bilincat−バイリンキャット−

×××

1話【俺を飼え!不思議な喋る黒猫!】(脚本)

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〇郊外の道路
  山都大輝。26歳フリーター。
  都内のスーパーで商品の品出しの仕事をしている彼は、人生に嫌気が差していた。
  毎日同じ時間に起床し──
  毎日同じ時間に家を出て職場に向かい──
  ただ黙々と職務をこなし──
  同じ時間に退勤して同じ道を歩いて帰る。
  毎日同じ景色を眺めながら、自宅と職場を往復するだけで1日が過ぎる。
山都大輝「はぁ・・・」
山都大輝「俺はいつからこうなっちまったんだ?」
山都大輝「上京したての頃は──」
山都大輝「起業して億万長者に!」
山都大輝「なんて妄想してたけど・・・」
山都大輝「今の俺はどうだ?」
山都大輝「しょぼいバイトして、毎日をだらだら自堕落に生きてるだけ・・・」
山都大輝「はぁ・・・」
山都大輝「今は途中・・・まだ人生の途中だからこんなんなだけで」
山都大輝「いつかはきっと!なんて現実逃避も、なんか虚しくなってくる・・・」
山都大輝「多分俺は一生このままだろうな・・・」
山都大輝「はぁ・・・」
山都大輝「考えたところで、現状が変わる訳じゃない」
山都大輝「さっさと帰って、飯食って、風呂入って・・・」
山都大輝「・・・・・・」
山都大輝「なんか・・・ロボットみたいだな・・・」
  そんな彼の人生は──
  とある黒猫との出会いにより──
  大きく変わる

〇通学路
山都大輝(あ・・・)
黒猫「・・・・・・」
山都大輝(猫かぁ・・・)
山都大輝「猫は気楽でいいよな・・・」
黒猫「・・・・・・」
山都大輝「なんか、ずっとこっち見てない?気のせい?」
黒猫「・・・・・・」
山都大輝「あ、近づいてきた・・・」
山都大輝「随分と人懐っこい猫だな・・・」
黒猫「・・・・・・」
黒猫「おい!」
山都大輝「え?」
黒猫「おい!そこのお前!」
山都大輝(猫が喋ってる・・・)
山都大輝「えェェェェェェェェェェェェ!」
黒猫「その反応は・・・お前は俺の言葉を理解できているみたいだな!」
黒猫「これは珍しいヤツに出会ったな!」
黒猫「にしても驚きすぎじゃないか?」
黒猫「まぁ、無理もないか!」
山都大輝「いやいやいや!ないないない!」
山都大輝「猫が喋るとか、そんなんありえないから!」
山都大輝「アニメや漫画じゃねぇんだから!」
山都大輝「多分疲れてんだな・・・俺」
山都大輝「もう幻聴まで聞こえてくるとか、ヤベェよ」
山都大輝「さっさと帰ろう・・・」
黒猫「いや!現実を受け止めろ!」
黒猫「俺が喋っているのは、紛れもない事実だ!」
黒猫「現実から目を背けるな!」
山都大輝「聞こえない!聞こえない!聞こえない!」
黒猫「見苦しい現実逃避だな!」
山都大輝「随分と捻くれたものの言い方する猫だな!」
黒猫「やっと現実を受け入れたか」
山都大輝「あ!しまった!反射的に答えちまった!」
黒猫「だから現実なんだよ!」
山都大輝「つーか、なんでお前は人の言葉を喋れるんだ?猫だろ?お前は!」
黒猫「猫は普段から喋っているぞ?」
山都大輝「はぁ?」
黒猫「それを人間の脳は言葉として認識出来ていない!というだけの事だ!」
山都大輝「ようは、あれか?」
山都大輝「猫は普段から、今のお前みたく、人の言葉を喋ってるけど」
山都大輝「それを人間の脳は言葉として理解できていないから『ニャー』としか聞こえないって事か?」
黒猫「その通りだ!」
山都大輝「・・・・・・」
  大輝は、目の前の非現実を未だに受け入れられない
  それもその筈だ。目の前に黒猫が現れたかと思えば、いきなり人の言葉を口にしたのだから
山都大輝「で?俺になんか用があんのか?」
黒猫「飼え!」
山都大輝「はぁ?カエ?なんだよ!カエって!」
黒猫「だから!俺をお前が飼えと言っている!」
山都大輝(カエって・・・『飼え』か!)
山都大輝「つーか何でそんな命令口調?」
黒猫「人間は猫を飼うと癒される生き物だと聞いた」
山都大輝「・・・・・・」
黒猫「俺には飼い主がなく、寝床もない!」
黒猫「それに、あれだ!腹が減った!」
山都大輝「何が言いてぇんだ?」
黒猫「お前は俺を飼って癒され──」
黒猫「俺はお前に飼われて、飢えをしのげて、寝床も確保できる!」
山都大輝「・・・・・・」
黒猫「ギブアンドテイクと言うヤツだ!互いにメリットがあるだろ?悪い話では──」
山都大輝「却下!」
山都大輝「以上!」
黒猫「何故だ?お前は癒されたくないのか?」
山都大輝「あいにく俺は猫で癒される程、清らかな人間じゃないんでな!」
黒猫「ゴロン」
山都大輝「腹見せても一緒だ!」
黒猫「ゴロゴロ」
山都大輝「喉鳴らしても一緒だ!」
黒猫「スリスリ」
山都大輝「毛がつくだろーが!」
黒猫「なんでダメなんだ!いいだろ!」
山都大輝「だから無理だっつの!」
黒猫「だったらカリカリ買ってくれよ!それならいい!」
山都大輝「何で俺がたった今会ったばっかのお前の為にカリカリ買わなきゃいけねぇんだよ!」
山都大輝「悪いけど付き合いきれねぇよ。他をあたってくれ!じゃなあな!」
黒猫「待て!」
  黒猫は山都の背中によじ登る。
山都大輝「イダダダダダダダダダダダダ!」
山都大輝「てめぇ!降りろ!クソ猫!」
黒猫「だったらカリカリ買ってくれ!」
黒猫「さもなくば、俺の爪がお前の背中に突き刺さるぞ!それでもいいのか?」
山都大輝「いや、もう現在進行形で突き刺さってるから」
山都大輝「痛いくらいに突き刺さってるから!」
黒猫「別に買うくらいいいだろ!」
黒猫「人間には慈悲の心というものは無いのか?」
山都大輝「わかった!わかった!買って来てやるから待ってろ!」
黒猫「そうか!そうか!分かってくれたかぁ!」
山都大輝「ここで待ってろ!いいな?動くなよ?」
黒猫「ああ!わかった!」

