狂界戦の偽物

かえばりんこ

決(脚本)

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かえばりんこ

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〇道場
中山 咲「真山先輩、あのチームです!」
「面、面、胴〜!!」
真山由花「ほう、あれが噂のポリス泣かせか」
中山 咲「し〜!!」
中山 咲「ここでは、私たち一般企業の剣道部なんですから!」
真山由花「たかが大学チームに負けるもんかねぇ」
中山 咲「負けたんですよ、去年」
中山 咲「それなのに、 今年はアイツが加わってたんです!」
中山 咲「今年は絶対勝とうって みんな、練習に耐えてきたのに・・・・・・」
中山 咲「予選であの超人がバンバン他のチームを 倒していくもんだから──」
中山 咲「みんなビビっちゃって・・・・・・」
中山 咲「だ〜か〜ら!!」
中山 咲「先輩を呼んだんですけどね!!」
真山由花「確かに、すごい動きね・・・・・・」
中山 咲「先輩なら、勝てますよね?」
真山由花「そればっかしは、分かんないわよ」
真山由花(でも、あの動き──)
真山由花(やっぱり、相手の動きを全部読んでる──)
真山由花「──手合わせが楽しみだわ」
中山 咲「さすが、真山先輩!」
  真山のスマホが鳴る。
「あ、ちょっとごめんね──」
中山 咲「あ! スマホの持ち込みは禁止ですよ!!」

〇部屋のベッド
飯島みやび「もしもし、真山?」
  なに? どうかした?
飯島みやび「いやーね、この前聞かれた写真のこと」
  写真? あぁ、飯島部長のね?
  どう? 隣の白衣の人、誰か分かった?
飯島みやび「ううん、私はさっぱり──」
飯島みやび「だから、」
飯島みやび「お母さんに聞いてみた」
  それは、どうも
飯島みやび「えっと、たしか──」
飯島みやび「──うらな? うらないいん?」
  《何してんですか! 始まっちゃいます》
  ああ、ちょっと! 《只今より〜西体育大学 対 千代田警備保障による決勝戦を行います》
飯島みやび「え?」
  《先輩! 早くしてください》
飯島みやび「え?」
  みやび、ごめん!!
  また掛け直す!!
飯島みやび「あ、うん」
飯島みやび「なーんか楽しそうだったな、真山──」
飯島みやび「ね、ミャーちゃん!」

〇道場
真山由花(どうして──防がなかったの?)
  ──礼
中山 咲「先輩〜!!」
中山 咲「やりましたね!!」
中山 咲「先輩のおかげで屈辱を晴らせました!!」
中山 咲「優勝のお祝いに、焼肉行きませんか?」
真山由花「・・・・・・」
中山 咲「先輩?」
真山由花「最後のあの子のプロフィール知ってる?」
中山 咲「はい、大会の冊子に書かれているかと」
  【西体育大学 剣道部】
  ・アイダ シンペイ
  ・ウラナイ ウギョク
  ・キタミ ノリト
  ・ジョウノウチ タカフミ
真山由花(ウラナイ──)
真山由花「・・・・・・」
中山 咲「先輩、焼肉は・・・・・・?」
「──ごめん! 焼肉は行くから用意しといて」
中山 咲「徐々苑予約しておきまーす!!」

〇渡り廊下
「──待って!」
  真山の呼び声に彼は足を止めた。
真山由花「ウラナイ ウギョク──」
真山由花「いえ、久宝くん──」
久宝水輝「バレちゃいましたか」
真山由花「おかしな名前だと思ったのよ」
真山由花「漢字はどうやって書くんだろうって──」
久宝水輝「外国人ぽくないですか?」
真山由花「そうよ、考えるのに時間が掛かった」
真山由花「『卜』と書いてウラナイって読む」
真山由花「そう気づいてからは簡単」
真山由花「ウ冠に、『玉』」
真山由花「苗字の『久宝』を分解した偽名だったのね」
久宝水輝「──さすが、警備保障の方だ」
真山由花「ちょっと、やめてよ」
真山由花「剣道やってたんだね」
久宝水輝「あ、いえ、この大会で初めてで──」
真山由花「え? 大会が初めて?」
久宝水輝「いえ、剣道が初めてでした」
久宝水輝「インカレの友人が、 しつこく誘うもので仕方なく・・・・・・」
真山由花「そ、そう──」
真山由花「・・・・・・ねぇ、久宝くん」
真山由花「この前、みやび含めてお茶した日──」
久宝水輝「はい?」
真山由花「あの夜、あなたどこで何してた?」
久宝水輝「先々週でしたっけ?」
真山由花「ええ」
久宝水輝「多分、家で妹と一緒にいたかと」
真山由花「そう・・・・・・」
久宝水輝「気になるようであれば、妹に確認を──」
真山由花「いいの! ごめん、変なこと聞いて──」
久宝水輝「ああ、いえ・・・・・・」
久宝水輝「答えられることであれば何でも答えるので」
真山由花「そう、助かるわ」
真山由花「じゃあ・・・・・・」
真山由花「決勝戦、わざと負けなかったかしら?」
久宝水輝「な、何を言ってるんですか!?」
久宝水輝「真山さんのあまりの強さに完敗でしたよ」
真山由花「そう──なら、そういうことにしとくわ」
  おい、久宝! 先行くぞ!?
久宝水輝「あ、すみません・・・・・・」
真山由花「あなたの試合ができて良かった」
久宝水輝「僕もです!!」
真山由花「じゃあ、また」
「はい、また──」
真山由花(ごめん、久宝くん・・・・・・)
  真山は狂人計測器を取り出す。
真山由花(数値は正常──)
真山由花「ホッとすべきなのに──」
真山由花「機械まで疑ってしまうなんて・・・・・・」

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