憤怒

ZZ

読切(脚本)

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〇整頓された部屋(ハット、靴無し)
  ・・・
  ・・・・・・
  ・・・・・・うーん・・・
  ・・・・・・はっ!?
  いっけね!もう朝じゃねぇか!
ほむら「やべぇ!今何時だ!?」
ほむら「・・・8時!?嘘だろ!?」
ほむら「やべぇ、また遅刻かよ!」
ほむら「なんで目覚まし鳴んなかったんだ畜生! まじぃ急がねぇと!!」

〇アパートの玄関前
ほむら「今日遅刻したら本当にやべぇぞ! 実家にチクられちまう!」
ほむら「そしたら夢の一人暮らしはもう終わりだ! 何としても滑り込まねぇと!!」
「えっとチャリ! チャリのカギ!!」
「・・・」
  ガチャガチャガチャ・・・
「こんな時に限ってなんでスッと 入らねぇんだよー!」

〇黒
  俺の名前は遠藤ほむら。
  近所の私立高校に通っている。
  と言っても今年入学したばかりだけど。
  一人暮らしに憧れ、両親を無理矢理に
  説得したのは僅か数か月前のことだった。
  親は二人ともバリバリに働くタイプの人間で、俺は幼い頃からあまり構われていなかった。
  けど不満を持ったことはなかった。
  なにせ好きなだけ金を使っていいと
  小遣いは毎月山ほど渡されていたから。
  俺は金で友人を作るような真似を
  したくなかった。だからいつも一人で
  バレない様に金を使っていた。
  金は人間を、理性を壊すという話を聞いた
  ことがあったけど、どうやら少なくとも
  俺には当てはまらなかったみたいだ。
  そのおかげか俺は純粋な人間関係の友人を
  数人持つことが出来た。正直そいつらと
  連(つる)んでいるだけで満足だった。
  周りのお母さん方はかわいそうね、
  とか良く声を掛けてくれてた。
  けど仕事が好きなんだろうとしか
  親に対して思えなかった。
  ・・・考えてみればそれがもう
  おかしかったのかもな。俺は両親に
  愛情を求めなくなっていたんだ。
  高校進学の際、俺は大して興味も無かった
  私立高を強く希望した。両親は戸惑っていたが、最終的には折れた。
  目的は勉強でも部活でもなかった。
  いっそ本格的に一人きりの環境に
  身を置きたい思っていたんだ。
  だから選んだ実家から遠い学校。
  そして実感した両親の必要性。
  ・・・無論逆の意味で。
  家もアパートも大差無かった。
  むしろやりたい放題出来るのはこっち。
  気楽な一人暮らしは本当に最高だった。
  飯は出前でいい。むしろ慣れてる。
  必要なものは揃えた。金は送られてくる。

〇川に架かる橋
  だから今の暮らしを手放したくは無かったのだが、我ながら最近たるんできたのか
  遅刻が徐々に増えてきていた。
  最初の内は軽い説教で済んでいたが、
  最近では生徒指導室に呼び出されることも
  ちょいちょいあった。
  次に遅刻したら両親に連絡を取って面談を
  してやるぞ!と学校側に言われた時は
  死刑宣告を喰らった気分になった。
  そうなれば最悪、一人暮らしを
  止めさせられる可能性がある。
  それがとにかく怖かった。

〇学校脇の道
ほむら「急げ急げ!まだ間に合うはずだ!」
ほむら「つか間に合ってくれぇー---!!」
  最近になって不意に気付いたことがある。
  中学時代の連中と全くやり取りを
  していないのに、少しも気にならない。
  あんなに楽しい時間を過ごした友人たちに、久しぶりに会いたいと思うことが全くと言っていい程無くなっていた。
  俺はいつしか、「人そのもの」に、
  関心がなくなっていたんだ・・・

〇大きな木のある校舎
ほむら「時間は・・・見てる暇ねぇ! このまま教室直行だ!!」
  ・・・だからだろうな。
  こんなことになったのは・・・

〇教室
ほむら「おはようございます! ぎりセーフっすよね!?」
ほむら「・・・5分オーバー!? そんな見逃してくださいよ5分くらい!!」
ほむら「また指導室一時間コース食らいますから! いやなんなら二時間でもいいっすよ! マジで勘弁してください!!」

