな!」
陣原「そうだ。オニキングは地元の中学生が裏山町を盛り上げようと一生懸命考えたキャラクターなんだ」
陣原「たとえキャラがブレてても」
『ヒャハハハハ!』
陣原「たとえ見てくれが微妙でも」
『ヒャハハハハ!』
陣原「たとえ完成度が絶望的でも」
『ヒャハハハハ!』
陣原「この素朴な生き物が町の代表なんだ!」
『ヒャハハハハ!』『ヒャハハハハ!』
陣原「それって素敵じゃん!」
けんけん「だからタイツマンって何ですか!」
陣原「やっすい全身タイツだからだよ!」
『ヒャハハハハ!』『ヒャハハハハ!』
〇役所のオフィス
不敗郎「・・・」
〇明るいリビング
直の父「・・・」
直の母「ちょっと何してるの!」
直の父「ふざけやがって。あの番組ホームページとかないのか」
直の母「うそでしょ。抗議?やめてよ」
直の父「直の作品が馬鹿にされてるんだぞ!」
直「いいよ別に」
直「あれ、もう私と関係ないから」
直の父「直・・・」
直「勉強するね」
直の父「本当にいいのか?幾らでも抗議してやるぞ」
直の父「せめて役場の連中くらいには・・・」
直の母「だからやめてって」
直「ありがと」
「・・・」
〇可愛らしい部屋
直「バイバイ・・・ジーク・デーモン」
〇散らばる写真
直「バイバイ・・・」
〇可愛らしい部屋
直「バイバイ・・・」