〇白いアパート
山都大輝「誰がカリカリなんか買うかよ!」
山都大輝「あんな気味悪い猫・・・」
山都大輝「無視するに限るぜ!」
黒猫「そこにカリカリが売ってあるのか?」
山都大輝「え?何でお前居んの?」
黒猫「いやぁ、やっぱりすぐに食べたかったからな」
山都大輝「・・・・・・」
黒猫「お前・・・まさかとは思うが・・・」
黒猫「俺を見捨てて帰るつもりだったな?」
山都大輝「・・・・・・」
黒猫「図星か・・・」
黒猫「呆れた奴だ!血も涙も無いとはまさに、この事だな!」
黒猫「人間とは酷い生き物だな!」
山都大輝「わかったよ・・・買ってくるよ・・・」
黒猫「付いていくからな?」
山都大輝「好きにしろ・・・」
山都大輝「はぁ・・・」
  大輝は嫌々ながらも、黒猫と共に近所のコンビニに、カリカリを買いに向かう。

〇コンビニ
山都大輝「じゃあ待ってろ!買って来てやるから!」
黒猫「ロイヤルカノンが良い!」
山都大輝「ロイヤル・・・何だって?」
黒猫「ロイヤルカノンだ!ロイヤルカノン!」
山都大輝「ロイヤルカノンって言うカリカリがあんのか?」
黒猫「そうだ!それが美味いらしい!」
山都大輝「クソ猫!てめぇなぁ!安物でいいだろーが!」
山都大輝「だいたい──」
山都大輝「イテェ!引っ掻くな!クソ猫!」
黒猫「さっさと買ってこい!」
山都大輝「わかった!わかった!」

〇コンビニのレジ
コンビニ店員「しゃっせぇー!」
山都大輝(しゃせー?)
山都大輝(いや違う違う!ロイヤル・・・カノン・・・だったな)
山都大輝「あの・・・すいません」
コンビニ店員「何すか?」
山都大輝「猫の餌で、ロイヤルカノンって言うカリカリがあるらしいんですけど」
山都大輝「ココに置いてありますか?」
コンビニ店員「ああ、ロイヤルカノンだったら、そこの売り場にありますよ」
山都大輝(ちぇ!あんのかよ・・・)
山都大輝「ありがとうございます」

