Cross halation(脚本)
〇荒地
国同士が覇権を巡り激しく争う乱世の時代
勝敗の行方を左右するのは、一部の限られた人間だけがなることができる「怪人」の存在だった・・・
ヒミコ「さて、雑魚どもをとっとと片付けてやるか」
人造河童「てめえがエトワール王国の怪人か」
人造河童「たいしたことなさそうだな」
ヒミコ「ふん。サタン帝国の雑魚が」
人造河童「何だと、この野郎!」
人造河童「俺様をなめると・・・」
人造河童「ぐわっ!」
人造河童「てめえ! ぶっ殺してや・・・」
人造河童「げふっ・・・」
ヒミコ「消えろ、雑魚が」
〇草原の道
ユウキ「僕の相手はあいつか」
トリッキー「くらえ!」
トリッキー「効いてない!?」
ユウキ「お前じゃ僕には勝てない」
トリッキー「うるせえ!」
ユウキ「そんな攻撃は通用しない」
トリッキー「は?」
ユウキ「おとなしく降伏すれば助けてやる」
ユウキ「どうする?」
トリッキー「します。降伏します」
トリッキー「私はあなたと戦う気なんてなかったんです」
トリッキー「サタン帝国の奴らに無理やり脅されて・・・」
トリッキー「お願いします。命だけは・・・」
ユウキ「わかった」
トリッキー「ありがとうございます」
トリッキー「このご恩は一生忘れま・・・」
トリッキー「なんて言うと思ったか!」
トリッキー「死ね!」
ヒミコ「死ぬのはお前だ!」
トリッキー「ごふっ!」
ユウキ「ヒミコ!」
ヒミコ「こんな雑魚相手に何やってんだ」
ヒミコ「お前は甘すぎる」
〇近未来施設の廊下
ユウキ「さっきは助かったよ」
ユウキ「でも、あそこまでやる必要はなかったんじゃないか?」
ユウキ「今回の命令はあくまで「敵を追い返せ」だったし」
ヒミコ「あ?」
ユウキ「お前は単独行動をしすぎる」
ユウキ「作戦無視も多い」
ユウキ「いくら強いといっても・・・」
ヒミコ「ふん。何言ってんだか」
ヒミコ「お前も上層部も甘すぎる」
ヒミコ「そんな甘っちょろい考えで戦いに勝てると思ってるのか?」
ユウキ「目的は戦いに勝つことではなくて、国を守ることだ」
ユウキ「国王のお考えは国の平和を守ることだ」
ヒミコ「強さがないと国は守れないし、平和も実現できない」
ヒミコ「馬鹿には付き合ってられない」
ユウキ「ヒミコ・・・」
〇研究所の中枢
ミキモト「まさか弱小国のエトワールに大敗するとはな」
テスラ「申し訳ございません」
ミキモト「お前のせいじゃない」
ミキモト「敵を甘く見て、お前を別の任務に就かせたわしの責任じゃ」
ミキモト「で、この敗戦の原因は?」
テスラ「どうやら敵にかなりの腕の怪人がいるらしいです」
ミキモト「ほう」
ミキモト「で、勝てるのか?」
テスラ「私が全軍を率いれば、敵に強い怪人がいようと負けることはありません」
ミキモト「それならば、次はお前が・・・」
テスラ「ただし、それは上策とはいえません」
ミキモト「なぜ?」
テスラ「勝つのは間違いありませんが、正面から戦えばこっちもそれなりのダメージを受けます」
ミキモト「なるほど。それも困るな」
ミキモト「では、どうする?」
テスラ「その怪人をこっちに引き入れようと思っています」
ミキモト「何?」
テスラ「そいつさえいなければ、エトワールなどダメージなしで一気に潰せます」
ミキモト「それはいい考えだが・・・できるのか?」
テスラ「まずはそいつに接触してみます」
ミキモト「そうか。任せたぞ」
テスラ「はっ!」
〇未来の都会
「敵の怪人が現れたぞ!」
「逃げろー!」
テスラ「お前がヒミコだな」
ヒミコ「何? お前は誰だ?」
テスラ「お前のことはいろいろ調べさせてもらった」
テスラ「お前の実力を試させてもらう」
ヒミコ「くっ・・・」
テスラ「ほう、あれをくらってその程度のダメージか」
ヒミコ「うるさい!」
ヒミコ「よけただと・・・」
テスラ「この程度か」
ヒミコ「ぐっ・・・」
テスラ「わが軍が負けたというから、どれだけ強いのかと思ったが」