〇黒
  抵抗空しく、俺は後日両親を学校まで
  呼び出されることになってしまった・・・

〇整頓された部屋(ハット、靴無し)
ほむら「まいったな、どうすっかこれ。 確実に家に呼び戻されるだろうな・・・」
ほむら「くそ・・・俺の自由な一人暮らしが・・・」
ほむら「・・・・・・」
ほむら「つかいいだろ5分くらい! なんなんだよあいつは!?確かに遅刻は 多いけど授業は真面目に出てんだろ!?」
  人に対して関心が無くなった俺は、
  人に対して頭を下げられなくなっていた。
ほむら「あいつのせいだろ!?もし俺の生活が 壊れることになったら絶対あいつが 余計なことしたせいだろ!?」
  人に対して頭を下げられなくなった俺は、
  人に対して悪びれなくなっていた。
ほむら「もしそうなったら許さねぇ!!!!」
  人に対して悪びれなくなった俺は、
  人に対して簡単に恨みを抱ける様に
  なっていた。・・・理不尽な程に。
ほむら「アイツ・・・」
ホムラ「許さねぇからな!!!!!!!!」

〇黒
  正直そこから先のことはあまりよく覚えて
  いないし、思い出すことが出来ない。
  一つ確かなのは、俺を取り巻く環境が
  ある日を境に豹変してしまったという
  ことだけだった。
  頭の中で断片的に浮かぶ記憶の破片には、

〇廃墟と化した学校
  荒廃した学び舎や、

〇荒廃した街
  荒れ果てた街の姿。

〇黒
  これらの光景が何を意味するのか、
  俺には理解出来なかったが、別に
  どうでも良かった。
  今の自分はかつてない程清々しく、
  楽しくて仕方なかったからだ。

〇黒
  なんだか良く分からない。
  だがとにかく楽しい。楽しい。楽しい。
  俺は楽しさと、理由も無く湧き上がる
  怒りの炎に身を任せて過ごした。
  ・・・いつしか俺の前からは、
  「人」の姿は完全に消えていた。

〇荒廃したセンター街
焔「・・・」
自衛官1「こちらC地区。現場にて目標を視認。 現在「憤怒の怪物」は当該エリアにて 休息を取っている模様!」
自衛官2「了解した。ではそのまま待機せよ。 これから我々A地区の人間も合流する。 引き続き監視するように!」
自衛官1「了解!」
自衛官2「奴の正体は未だ不明だが、奴の操る炎は まるで蛇の様に動き、軌道が読めん。 決して油断するな!」
自衛官1「はっ!もちろんです!」
焔「ねぇ」
「!?」
焔「さっきからちょっとうるさいよ。 声、殺してるつもり?ダダ漏れだったよ?」
自衛官1「・・・くっ!!」
焔「さよなら」
自衛官1「うわあぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
焔「さてと」
自衛官2「くううっ!!」
焔「今からコッチ来るの? 止めときな?燃やすよ?こいつみたいに」
自衛官2「おのれぇ・・・!!」
焔「あとそれからさ、さっき聞いた話だと 俺「憤怒の怪物」なんて呼ばれてんの? ださくない?」
焔「別にそんなに気にしてはいないんだけど、 出来ればこう呼んでくれる? コッチ方がしっくりくるんだよね」

〇黒
  ・・・焔の怪人ってさ

コメント

  • ほむらが自分では気づかないうちに徐々に人間性を失っていって、限界点に達した瞬間に運命の導火線に着火する瞬間のカタルシスが凄かったです。他人を巻き込んで自滅する現代社会の壮大なメタファーかな、と。規模は違うけど誰にとっても他人事ではないような気がします。

  • 人間でいる以上、どんな理由であれ人と関わりを持つことは、ある意味大切ということを感じました。実際、紛らわしい事の方が多いものですが、それでも怪人になってしまわないためにも、一人でも誰かと関わるべきですね。

  • 確かに!人間は感情を爆破させると周りは見えなくなると言います。普段の行いが悪くなればエスカレートとして、終いには怪人に変身してしまうのでしょう。

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