〇コンビニの店内
山都大輝「え・・・っと・・・」
山都大輝「ロイヤルカノン・・・ロイヤルカノン」
山都大輝「あ!あった!あった!」
山都大輝「どれどれ・・・いくらだ?」
  大輝はロイヤルカノンと書いてあるカリカリの袋を手に取り、値札を確認する。
山都大輝「たっか!なにこれ!」
山都大輝「米10kgより高いじゃねーかよ!おい!」
山都大輝「あのクソ猫!こんな高いヤツ買ってこいとか、ナメてんのかよ!」
山都大輝「安物でいいだろ!安物で!」

〇コンビニ
山都大輝「ホラ!カリカリだ!」
黒猫「これはロイヤルカノンか?」
山都大輝「いや・・・その・・・あれだよ」
山都大輝「売ってなくてさ・・・」
黒猫「そうか・・・それは残念だった。食べてみたかったんだかな」
山都大輝「だからそれ食っとけ!」
黒猫「かたじけないな!」
黒猫「ムシャムシャムシャ・・・」
山都大輝「美味いか?」
黒猫「ふむ・・・」
黒猫「そうでもないな!イマイチだ!」
黒猫「まぁ、腹を満たせただけマシだ!」
山都大輝「そこは美味いって言っとけ!」
黒猫「俺はお前とは違って嘘は嫌いだ!」
山都大輝(可愛くねー猫だな・・・)
山都大輝「じゃあカリカリ買ってやったんだから、俺はもう用済みだろ?」
山都大輝「俺は帰るからな!達者でやれよ!じゃあな!」
黒猫「・・・・・・」

〇通学路
山都大輝「・・・・・・」
山都大輝「・・・・・・」
山都大輝「・・・・・・」
山都大輝「何で付いて来てんだよ!」
黒猫「やっぱり飼ってくれよ!」
山都大輝「はぁ?カリカリは今さっき買ってやったろーが!」
黒猫「だから俺を飼えと言ってるんだ!カリカリじゃない!」
黒猫「ひとりは寂しいだろ?」
山都大輝「・・・・・・」
黒猫「どうせお前も独り身だろ?」
山都大輝「今の一言は余計だったよね?付け加える必要性皆無だったよね?」
黒猫「たが独り身だろ?」
山都大輝「は?そんな事ねぇし!は?何意味分かんない事言ってくれちゃってんの?は?」
黒猫「目が泳いでいるぞ?」
山都大輝「そんな事ねーし・・・」
黒猫「独り身の寂しさは、独り身が一番分かるだろ?」
山都大輝「・・・・・・」
山都大輝「はぁ・・・わかったよ」
黒猫「飼ってくれるのか?俺を!」
山都大輝「こうも付き纏われたら迷惑だからな!」
黒猫「いいヤツだな!お前!」
山都大輝「まぁ、とりあえず付いて来い!」

〇アパートのダイニング
黒猫「ほぅ!綺麗に片付けてあるなぁ!」
山都大輝「はぁ・・・」
黒猫「先程から溜息が多いようだが、何か悩み事か?」
山都大輝「元凶はお前だろーが!」
黒猫「俺が元凶?なぜだ?」
山都大輝(ダメだ・・・会話になんねぇ・・・)
黒猫「ん?」
山都大輝「まぁ、仕方なく飼ってやるよ!」
黒猫「すまない!」
山都大輝「けどこれだけは約束しろ!」
黒猫「約束?」
山都大輝「まず!絶対に外に出るな!」
山都大輝「そして俺に付き纏うな!以上だ!」
山都大輝「わかったか!」
黒猫「それじゃ退屈じゃないか!」
山都大輝「なら出て行くか?」
黒猫「わかった!約束はできるだけ守ろう!」
山都大輝(これからどうなるんだよ・・・)
  こうして、喋る黒猫との不思議な共同生活が始まった。

次のエピソード:2話【可哀想な山都さん】

コメント

  • 強引に喋る猫を買う羽目になった主人公。
    彼の人生がどう変化するか、楽しみですね。

  • 喋る猫が欲しい!私の家にはネコが3匹います。毎日とっても癒されています。この猫はやや強引な猫のようですが、主人公が優しそうで良かったです。

  • 始まったー。新生活。ワクワクチン?
    カリカリがわからんのよねー。
    買い物の時に確認しとこー。

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