テスラ「たいしたことなかったな」
ヒミコ「わが軍? 貴様はサタン帝国の怪人か!」
テスラ「この程度ならこっちに引き入れるまでもない」
テスラ「この場で倒す!」
テスラ「何!」
テスラ「今の攻撃をよけただと・・・」
ヒミコ「お前こそ、その程度か」
ヒミコ「くらえ!」
テスラ「ぐわっ!」
テスラ「・・・」
テスラ「なるほど。これがお前の本当の実力か」
テスラ「これなら引き入れる価値はある」
ヒミコ「ぶつぶつうるせえよ」
ヒミコ「次でとどめだ!」
テスラ「ヒミコよ、また会おう」
ヒミコ「待て!」
ヒミコ「消えた・・・」
ヒミコ「それにしても、あいつ強かったな」
ヒミコ「しかもあいつは、まだ本気を出していない」
〇近未来の通路
命令を待たずに勝手に戦闘を開始したこと
街中で戦闘したこと
以上から、ヒミコは上層部から謹慎処分を受けた。
ヒミコ「やってられないわ」
ユウキ「気持ちはわかるけど、やっぱり勝手に行動するのは・・・」
ヒミコ「その前にやられたら意味ないでしょ」
ユウキ「国王の願いは平和な国を作ることだ」
ユウキ「だから、無駄な戦いは避けなければならない」
ユウキ「僕の一番の願いも、戦争に勝つことではなく国の平和だ」
ヒミコ「勝たないと平和は訪れない」
ユウキ「え?」
ヒミコ「この戦乱の世を終わらせるには・・・」
ヒミコ「ひとつの強い国が世界を統一するしかない」
ヒミコ「その先にしか平和はない」
ヒミコ「だから、私は戦い続ける」
ユウキ「・・・」
〇シックなバー
ヒミコ「この国の奴らは甘すぎる・・・」
テスラ「敵を追い払ったのに謹慎処分だって?」
ヒミコ「あ? 誰だ、お前は?」
テスラ「わが国ならそんなことは絶対しない」
ヒミコ「貴様、サタンの人間か!」
テスラ「まあ、落ち着け」
テスラ「お前と少し話がしたい」
ヒミコ「あ?」
テスラ「お前の強さは本物だ」
テスラ「実際に対峙してわかった」
ヒミコ「まさか、お前はこの前の怪人・・・」
テスラ「お前の目的は何だ?」
ヒミコ「何だと?」
テスラ「この小国で敵の攻撃をただ守っているだけで、その目的は実現できるのか?」
ヒミコ「・・・」
テスラ「俺の目的は・・・」
テスラ「圧倒的な強さで各国の軍を倒し、この世界を統一することだ」
ヒミコ「!!」
テスラ「一刻も早く戦乱の世を終わらせる」
テスラ「そして、世界の平和を実現させる」
ヒミコ「・・・」
テスラ「お前も俺と同じ目的を持っているんじゃないのか?」
テスラ「俺の目的を達成するためには、お前が必要だ」
ヒミコ「えっ・・・」
テスラ「俺が言いたいのはそれだけだ」
テスラ「邪魔して悪かったな」
ヒミコ「・・・」
ヒミコ「あいつの目的も統一と平和の実現・・・」
〇豪華な部屋
ヒミコの父「俺は早く戦のない平和な世の中を作りたい」
ヒミコの父「お前たちが毎日笑って暮らせる平和な世の中を」
ヒミコの父「そのためには、小国同士で争っていてはダメなんだ」
ヒミコの父「どこかの国が世界を統一しないと、平和は実現しないんだ」
ヒミコ「夢?」
ヒミコ「お父さんは平和な世が来る前に戦で亡くなってしまった・・・」
ヒミコ「お父さん、私どうしたら・・・」
ユウキ「ヒミコ、ちょっといいか?」
ヒミコ「何しに来た」
ユウキ「緊急事態が発生した」
ヒミコ「緊急事態?」
ユウキ「サタン帝国の軍が攻めてきた」
ヒミコ「サタン軍が?」
ユウキ「あと数日で市街地に迫ってくる」
ユウキ「その前に、明日郊外で迎え撃つことになった」
ユウキ「お前の謹慎は今日で終わりだ」
ユウキ「明日の戦いにはお前も参加してくれ」
ユウキ「それじゃあ。俺は作戦本部に戻る」
ユウキ「ごめん、もうひとつ大事なことを忘れていた」
ヒミコ「大事なこと?」
ユウキ「その、お前にこれを渡そうと思って・・・」
ヒミコ「何だ、これは?」
ユウキ「今日はお前の誕生日だろ?」
ヒミコ「えっ?」
ユウキ「ヒミコ、誕生日おめでとう」
ヒミコ「ユウキ・・・」
