フォビアインケージ Phobia in Cage

ふじのきぃ

Chart1-2.無重力(脚本)

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〇研究施設の玄関前
  Now training‥
トバリノ「早いな、良い心掛けだ」
トバリノ「リコ、今日も一日よろしくな」
  "リコ"
  無表情で無口な
  今回の演習のパートナー
  同じPiCの管理者で
  俺の大事な──
テトラ「オ・モ・チャ♪」
トバリノ「うわっ!?」
トバリノ「テトラ、脅かすなよ」
テトラ「自分の彼女が喋れないからって ヘンなコト考えてたんでしょ?」
テトラ「このヘンタイ♪」
テトラ「あっぶな!?」
トバリノ「おい、冗談にも程があるんじゃないか? 俺達の事情は知っているだろう?」
テトラ「し、知ってるわよ! 何ムキになってんのよ‥」
テトラ「アンタが緊張してそうだったから アタイが解(ほぐ)してあげたんじゃない!」
トバリノ「余計なお世話だ 緊張どころか歓喜に震えている」
テトラ「へえー、いつもの能力分析? アンタの担当の子に興味あるの?」
トバリノ「あの文化遺産を圧し潰す程の能力だからな」
トバリノ「あんな小さな身体で、あれ程の強大な力を どう制御しているのか気になるところだ」
テトラ「ふぅん‥ やっぱアンタも気になってるんだ」
テトラ「でもさ」
テトラ「アンタなら大丈夫だと思ってるけど 無茶はやめてよね?」
テトラ「アンタが居なくなると PiCにとって大きな損失になるだろうし」
テトラ「それに──」
テトラ「さっきは"ああ"言ったけどね?」
テトラ「アンタの大事な人なんだから‥」
テトラ「気を配んなさいよね!」
トバリノ「解っている」
トバリノ(時々コイツは核心を突いてくるな)
トバリノ(不器用だが、仲間想い)
トバリノ「そっちこそ! 担当のフォビックを痛め付け過ぎるなよ?」
トバリノ「お前の性格がアレだから せいぜい死なせないようにな」
テトラ「う、うるさいわね! ちゃんと気をつけるわよ!」
テトラ「全く‥」
トバリノ(見ていて飽きないな)
トバリノ(時々、癪(しゃく)に障るのは 玉に瑕(キズ)だが)
トバリノ「お互い、悔いの無いようにな」
テトラ「だぁれに言ってるのかしら?」

〇近未来の闘技場
  【1日目】
  PiC:トレーニングルーム
トバリノ「紹介しよう リコリス・エリクシールだ」
トバリノ「彼女は本日から1週間 ファーさんの演習サポートを担う」
トバリノ「気軽に"リコ"と呼んでくれ」
ファー(す、素敵なスタイル‥です!)
ファー(でも──)
  無表情で見つめる瞳は、
   まるで光を宿していないようで不気味だ
ファー(なんだか──コワイ‥)
トバリノ「怖がらないで良いよ」
トバリノ「リコには事情があってね 悪く思わないでくれるとありがたいな」
ファー「わかり、ました‥」
ファー(聞いてはいけないことなのかな?)

〇近未来の闘技場
トバリノ「それじゃあ本日の演習を始める」
トバリノ「先ずはファーさんの能力を見せてもらうよ」
ファー「は、はい!」
ファー「あの‥具体的にどうすればいいですか?」
トバリノ「そうだな‥」
トバリノ「では、リコを宙に浮かせてみようか」
ファー「リコさんを──ですか?」
トバリノ「無重力というものを間近で見てみたい」
トバリノ「見学させてくれるかい?」
ファー「‥わかりました」
ファー(なにも起きない‥)
トバリノ「イメージを思い浮かべてみようか」
トバリノ「彼女が空中に浮かんでいる様子を──ね」
ファー「はい‥!」
ファー(イメージ──)

〇空

〇近未来の闘技場
ファー(よし──)
ファー(リコさんの髪と服が揺れている)
ファー(わずかに力の感覚がする)
ファー(だけど、まだ──なにか足りない)
ファー「リコさん、 手を出してもらってもいいですか?」
トバリノ(ふむ‥)
ファー(綺麗な手‥)

〇白
ファー「浮いた!」
ファー「わ、わわわ!」
ファー「いやっ!?」
ファー(バランスが──取れない!)
ファー(怖い‥!)

〇近未来の闘技場
トバリノ「落ち着いて」
トバリノ「下を見ないように、前を向くんだ」

〇白
ファー(落ちる‥ 墜ちる‥ おちる‥ オチル‥)
ファー(助けて──!)

