第1話 星空を眺めたら異世界へ(脚本)
〇ショッピングモールのフードコート
平日の昼間からネットサーフィンして息抜きする男がいる。
真樹「ふぅ~もう1年半か・・・毎日快適だけどお金がそろそろヤバいな・・・」
真樹(まさき)は大学を卒業し働いたが仕事を辞めてからは貯金を切り崩して生活している。
地獄だったあの日々・・・1日12時間労働当たり前の生活に嫌気がさして超早期リタイア。今は地元を離れて東京で暮らしている。
真樹「あ~目が疲れた!ネットサーフィン飽きたな、そろそろ帰るか~」
そう言いつつそそくさと車を動かす。冬の空はもう暗い。
〇宇宙空間
真樹「う~寒い。今日はよく見えるかな?」
身内では使われなくなった木造2階建ての持ち家に引っ越した。ちょっとした別荘だ。建物の周りは広い森で囲まれている。
祖父の代に買った山だそうだ。幸いな事に道が舗装されているので気楽に行ける。到着し僕は星空の見渡せる開けた場所に出る。
真樹「はぁ~何か良い事ないかなあ」
きれいな星空を見て気分に寄ったのか意味も無く周りを歩いたり、木に背中を預けて物思いにふける。
真樹「ん・・・やけに暗いな」
雲が多い日なのか月のあかりが一切届かない夜。急に深淵の中に取り残された気分になる。
帰ろうと別荘に向かう時、急に視界が暗くなる。なんだ、何が起きたんだ?
里乃愛「???「た・・・て・・・」」
焦燥・不安・恐怖の感情に支配される中、僕じゃない誰かの声がしたと感じる。
同時にこの声の主の悲しそうな想いに同情している僕がいた。きっと僕が君を助けるからね。そして暗闇の中僕の意識は途絶えた。
〇森の中
真樹「眩しい・・・それに暖かいな」
目を覚ますと森の木の葉の上で寝ていた。起き上がり開けた場所を見つけたので周りを見渡した。
昨日の家の山より遥かに広い大森林が広がっており、昨日と違って温暖な気候を感じる。この暖かさは春の始まりのようだ。
真樹「どういうことだ?昨日まであんなに寒かったのに・・・っていうか見たこと無い景色なんですけど!?」
突然の出来事に驚くばかりだが、空腹なので別荘に戻ろうと歩いていく。
しかしおかしい・・寝ている間に山から転げ落ちたのか?
どこを歩いても知らない景色ばかりで別荘が見つかる気配は無い。
真樹「やばいな、まさか遭難したんじゃ・・・落ち着け、寝てる間にそんなに距離が離れるわけがない」
焦りが募る中、冷静に思考を巡らせ別荘を目指す。・・・ダメだ、こんな木初めて見る。
もしかしたら二度と帰れないんじゃないだろうか・・・。眼下に広がるきれいな景色とは逆に自分の心は曇っていく。
真樹「とりあえず上に登っているけど・・・降りたほうが良いのか?でも登ったほうが遠くまで見渡せるし・・・」
混乱する中、とりあえず周りの状況を知るために登り続ける。
昨日意識が無くなってからいったいどうなったのか・・・
もしかしたらもうここは日本じゃないのか・・・思考を巡らせる中、ふと視界に家屋が見えた。
真樹「小さめの木造の家だな・・・誰かいないか確認しにいこう」
よく見れば周りには道具が置いてあり生活感がある。きっと誰かいるだろう。安心感が増す。
想里愛「こんにちは・・・」
真樹「うおっ!!」
後ろから声がし、驚きながらバッと振り向く。こちらの声に驚いて相手も驚いているようだ。
どうやらこの家の住人のようだ。家屋の近くで見た道具と同じものを持っている。
相手は僕がどんな人物なのかよく観察しているようだ。
真樹「こ、こんにちは・・・実は僕道に迷ってしまって・・・」
想里愛「えっ、そうなんですか。珍しい服装ですね・・・異国の方ですか?」
真樹「あ・・・僕は日本と言う国から来ました」
想里愛「そうなんですね、初めて聞きました。あ・・・!足を擦りむいてますよ。良かったらあたしの家で休んでいってください」
〇古いアパートの居間
そんなこんなで好意に甘えて家屋にお邪魔する。相手の子の名前はソリア。見た感じ中学生ぐらいに見える。
いきなり年を聞くのは失礼かと考えていたのだがソリアから自己紹介も兼ねて教えてくれた。
想里愛「あたしは14歳です。私達の村ではこの年で1人前の大人なんです」
真樹「そうなんだ、ソリアさんは立派に暮らしてるんだね」
ちょっとまだ足の擦り傷が痛いけどあまり長居するのも悪いかな・・・。
そんな考えを見透かされたのかソリアが口を開く。
想里愛「帰る所が無いのでしたら、あたしの家で過ごします・・・?」
真樹「えっ、良いんですか・・・」
突然の展開に驚き続ける自分と、よくしてくれるソリアへの好意が膨らんでいった。
断る理由は無い・・・。お世話になってみるか・・・、いつか恩返ししないとな。
そうしてどこかもわからない土地での生活が始まった。