ユウキ「そ、その、それで・・・」
ユウキ「サタン帝国の攻撃を防ぎきって落ち着いたら・・・」
ユウキ「休暇を取って2人でどこかに行こう」
ヒミコ「えっ・・・」
ユウキ「ごめん、冗談だ。今のは忘れてくれ」
ユウキ「それじゃあ、俺は行くよ」
ヒミコ「ユウキ、お前は甘い。本当に甘すぎる」
ヒミコ「でも、私はそんなお前が嫌いじゃない」
ヒミコ「・・・」
ヒミコ「明日、エトワール軍とサタン軍が戦う・・・」
ヒミコ「国を守る、統一する、平和を実現する・・・」
ヒミコ「ユウキ、テスラ、お父さん・・・」
ヒミコ「私の進むべき道は・・・」
〇美しい草原
エトワール王国とサタン帝国の戦いが、まさに今始まろうとしていた・・・
テスラ「ヒミコはこっちには来なかったか・・・」
テスラ「・・・」
テスラ「まあいい」
テスラ「全軍攻撃開始!」
〇原っぱ
ユウキ「ヒミコはまだ来ていない・・・」
人造河童「ケケケ」
人造河童「ケッケッケー」
ユウキ「ダメだ。倒しても次々とやって来る」
ユウキ「戦力が違いすぎる」
ユウキ「このままでは負けてしまう」
ユウキ「ヒミコ、君はいつ来るんだ」
テスラ「お前がエトワール軍の中心だな」
ユウキ「お前はサタン軍の怪人か!」
テスラ「どうやら、ヒミコはこっちにも来ていないようだな」
ユウキ「何! どうしてお前がヒミコのことを?」
テスラ「お前と話している暇はない」
テスラ「くらえ!」
ユウキ「ぐはっ・・・」
テスラ「ほう、まだ立っていられるか」
ユウキ「強い・・・」
ユウキ「みんなここから離れるんだ! ここは僕が食い止める」
テスラ「自分より他の奴らを心配するとは、ずいぶん甘い奴だな」
テスラ「だが次で終わりだ」
ユウキ「くそっ・・・」
テスラ「とどめだ!」
ヒミコ「待て!」
ユウキ「ヒミコ!」
テスラ「貴様・・・」
ユウキ「ヒミコ、来てくれたんだ・・・」
ユウキ「気をつけろ。奴は強いぞ」
ヒミコ「私は決めた」
ユウキ「ヒミコ?」
テスラ「・・・」
ヒミコ「私の進むべき道は・・・」
ヒミコ「これだ!」
ユウキ「ぐはっ・・・」
ユウキ「ヒミコ、どうして・・・」
ヒミコ「お前はやさしすぎる」
ヒミコ「お前やエトワール国王のやり方では統一も平和も実現できない」
ヒミコ「私はサタン帝国につく」
ヒミコ「そして、この世界を統一して争いをなくし、平和な世の中を実現する」
ヒミコ「それが私の進むべき道だ」
ヒミコ(ユウキ・・・)
ユウキ「ヒミコ・・・」
〇美しい草原
ヒミコ「テスラ、今日は引き上げだ」
ヒミコ「敵の数も多いし、こっちの犠牲も多くなる」
テスラ「俺もそのつもりだ」
テスラ「ところで、なぜ奴にとどめを刺さなかった?」
テスラ「最強戦士も好きな男は殺せなかったってか」
ヒミコ「うるさい。そんなんじゃない」
ヒミコ「あんな弱い奴、たいした戦力じゃないから放っておいただけだ」
テスラ「はいはい。そういうことにしておくよ」
ヒミコ「・・・」
ヒミコ「私は統一、そして、その先の平和の実現に向かって突き進む」
ヒミコ「ユウキ・・・」
ヒミコ「あなたは、私にとって一番大切な存在」
ヒミコ「あなたが望んでいる平和な世の中は、私が必ず実現する」
怪人の立ち絵が使えるのいいですね!
こうした大きな世界観の話を作ってみたいものです🤩
最後 ヒミコがどちらに付くのかドキドキしました!! ギリギリのところで予想を裏切る展開はさすがだなと思います😮
彼女の真剣な思いもちゃんと伝わりますし。
歴史(特に戦国時代)好きの私としては群雄割拠と聞いたけでワクワクし、読ませて頂きました。
戦乱を終わらせるために心を鬼にして戦うヒミコ。
平和のために好きなユウキと決別の決心をしたヒミコ。
ヒミコの葛藤に感情移入できて、とても面白かったです!
ここにもヒミコが!
鷹司さんのブレない邪馬台国愛を、書いてなくても、こちらの作品にも感じられますね。バットエンドだけれども、ヒミコが彼にトドメを刺さないところに、悲哀を感じます。