〇黒
  だ い じょ う ぶ だ よ

〇花模様
ファー(お日さまのように暖かい‥)
ファー(心地よい花の香り‥)
ファー(誰かに包まれてるみたい‥)
  少女を抱き寄せ
  あやすように、背中を撫でた
ファー(リコさん‥)

〇近未来の闘技場
トバリノ「二人とも、大丈夫かい?」
ファー「はい! リコさんのおかげです!」
トバリノ「そうか──良かった」
トバリノ「落ち着いてくれて安心したよ」
ファー(抱っこされて ちょっぴり恥ずかしかったけど)
ファー(それに、また声が聞こえた気がしたから)
ファー(『だいじょうぶだよ』──って)

〇近未来の闘技場
ファー「ごめんなさい、トバリノ先生」
トバリノ「みんな最初は慣れないものだよ」
トバリノ「気にしないで」
トバリノ「疲れたかい?」
ファー「はい、少し‥」
ファー(そんなわたしは、リコさんの膝の上)
ファー(姉妹に──みえるかな?)
トバリノ「もしかすると、人間を対象にした事で 抵抗があったのかもしれないね」
トバリノ「今度は小さい物に与えてみようか」
ファー(木の棒──)
ファー「あれ?」
トバリノ「まだ気分は優れない?」
ファー「いえ、むしろ逆で‥」
ファー「んしょ──っと」
ファー(さっきまでの疲れが嘘のよう)
ファー(身体が軽くて、頭も冴えてる感じ)
ファー「リコさんの、能力のおかげでしょうか?」
トバリノ「ふふ、どうかな?」
ファー(いじわる、です)

〇近未来の闘技場
ファー(集中‥)
ファー(浮いて──!)

〇水玉2

〇近未来の闘技場
トバリノ「これが──無重力(ゼログラビティ)」
トバリノ「動いているが、確かに浮いている‥!」
トバリノ「凄いじゃないか!」
ファー「ありがとうございます!」
ファー「折れちゃった‥」
トバリノ「もう一度、チャレンジだ!」
ファー(後片付けが大変そう、です)

〇中華料理店
  PiC:レストラン
シー「ニ〜ハオ〜!」
シー「泣く子も黙り‥!」
シー「舌を唸らす‥!」
シー「『しぇ〜しぇ〜堂』へようこそ!」
シー「ワタシ、オーナーの シー・シェーシェー(食 謝謝)いうヨ」
シー「──といっても店員、 ワタシしか居ないけどネ」
ファー(これが、レストラン‥)
シー「お客サン、この店は初めてカ?」
ファー「はいっ」
ファー「外食したことがなくて、 新鮮な気持ちになっちゃって‥」
シー「アャ〜、それは勿体ナイ! 人生ソンしてるヨ!」
シー「ダケド、無問題(モーマンタイ)ネ!」
シー「ワタシが腕を奮って お客サンをオモテナシするヨ!」

〇中華料理店
ファー「美味しい‥!」
ファー「この、ちゃーはん? とっても美味しいです!」
シー「謝謝〜♪ (しぇーしぇー)」
シー「伝統を受け継いだ中華料理のお味、 気に入ってくれて嬉しいヨ!」
ファー「香ばしくて、食べやすくて‥ いくらでも食べれそうです!」
ファー「──あ! でもお金、持ってないです」
シー「ソレも無問題ネ!」
シー「こういった店は"アガペジオ"のような 上位階級都市で経営しているケレド‥」
シー「ワタシの店は先代から継承したこの味を‥」
シー「PiCの住人に"タダ"で振る舞ってるネ!」
ファー「無料"タダ"!?」
シー「その代わり、お客サンには 一品一本"髪の毛"を頂いてるヨ」
ファー「髪の毛を、ですか?」

〇数字
シー「正確には、毛根のDNAを採取してるネ」
シー「ワタシ達フォビックのDNAには "フォビアマター"が含まれているコトが 解っているヨ」
シー「ソレを研究し、 みんなの能力に役立つ情報を提供してるネ」

〇中華料理店
ファー「すごいです!」
ファー「てっきり、ひどい人体実験を行ってるんだとばかり思ってました」
シー「アイヤ〜、確かにココは 超能力者がいるトコロだからネ」
シー「コワイ思いをしてきたカ、 ツラかったナ‥」
ファー「はい‥」
シー「安心するネ! ワタシ達は "フォビアと向き合う者"には優しいネ」
ファー「"向き合う者"?」
シー「フォビアを克服して、 超能力を扱えるようになりたいヒトの事ネ」
シー「アナタもフォビアをもっと知りたいなら、 ワタシ達は喜んで協力するヨ!」
ファー「私は──」
おっとりした少女「ふえ〜、豪華なレストランだねえ」
活発な少女「でしょでしょ? リクハにも来てもらいたかったんだ〜」
活発な少女「シーさん、小籠包セット一つ!」
シー「ニーハオ〜! 少々お待ちを〜!」
ファー「抜け落ちた髪でも良いなら‥!」

次のエピソード:Chart1-3.重さ

コメント

  • エフェクトがかっこいい!
    フォビアの能力の訓練が始まりファーちゃんは能力を使いこなすことができるのかドキドキですね。
    登場人物も増えてきて彼女たちとどう関わってくるのか、また謎の声の正体も気になります。

  • テトラがカッコ可愛いかった~😆
    うちの子を使って頂きありがとうございました✨
    イケメン同僚とのやりとりも面白かったです😉✨
    そしてファーの訓練、丸太飛んできましたね🤣

  • エフェクトと演出の勉強になりますね!!
    世界観がガッチリしてて引き込まれます。
    ただの超能力合戦じゃなくて、それぞれの能力の裏に彼女たちの抱えたドラマがあるのでしょう。
    そんな緊張した空気感を和ませる中華店にも、作品の広がりを感じました😃

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